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経営計画の正しい活用法 ~その1 基本編~ 良い会社をつくるために!
目次
こんにちは、川越の税理士法人サム・ライズの林亜由美です。
今年の梅雨入りは、全国的にずいぶん早いものになりましたね。
この時期、梅雨空のようになんとなく心まで曇りがちになりませんか?
でも、一歩外に出てみれば、草花たちが恵みの雨を受けていきいきと輝いていますよ。
そんな草花たちの姿に、癒しと元気をもらって頑張りましょう!!
さて、前回の私のブログ
<https://some-rize.jp/blog/keieishien/tadashii_keieisaikuru/>で、
正しい経営サイクルを確立させるための3ステップについてお話させていただきましたが、その後うまくご活用いただけているでしょうか?
前回のブログでご紹介した3ステップは、以下のとおりでしたね。
1.経営理念を作る
2.経営計画を作る
3.経営計画を使う
今回は、この中の「3.経営計画を使う」について、さらに深めていきたいと思います。
一見「計画を使うだけでしょ?」と簡単に思われがちですが、実は奥が深く、内容も濃いものになっていますので、まずは今回〈基本編〉について、そして次回〈課題編〉について、この2回に分けて解説していきます。
ぜひ最後までご一読いただき、みなさんの会社経営にお役立てください!
正しい経営サイクルとは
まずは、前回のブログでお話した、正しい経営サイクルについてのおさらいをしてみましょう。
下図のように、一般的な「PDCAサイクル」の前段階に位置する『経営理念』が重要だということを、前回は重点的にお話させていただきましたね。
なぜ『経営理念』が重要かというと、経営計画(Plan)を作成する前に『経営理念』をしっかり言葉にしておくことで、「どこに向かうのか」「何のために経営するのか」などという目標をより具体的に設定することができるからです。
ただし、せっかく良い『経営理念』のもとに経営計画を作成しても、それを置いておくだけではまさに「絵に描いた餅」になってしまいます。
経営理念と経営計画を作成したら、毎月、計画と実績を比べてズレを確認し、そのズレを修正するためのアクションを決めてさらに行動していくことが大切になります。
つまり、具体的な目標のもと「PDCA」が全て会社において実行されて初めて『正しい経営サイクル』と言えるのです。
さらには、『正しい経営サイクル』のうちの「D」、「C」、「A」をどれだけ真剣に取り組むことができるか、その取り組み方次第で、会社の成長度合いが変わると思っています。
そこで、今回および次回のブログでは、この「D」、「C」、「A」に真剣に取り組むために、自社の一番の課題は何かを掴む、ということをテーマにして話を進めていきたいと思います。
経営計画活用の基本
では早速、経営計画を活用するにあたって、まずは基本的な部分を解説していきます。
どうしても結果にばかり目がいって見落としがちな部分になりますが、とても重要で必要なことばかりです。
ここはしっかりと押さえておきましょう!
計画を作る目的は、「目標達成」ではない!
経営計画を作る目的はずばり、「会社を良くしていくこと」さらには「会社を成長させること」です。
もちろん目標は設定しますし、その目標を達成するために私たちは日々ジタバタといろいろなアクションを行います。
ですがはっきり言って、目標を達成すること自体に意味はありません。
大切なのは、目標を達成するためにジタバタといろいろなアクションを行うこと、そしてその結果、会社が良くなっていき、成長していくということなのです。
ですので、比べるべきは設定した「目標」と「今」ではなく、「過去」の会社の状態と「今」の会社の状態です。
つまり、去年よりどれだけ良くなったかを見ていくことが必要になります。
経営計画で設定した数値というものは、会社をより良い状態に引き上げてもらうための数値なのだということを、しっかりと理解するようにしてください。
「アクション」と、「目標」「スケジュール」を区別する
みなさんは、「アクション」と「目標」と「スケジュール」を正しく区別できていますか?
