適正な人件費とは?人件費の考え方【正しい指標と見直し方法】

こんにちは。川越の税理士法人サム・ライズの林公士郎です。

会社の経営を行う上で、人件費をどの程度かけるべきなのかという考え方は、会社の健全化をはかるためには切っても切り離せません。

そのためにも、まずは人件費に含まれるものを正しく理解し、さらには経営に与える影響を分析して、現状の総額人件費が適正水準であるかを確認する必要があります。

そこで今回は、人件費として換算すべきものにどのようなものがあるか、また、人件費をどの程度かけるべきか考え方の指標となる軸と、改善するための考え方について解説します。

人件費に含まれるもの

人件費として換算すべき項目は、大きく分けて5つあります。

給与手当

最も大きな割合を占める人件費として「給与手当」があります。
「給与手当」に含まれるものは以下のようなものが該当します。

・基本給
・残業手当
・休日出勤手当
・賞与 (ボーナス)
・歩合給 (インセンティブ)
・通勤手当
・扶養手当
・住居手当
など

これらは、正社員のみならず、アルバイトやパートであっても毎月支払いが発生している場合は給与手当として扱う場合が多いでしょう。

なお、人件費を考える際の落とし穴となりうるのが、所定内賃金所定外賃金の連動性についてです。
所定内賃金とは毎月支払う基本給のことで、所定外賃金とは残業した場合や休日出勤した場合に支払う手当のことを指します。
所定外賃金は、所定内賃金をベースに算出するので、基本給があがると、それに伴い残業手当や休日出勤手当も上がることになります。

そのため、昇給をする際には、この点を考慮したうえで人件費の全体コストを見ておく必要があります。

福利厚生費(法定外福利費)

福利厚生費は、別名「法定外福利費」と呼びます。
法律で定められてはいないもので、会社が任意で提供している福利厚生のことを指しています。

そのため、どのような福利厚生費があるかは、会社により全く異なります。

福利厚生費の代表的なものには、以下のようなものが挙げられます。

・社員食堂
・社員旅行費
・各種レクリエーション費
・冠婚葬祭関連
・財形貯蓄補助費
・社宅費
・自己啓発支援費
・保養所
・健康診断
など

福利厚生費は社員にとってはメリットが多い一方、会社にとっては大きな支出となりますが、良い人材を集め、結果的に経営基盤を強くすることに繋がる面ももっているため、人件費を減らしたいからといって単になくせば良いというものでもありません。

法定福利費

法定福利費は、法律で定められた福利厚生に関する費用のことです。
そのため会社の判断でなくすことはできず、一部もしくは全額を事業主が負担することを義務付けられています。

法定福利費にあてはまるのは、以下の項目です。

・社会保険料:健康保険、厚生年金保険、介護保険
・労働保険料:雇用保険、労災保険

雇用人数が増えれば増えるほど、この費用の割合も大きくなります。

役員報酬

役員報酬は、その名のとおり、取締役、監査役、執行役、会計参与などの役員に対して支給される報酬のことを指します。

役員報酬は、雇用関係にある従業員に対して支払われる給与とは全く別物となります。

例えば、給与手当は全額損金として算入することができますが、役員報酬は損金への算入には厳しいルールが設けられており、その特定ルールに従わない限り基本的には損金として算入することが出来ません。
また、役員には各種手当も支給されません。

退職金

会社を退職する従業員や役員へ支払われる退職金も人件費です。

退職金には以下の2種類があります。

・退職一時金(退職をする際に一括で支払われる)
・退職年金 (退職したあとに年金として支払われる)

どちらの形態かは企業により異なります。
退職金が支払われる規定についても会社により異なります。

人件費が適正水準かどうかを考えるための分析指標

上記5つの人件費を漏れなく集計して、その金額が会社にとって適正であるかどうかを確かめる上で見るべき重要な指標に、以下のようなものがあります。

・労働分配率
・一人当たり売上高
・一人当たり経常利益
・一人当たり付加価値(労働生産性)
・一人当たり人件費

それぞれの数値を見える化して、同業他社や業界の平均数値と比較することで、人件費が適正であるかを見極め、ひいては経営課題を見つけ出すヒントとして活用することができます。

