コロナで法人決算の申告・納付が困難になった場合の期限と対応方法
目次
こんにちは。川越の税理士法人サム・ライズの林公士郎です。
新型コロナウイルス感染症の影響により、売上が大幅に下がってしまったり、あるいは事業の継続自体が危ぶまれる事態に陥ってしまい、法人税の申告・納付が難しい状況にある会社も少なくはないでしょう。
しかし、そのような場合であっても、無申告のままとしておくことはデメリットしかないため、おすすめできません。
もしも定められた期限までに法人税の申告・納付ができない状況にある場合は、申告・納付期限を延長することが可能です。法人決算は、やらないまま過ごしてしまうと実はデメリットの方が多く、また、罰則もあるため必ず実施することをおすすめします。
今回のコラムでは、コロナの影響により法人決算の対応ができずにいる事業主の方のために、どのような措置があるのかをご紹介します。何から手をつければ良いのかわからない、それどころではないので手を借りたいといったご要望がある場合は、ぜひサム・ライズの法人決算サービスをご利用ください。
法人税の基本的な申告期限
まずは基本的な法人税の申告期限について触れておきます。
法人決算月は、この月にしなければいけないという決まりはありません。
そのため、企業ごとに自由に定めることができますが、一般的には3月末あるいは12月末を年度末として定めている企業が多いです。
一方、法人税の申告期限は「事業年度終了翌日から2か月以内」と定められています。例えば1月~12月までを事業年度としている場合の法人決算期日は、翌年2月末となります。つまり、2月末までにすべての決算書類の作成・申告・納税までを完了する必要があるということです。
法人税、消費税、法人事業性、都道府県民税、市町村民税などは、すべて「事業年度終了翌日から2か月以内」に納税までを終えることが義務付けられていますので、この期限を過ぎないよう事前の準備を早めに行っておく必要があります。
コロナの影響で法人税の納付が期限に間に合わない場合は延長申請を
法人税や法人事業税は、申告期限の延長申請を行うとその事由により期間延長が可能となる場合があるため、どうしても間に合わないと言う場合は事前に個別の期間延長申請を行うことをおすすめします。
新型コロナウイルス感染症の影響で、申告や納付が期限内にできない場合も個別指定による期限延長が認められるとされているため、「災害による申告、納付等の期限延長申請書」を作成のうえ、提出しましょう。
法人税及び地方法人税並びに法人の消費税の申告・納付期限と源泉所得税の納付期限の個別指定による期限延長手続の具体的な方法については、下記国税庁のサイトにて詳細に記載がありますので確認してください。
参考:国税庁「法人税及び地方法人税並びに法人の消費税の申告・納付期限と源泉所得税の納付期限の個別指定による期限延長手続の具体的な方法」(PDFファイル)
コロナの影響で法人税の納付自体が困難な場合
新型コロナウイルス感染症の影響により、申告や納付がそもそも困難という場合は、猶予制度があります。
法人税を含む国税の猶予制度は、納税をすることで生活が困難に陥る場合や、災害などの特定事由がある場合に申請をおこなうことで最大1年間の納税猶予が与えられる制度です。
猶予制度には、「1換価の猶予(国税徴収法第151条及び第151条の2)」と「2納税の猶予(国税通則法第46条)」があります。
ただし、特例猶予が利用できるのは、納期限が令和2年2月1日から令和3年2月1日までに到来する国税であり、なおかつ納期限までに申請がされているものが対象となっています。
もしも納期限までに申請ができないやむを得ない理由がある場合は税務署に相談することは可能となっているので、該当期間の法人税が無申告のままとなってしまっている場合は、放置するよりは一度相談をしてみることをおすすめします。
猶予を受けられる条件
納税の猶予が認められる理由としては、以下のような内容が挙げられています。
・新型コロナウイルス感染症の患者が発生した施設で消毒作業が行われたことにより、備品や棚卸資産を廃棄した場合
・納税者ご本人又は生計を同じにするご家族が病気にかかった場合、国税を一時に納付できない額のうち医療費や治療等に付随する費用
・納税者の方が営む事業について、やむを得ず休廃業をした場合、国税を一時に納付できない額のうち、休廃業に関して生じた損失や費用に相当する金額
・納税者の方が営む事業について、利益の減少等により、著しい損失を受けた場合、国税を一時に納付できない額のうち、受けた損失額に相当する金額
猶予を受けられた場合の措置内容
納税の猶予が認められると、以下のような措置を受けることが出来ます。
・原則として1年間納税が猶予されます。(状況に応じて更に1年間猶予される場合があります)
・猶予期間中の延滞税が軽減(※)又は免除されます。
(※)通常 年8.8%→軽減後 年1.0%(令和3年中の割合)
・財産の差押えや換価(売却)が猶予されます。
猶予制度について、詳しくは下記国税庁のWebサイトに記載があるので、該当する場合は確認してみてください。
参考:国税庁「新型コロナウイルス感染症の影響により納税が困難な方へ」
法人税などの納税猶予を受けるための申請方法
納税猶予の申請は、国税庁のWebサイトに掲載されている「猶予申請書」をダウンロードして行うことができます。申請は、所轄の税務署となります。ただし、特例猶予の期限は過ぎていますので、まずは所轄の税務署に相談をした方が良いでしょう。