一見簡単に区別できそうな気がしますが、「アクション」を、「目標」や「スケジュール」と取り違えてしまっているケースは、実は少なくないのです。
例えば、MAS監査の中での次のような会話のやり取りで見ていきましょう。
私・・・「来月のアクションは何ですか?」
Aさん・・・「10件の契約を受注することです。」
Bさん・・・「セミナーの開催をします。」
AさんもBさんも、一見「アクション」を答えているように見えますが、実はどちらも「アクション」ではなく「結果」になっています。
さらに具体的に言うと、Aさんが答えた「10件の契約を受注すること」は「目標」、Bさんが答えた「セミナーの開催をすること」は「スケジュール」になるのです。
「アクション」は、これらの「目標」や「スケジュール」といった「結果」を得るために実際に何をやるのか、というところになります。
すなわち、「やったか、やらなかったか」が明確にわかる行動のことです。
では具体的にどのような行動のことなのか、もう一度AさんとBさんの例で考えてみましょう。
Aさんの場合・・・アクション=「10件の契約を受注する」ために起こす行動
・毎日20件ずつ月400件以上テレアポする
・毎月300通以上DMを出す
・既存顧客訪問を週3件、月14件以上実施する など
Bさんの場合・・・アクション=「セミナーを開催する」ために起こす行動
・キーマンに会って集客を依頼
・セミナー集客会社への登録
・既存客へメルマガで知らせる など
以上のような行動であれば、「やったか、やらなかったか」がはっきり分かりますよね。
このように、その「目標」を達成するために具体的にやるべきことは何なのか、またこの「スケジュール」に対して今やるべきことは何なのか、ということが「アクション」になっていきます。
「目標」や「スケジュール」などの「結果」と区別して、アクションプランを立てることを意識していただきたいと思います。
アクションを実行せずに結果は検証できない
「目標」や「スケジュール」と区別して、明確なアクションプランを立てることができたら、次はそのアクションを「やったかどうか」、また「やってどうだったか」を検証していきます。
そもそも、数値計画はアクションとセットで策定していますよね。
このアクションを実行して、この計画した売り上げ目標を達成する、というふうにセッティングしているわけです。
ということは、このアクションを実行したらこの売り上げになる、という仮説を立てているので、その仮説を100%実行していかなければ、それが正しかったかどうかを検証できない、ということになるのです。
私のこれまでの経験上、結果を出してくる会社というのはMAS会議で決めた宿題を100%やってくる会社が多いように思います。
このような宿題を100%できる会社というのは、仮説をしっかりと検証できているので、どんどん良い結果につながっていくのだと言えますね。
毎月計画的に今期のゴールと次の手を考える
さてここからはいよいよ、経営計画の正しい活用法〈基本編〉の最後の部分になります。
経営計画を正しく活用するにあたっての最後のポイントとなるのは、「毎月ゴールがどうなるかを確認して、次の手を考えていく」ということです。
つまり、MAS会議などの宿題や、自分で計画したアクションプランをしっかりと実行していくことと同時に、当初作成した単年度計画の「ゴール」を常に意識していくということが大事になってくるのです。
この「ゴール」を見ていくために、みなさんにはぜひ「受注管理表」というものを付けていただきたいと思います。
「受注管理表」とは、現段階で期末までにどれだけの受注を取っているのか、つまりどれだけの売り上げが確定しているのかというところの見込みを管理するための一覧表のことをいい、下のような表になります。
例えば、受注してすぐ売り上げになるという現金商売であれば、受注はそのまま売り上げになっていきますが、建設業や私たちコンサルティング業などであれば違ってきますよね。
受注した後、毎月毎月売り上げになるものもあれば、今受注しても売り上げになるのが数か月後になるものもあり、受注と売り上げのタイミングに「ずれ」が生じてきます。
この「ずれ」をしっかりと管理でき、「ゴール」を明確に見えやすくしてくれるのが「受注管理表」になります。