例えば一人当たりの売上高などが高かったとしても、一人当たりの付加価値だけが競合他社よりも低い場合、労働生産性を見直す必要があるということになります。

粗利に占める人件費の割合を見る「労働分配率」

人件費の適正水準を見極めるための指標のひとつである「労働分配率」は、企業が生み出す付加価値の中に占める人件費割合のことです。

付加価値とは、売上総利益(粗利益)のことです。
つまり、売上総利益のうち、どのくらいの割合が人件費に分配されているかを見る指標となりますので、財務分析を行う際には必要不可欠なものです。

労働分配率は、以下の計算式で算出します。

労働分配率=(人件費÷売上総利益)×100

労働分配率が高い場合、その会社は利益に対して高い還元率で従業員に給与を支払っているということになります。
逆に分配率が低い場合、従業員に対して適正な給与が支払われていないといった可能性があることになります。

ただし、この労働分配率は高ければ良い、あるいは低ければ良いというものでもありません。
高すぎる労働分配率は、何らかの課題があり会社の経営を圧迫する可能性がありますし、低すぎる労働分配率は、劣悪な労働環境を作り出し、違う意味での経営ダメージを作り出している可能性があります。

労働分配率も、単月だけを見るのではなく、数年分を会計年度ごとに比較し、経営状態とあわせて確認することが大切です。

投資に対してどれだけの成果を上げているかを見る「生産性」

労働分配率を算出して、その割合が高すぎる場合、従業員の人数が適正でなかったり、従業員の生産性が見合っていなかったりといった課題がある可能性があります。
この場合、生産性を上げることを考える必要があります。

会社にとっては少ない投資で、高い成果をあげられるのが理想です。

生産性は、以下の数式で算出します。

生産性=成果(粗利益)÷投入(人件費)

お気づきかもしれませんが、労働分配率と生産性の数式は、分母が逆転しただけです。

労働分配率は、粗利益に対してどれだけを人件費として分配しているかを算出しているのに対し、生産性は、人件費によってどれだけの粗利益を生み出したかを算出します。
つまり、生産性の高い会社は、労働分配率が必然的に低くなるというわけです。

その会社にとっての労働分配率は何%が理想的なのかを考え、生産性を上げる努力を行うことが必要となります。

今後の人件費推移もシミュレーションしよう

人件費については現状を把握して、改善策を考えることも重要ですが、これまでの数値データをもとに、今後の人件費の推移とそれが経営に与えるインパクト度合いをシミュレーションしておくことも大切です。

人件費をもとに経営シミュレーションを行う指標に「跳ね返り率」というものがあります。

「跳ね返り率」は、基本給の昇給が「総額人件費」にどの程度のインパクトを及ぼすのかを算出するものです。
そのため、跳ね返り率を算出する際は、賞与や法定福利費といった基本給の増減によって影響を受ける項目のみに限定します。

さらに、総額人件費から経営状況を分析する際は、あらかじめ固定条件と変動条件を明確にして設定することでより精度の高い分析を行うことができます。
例えば条件に「売上高」「付加価値率」「固定費」「昇給率」を含めた場合

・売上高の推移(見込み)
・付加価値率(見込み)
・固定費、設備投資(見込み)
・昇給率(見込み)

といった指標を算出して、シミュレーションすることができます。

算出した総額人件費が高いという結果が出た場合には、経営方針も含めた見直しをはかっていく必要があります。
その場しのぎの計画ではなく、中長期的な視点での是正改革に取り組みましょう。

【参考】業界別に見る平均労働分配率

自社の労働分配率が適正であるのかどうかのチェック指標として、業界別平均労働分配率を知っておくと良いでしょう。

ここでは、経済産業省が発表している平成29年度の業種別「労働分配率」の統計データをご紹介します。

製造業:46.1%
情報通信業:55.4%
卸売業:48.4%
小売業:49.5%
割賦金融業、クレジットカード:29.7%
飲食サービス業:64.0%
全業種合計:47.7%