国税局の猶予相談センターでは、新型コロナウイルス感染症の影響で国税を納付することが困難な場合の猶予制度に関する質問や相談を受け付けています。事業を営む会社があるエリアを管轄する国税局猶予相談センターにて相談をしてみるのも一つの手です。
納税猶予の申請は、国税庁のWebサイトに掲載されている「猶予申請書」をダウンロードして行うことができます。申請は、所轄の税務署となります。
ただし、特例猶予の期限は過ぎていますので、まずは所轄の税務署に相談をした方が良いでしょう。
国税局の猶予相談センターでは、新型コロナウイルス感染症の影響で国税を納付することが困難な場合の猶予制度に関する質問や相談を受け付けています。事業を営む会社があるエリアを管轄する国税局猶予相談センターにて相談をしてみるのも一つの手です。
法人税を無申告のまま未納とした場合の罰則
最後に、法人決算を行わず無申告のままとしていたことが税務署の調査などにより発覚した場合に課せられる税金について解説します。
無申告加算税
確定申告が必要にもかかわらず、新型コロナウイルス感染症の影響により期限が過ぎても無申告のままとしていた場合でも、「無申告加算税」が課せられます。
無申告加算税は、納付すべき税額に対し、「50万円までは15%」、「50万円を超える部分は20%」の割合を乗じて計算した金額です。
ただし、確定申告の期限が過ぎた後でも、自主的に確定申告をした場合は、無申告加算税が軽減され、「5%の割合を乗じて計算した金額」になる場合があります。
法人決算をして確定申告対象であることがわかっている場合は、必ず期限内に確定申告を行うべきですが、万が一コロナなどの影響を受けたが故にその期限が過ぎていたとしても、税務署の調査が入る前に申告を行いましょう。
重加算税
新型コロナウイルス感染症の影響により確定申告をしなければいけない対象者であるにも関わらず期限を過ぎても無申告のままとしてしまっていた場合、理由はどうあれ特にその内容が悪質であると判断された場合、「重加算税」が課せられます。
重加算税の税率は、「追加本税の35~40%」です。
具体的には、二重帳簿や帳簿書類の改ざんといった内容があてはまります。
重加算税対象となるペナルティの内容は、国税通則法68条に定められていますので、下記ページで確認してみてください。
参考:国税庁「法人税の重加算税の取扱いについて(事務運営指針)」
過少申告加算税
確定申告は期限内に行ったものの、その内容に誤りがあり納める税金が少な過ぎて修正申告書あるいは更正により新たに納税しなければいけなくなった場合は、その納税額の10%に相当する過少申告加算税が課せられます(期限内に申告して納めた税額分と50万円のいずれか多い額を超える部分は15%の課税)。
ただし、修正申告書の提出が、調査通知以後で、なおかつ調査によって更正を行うことになったものでない場合は、その提出により納付することになった税額の5%に相当する過少申告課税が課せられます(期限内に申告して納めた税額分と50万円のいずれか多い額を超える部分は10%の課税)。
もしも修正申告書の提出が調査通知以前で、自主的に行ったものである場合は、課税対象とはなりませんので、誤りに気づいたら修正申告書の提出を自発的に行いましょう。
延滞税
支払うべき税金があるにもかかわらず、定められた期限までに納めなかった場合、法定納期限の翌日から納付する日までの日数に応じ、延滞税が課せられます。
納税額は、滞納額と期間によって変わります。もしも新型コロナウイルス感染症の影響により納税が難しくなった場合は、放置せずに必ず税務署に相談を行いましょう。
国税庁のWebサイトで、シミュレーションができるので、気になる方は以下で確認してみてください。
関連記事はこちら:法人決算が無申告の場合の5つのデメリットと、その解決方法について
コロナで法人決算の申告・納付が困難になった場合の期限と対応方法、まとめ
新型コロナウイルス感染症の影響により、決算を行わず無申告のままとなってしまった場合でも、理由はどうあれそのまま放置することはデメリットしかありません。
新型コロナウイルス感染症以降、様々な猶予処置などが行われていますので、常に最新の情報をキャッチして、会社を継続的に経営していくための最善の方法をとることが必要となります。
サム・ライズでは、長らく無申告のままとなってしまったり、新型コロナウイルス感染症の影響を受け、申告や納税が難しくなってしまったりしている法人の申告サポートも行っています。
もしも新型コロナウイルス感染症の影響により、法人決算をせずに無申告のままとしている場合や、今年度分の申告に不安を感じているという場合は、オンラインで全国対応可能の決算申告サポートをぜひご利用ください。
税理士法人サム・ライズ
代表税理士。
大原簿記学校法人税税法課専任講師を得て平成5年12月税理士試験合格、平成8年1月林税理士事務所を開業、平成16年12月税理士法人サム・ライズを設立。
税理士法人サム・ライズは、税理士顧問・創業支援・相続税・資金調達・無申告・税務調査立ち合い・クラウド会計・社会福祉法人など数多くのサービスで中小企業の皆様をサポートいたします。
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