上の表では、4月までの実績に受注済みの売り上げを足していますが、受注済みの売り上げを見込み計上することが難しい場合は、これまでの実績に当初の計画を足すことで算出してください。
この「実績+受注」あるいは「実績+当初計画」の数字を毎月振り返ってみていく、ということが大切になってきます。
ではここからは実際に、C社の当初単年度計画や実績を例に挙げ、表を使って具体的に見ていきたいと思います。
例えば、C社が下表のように当初の単年度計画を立てていたとします。
C社はまず、当初の単年度計画で、売り上げ目標を27,504千円(表中の赤枠部分)…①、営業利益を3,574千円(表中の青枠部分)…②、と設定しました。
設定したら、毎月この売上計画に対して実際はどうだったか、という検証を進めていきますよね。
その時に同時に、最初に決めた「ゴール」が今の時点でどうなっているのか、というところも見ていただきたいのです。
C社の場合は下表のとおり、実績+受注の「受注管理表」を付けているので、これまでの実績に受注した金額を足し込んで「ゴール」を見ていく、ということになります。
具体的に受注管理表を見ていくと、4月の段階で年間売り上げが25,917千円(表中黄枠部分)…③、営業利益が439千円(表中緑枠部分)…④で着地する、ということが見えています。
ここで、当初の単年度計画と比べてみてください。
【売上高】
当初単年度計画(=赤枠①): 27,504千円
受注管理表(=黄枠③): 25,917千円
差額 1,587千円
【営業利益】
当初単年度計画(=青枠②): 3,574千円
受注管理表(=緑枠④) 439千円
差額 3,135千円
そうすると、【売上高】はあと1,587千円、【営業利益】はあと3,135千円足りていない、ということが分かります。
このとき、【売上高】に関してはぜひ、「あと1,587千円だ」とインプットするよりも、自社の商品やサービスの件数に置き換えて「あと何件だ」と意識するようにしてください。
例えば、C社の場合は客単価が80万円なので、あと2件受注できれば売り上げ目標は達成できる、といった感じです。
そうすることで非常に分かりやすく考えることができ、後のモチベーションにも繋がりますよね。
このように、計画を立てる時や実績を検証していくときには、売上の金額だけではなくて、件数で管理するというところも重要になっていきます。
また、【営業利益】に関しては、あと3,135千円足りていないということが見えたことで、この数字をもとに検証でき、足りない部分をクリアするために今やるべきことが見えてくる、ということになります。
まとめ
ここまで、経営計画を正しく活用していくための〈基本〉についてお伝えしてきましたが、いかがでしたでしょうか。
経営計画の目的を正しく理解することや、「やったか、やらなかったか」が分かるアクションプランを作成すること、そしてそのアクションを100%実行することの大切さや、常にゴールを意識することの重要性など、今回お伝えしたことはどれも本当に基本的なことばかりです。
ですが、これらのうち一つでも欠けていては、せっかくの経営計画も正しく活用していくことはできないと思っています。
しかし私の経験上、これらの基本をしっかり押さえていても、アクションが滞ってしまったり、なかなか思うような成果が出てこなかったり、という会社があるのも事実です。
そこで次回のブログ〈課題編〉では、なぜアクションが滞ってしまうのか、なぜ成果が出てこないのか等、基本を押さえた後に出てくる様々な課題をクリアする方法について、詳しく解説していきたいと思います。
今回も最後までお読みいただきまして、ありがとうございました。
税理士法人サム・ライズ
代表税理士。
大原簿記学校法人税税法課専任講師を得て平成5年12月税理士試験合格、平成8年1月林税理士事務所を開業、平成16年12月税理士法人サム・ライズを設立。
税理士法人サム・ライズは、税理士顧問・創業支援・相続税・資金調達・無申告・税務調査立ち合い・クラウド会計・社会福祉法人など数多くのサービスで中小企業の皆様をサポートいたします。
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