親の土地に家を建てる場合、税金はどうなる?
目次
こんにちは!埼玉県川越市の税理士法人サム・ライズの中西です。
家を建てる際に、親が所有している土地に建てるケースは少なくないと思います。
今回はそのような場合に注意すべき税金について紹介していきたいと思います。
親の土地を無償で使う場合
無償で使う場合「使用貸借」になる
親の土地に対して権利金や地代を払わずに家を建てる場合がありますが、これは法律上、土地の「使用貸借」となります。
「使用貸借」とは、借主が貸主から物を無償で借りて使用し、後にその借りた物を貸主に返還する契約をいいます。
借主は、契約に返還時期の定めがあるときはその時期に、その定めがないときは使用を終えたとき等に、借りている物を返還しなければなりません。
また、使用貸借で借りる物が住宅やその敷地であっても、借地借家法は適用されません。(出典:住友不動産販売「不動産用語辞典」)
使用貸借の場合の贈与税
子が親の土地を無償で使用する場合(使用貸借)は、その土地の権利金について贈与税が課税されるように思えますが、実は贈与税は課税されません。
使用貸借契約では土地の権利金の価額はゼロとして取り扱われますので、権利金に対して贈与税は課税されないのです。
しかし、この権利金の価額がゼロという点で、相続時に注意が必要となります。
使用貸借の場合の相続税
使用貸借で親の土地に家を建て、その親が死亡した場合、その土地にはまるまる相続税がかかる事になります。
使用貸借契約ですので、権利金の価額はゼロ、つまりその土地の権利金部分も含めて相続税の課税対象になります。
これが借地権の設定されている通常の賃貸借契約だった場合、借地権の価額を除いた部分に相続税がかかるわけですが、
この使用貸借の場合では権利金がゼロなので、100%部分が相続税の課税対象となります。
一般的に都市部ではこの借地権部分の割合が80~90%、住宅地でも60~70%に設定されていますので、
借地権を設定している場合と、使用貸借とでは相続時に大きな違いが出てくる事になります。
使用貸借の場合の固定資産税
固定資産税は土地や家屋の所有者に納税義務がありますので、土地の固定資産税は親が、家屋の固定資産税は子が払うことになります。
しかし、使用貸借契約で土地の固定資産税は子が負担するという場合も大いにあり得ます。
その場合でも、地代を払ったとはみなされず使用貸借契約と認められますので、贈与税が課税されることはありません。
親に地代を支払う場合
では、子から親に地代を支払って家を建てる場合の税金はどうなるのでしょうか。
賃料の金額を2パターンに分けてみていきます。
賃料相場と同等の地代を支払う場合
あまりないケースかもしれませんが、賃料相場と同等の地代を親に支払う場合を想定します。
この場合、権利金を支払う慣行がある地域では、権利金部分が親から子に贈与されたものとみなされ、贈与税が課税されます。
「使用貸借の場合の相続税」でも述べました様に、権利金部分の割合は住宅地でも60~70%ですから、
土地の60~70%部分に贈与税が課税される事になりますので、注意が必要です。
しかし相続時には、土地の権利金部分に相続税はかかりません。権利金部分がすでに贈与されたものとみなされている為です。
固定資産税相当額の地代を支払う場合
地代が固定資産税相当額またはそれ以下の場合を想定します。
「使用貸借の場合の固定資産税」でも述べましたが、地代が固定資産税相当額であれば、使用貸借契約と認められ贈与税は課税されません。
ただし、使用貸借契約ですので、相続時に権利金が課税対象となる事に注意が必要です。
無償又は安く土地を譲り受ける場合
無償で親から土地を譲り受けた場合は、当然ながら贈与税が課税されますが、
相場よりかなり安い金額で親から土地を購入した場合も「みなし贈与」となり、贈与税が課税されます。
「みなし贈与」とはその名の通り、相手に財産を与える「贈与」という行為があったと「みなす」事をいいます。
では、通常の贈与とみなし贈与との相違点についてみていきましょう。
通常の贈与は無償で財産を与える事を言いますが、みなし贈与は、無償ではないが「著しく低い価格で」財産を売買した場合に該当することとなります。
また、借金の免除をしてもらった場合や、借金の肩代わりをしてもらった場合、自分が支払ってない保険の保険金を受け取った場合等もみなし贈与となりますが、ここでは著しく低い価格の売買について掘り下げていきます。
著しく低い価格で売買をしてみなし贈与に該当した場合は、その財産の相場の価格と実際の売買金額との差額に贈与税が課税されます。
例えば、相場の価格が2,000万円の土地を、1,000万円で親から購入したとします。
この場合、相場の価格2,000万円-実際の売買金額1,000万円=1,000万円←贈与税の課税対象となります。
著しく低い価格とは?
では、みなし贈与の判断基準となる「著しく低い価格」とはいったいいくらなのでしょうか?
相続税法では明確な基準は明記されておらず、実際には「東京地裁平成19年8月23日判決事例」に基づいて判断される事が多いです。
この判決では、「時価公示価格の80%未満である場合、著しく低いという解釈ができる」と示されています。
従って実務では、相場価格の80%未満であればみなし贈与となり得ると言えるでしょう。
住宅ローン控除はどうなる?
もうひとつ気になるのが、住宅ローンで家を建てた場合、住宅ローン控除の摘要が受けられるかどうかです。
答えは、親の土地に家を建てる場合でも、住宅ローン控除の適用を受けることができます。
住宅ローン控除とは、住宅ローンを借り入れて住宅を取得する場合に、毎年の住宅ローン残高の1%を10年間、所得税から控除できる制度です。
所得税から控除できない分は、翌年の住民税から控除されます。
さらに、消費税率が10%の住宅を取得して、令和元年10月1日から令和2年12月31日までに入居した場合は、控除期間が3年間延長されます。
これは消費税の増税による消費意欲減退の対策として打ち出されました。
ここで、令和2年12月31日までと入居期限が定められていますが、今回の新型コロナウイルス感染症等の影響によってこの期限までに入居出来なかった場合にも、
次の要件を満たす場合にはこの特例の摘要を受けることができます。
・一定の期日(※)までに、住宅の取得等に係る契約を締結していること
・令和3年12月31日までに住宅に入居していること
(※)新築については令和2年9月末、中古住宅の取得、増改築等については令和2年11月末
まとめ
この様に、親の土地に家を建てる場合に地代を支払うかどうか、またその支払う金額によってかかってくる税金の種類が異なります。
また、土地を親から譲り受ける場合にも贈与税に注意しなければなりません。
どのパターンを選択したら税金的に有利なのか、実際の金額でシミュレーションをしてみたり、相続税や贈与税に詳しい税理士に相談するのも良いかと思います。
出典
(昭48直資2-189)
(相続税法)
(新型コロナ税特法6条、新型コロナ税特令4条)
税理士法人サム・ライズ
代表税理士。
大原簿記学校法人税税法課専任講師を得て平成5年12月税理士試験合格、平成8年1月林税理士事務所を開業、平成16年12月税理士法人サム・ライズを設立。
税理士法人サム・ライズは、税理士顧問・創業支援・相続税・資金調達・無申告・税務調査立ち合い・クラウド会計・社会福祉法人など数多くのサービスで中小企業の皆様をサポートいたします。
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