上記の通り、労働分配率は業種により大きく異なります。
飲食サービス業は、接客業で人の労働力が最も重要なため、必然的に労働分配率が上がります。例えば同じ飲食業でも、さらに接客がモノをいうキャバクラやホストクラブといったサービス業は、さらに高い労働分配率であったりします。
逆に、初期のシステム投資などに費用がかかる金融業は、基本的に機械により賄える業務も多いため、労働分配率が低くて済むということになります。

これらはあくまで平均のため、上記数値は参考程度に見るべきものです。
自社にとってのベストな労働分配率は、そのほかの数値とあわせて総合的に見たうえで設定する必要がある点は理解しておきましょう。

参考:経済産業省「平成30年企業活動基本調査速報 付表7」

人件費が適正ではないと判断した場合に是正するための考え方

現状の総額人件費が適正でないことが分かった場合、直ちに是正すべき箇所を見つけて改善していく必要があります。

具体的にどのような観点で見直しを行う必要があるか、そのポイントについて解説します。

業務プロセスの見直し

人件費を最適にするポイントの一つとして、業務プロセスの見直しがあります。
業務プロセスの見直しとは、例えばある業務が特定社員に偏りすぎていないか、あるいは属人化しすぎていないか、過去の慣習をそのまま受け継いでいる不必要な作業が発生していないかといったものの見直しです。

とはいえ、これらを整理することは決して簡単とはいえない会社もあり、考えただけでも気が遠くなるという経営者の方も少なくないでしょう。

しかし、業務プロセスの見直しを行って、正していくことで、確実に生産性の向上につながっていきます。

会社全体で考えると何から取り組めば良いかわからないという場合でも、例えばチーム単位や部門単位などから見直しを行い、最終的には会社全体としての見直しに広げていくことでより具体的な対応方法も見出しやすくなるでしょう。

人件費の削減

人件費がかかりすぎている場合、システム導入で自動化するなど、他のものに置き換えるという方法が効果的です。

具体的には、人でなくても出来る定型業務をAI、RPAを活用して置き換えるという方法です。
初期投資費用はかかりますが、人件費は削減できますし、業務プロセスの改善にも繋がるため生産性の向上にも役立ちます。

また、SFA(営業支援システム)や、CRM(顧客関係管理)の導入なども業務をスムーズにし、営業利益の向上に役立てることができるので検討の余地があるかもしれません。

業務プロセスを見直せば、どの部分に人の手が必要ないか、他のものに置き換えることができるものは何か、といったことも見えてくるため、そのために必要なシステムの導入を検討すれば、必然的に人件費の削減に役立つでしょう。

人事評価制度の見直し

人事評価制度の見直しも、人件費の削減に効果を発揮する場合があります。

社員のスキル向上は、生産性を向上させ、結果的に利益の向上にもつながります。
そのため、福利厚生費をかけてでも社員研修や自己啓発支援費を付与した方が良い成果を生むことになる場合もあります。

また、人事評価を正しく行い、評価に見合った給与を支払うことは、社員のモチベーションアップにもつながり、退職を防ぐ役割も果たすため、人材採用にかかる負担も軽減することができるのです。

社員数を減らす(※実施の際は要注意)

全ての見直しを行い、どうしても社員数が多すぎるという場合は、人員削減を行って人件費を減らすということになります。

しかしこの方法は、あくまで最終手段と捉えるべきです。

人員削減は、残っている社員のモチベーションも大きく下げ、会社に対する社内、社外両方の評判を落とすことになります。

一度落ちた評判を立て直すのは大変なことです。

そのため、人員削減はあくまで最終手段として残しておくべきでしょう。

適正な人件費とは?人件費の考え方【正しい指標と見直し方法】まとめ

会社にとって人件費は非常に大きくて重要な費用です。

人件費に対する考え方により、労働生産性は大きく変化します。
そのため、経営者は、正しい人件費の把握と、重要な指標をもとに自社にとって適切な労働分配率を考える必要があります。

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関連ページ:税理士法人サム・ライズの経営支援について

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