売上と費用はいつ計上?発生主義と実現主義と費用収益対応の法則

こんにちは!川越の税理士法人サム・ライズの山口純です。

今回は、会計を深く知る上でとても重要な論点である、収益と費用をいつ計上するか?
(収益と費用の期間帰属)について解説していきます。

財務三表とは

財務三表は、以下の3つの計算書のことを指します
貸借対照表(B/S)
損益計算書(P/L)
③キャッシュフロー計算書(C/F)

これら3つの計算書は、会社の経営活動を表す最も重要な計算書として、「財務三表」と呼ばれています。
(キャッシュフロー計算書は、上場企業のみ作成義務があります)

収益と費用は現金の動きと一致しない!?

財務三表のうち貸借対照表と、損益計算書は、前の記事で解説しました。
次は、さっそくキャッシュフロー計算書の解説に行きたいところですが、まず、会計を理解する上で非常に重要な考え方である。
発生主義、実現主義、費用収益対応の原則、現金主義
について、今回の記事で解説していきます。

なぜ、まず、これらの考え方を知る必要があるのでしょうか?
それは、損益計算書の
収益    ≠ 現金の動き
費用    ≠ 現金の動き

だからです。

売上高や仕入高が、必ずしも、現金の動きと一致するわけではないのです。
今期の売上が“100”あったからって、今期に会社に現金が“100”入金されたわけではないのです。入金された額は、“80”かもしれないし、“120”かもしれません。

なぜ、収益と費用と現金の動きが異なるのか、これは、会計を知る上で重要なポイントで、これを知らなければ、キャッシュフロー計算書理解する事が難しくなってしまいます。

そこで、キャッシュフロー計算書の解説をする前に、
今回:発生主義、実現主義、費用収益対応の原則
次回:減価償却
次々回:引当金

の、3つの会計上、非常に重要な論点を解説していき、収益費用及び現金の動きが異なる事の理解をしていきましょう。
この3つの考え方が理解できて、キャッシュフロー計算書の仕組みが理解できたら脱入門です!!
なるべく、わかりやすく解説していきますので、頑張っていきましょう!

クイズ:売上と費用はいつ計上?

クイズ1

甲社は、仕入先より商品を仕入れて売っています。
3月15日に、仕入商品が届きました。
4月30日に、この仕入商品の代金を払いました。
そして、6月15日のこの商品が売れました。

さて、この仕入が費用として計上されるのはいつでしょうか?
3月15日でしょうか?
4月30日でしょうか?
それとも6月15日でしょうか?

クイズ2

乙社は、システムをカスタマイズして得意先に販売しています。
1月15日に、得意先と売買契約を結びました。
2月30日に、得意先から、前受金で販売金額の半分の代金が振り込まれました。
4月20日に、完成したシステムを得意先に納品し、得意先もシステムが正常に稼働することを確かめました。
5月30日に、得意先から、残りの販売代金が振り込まれました。

さて、売上が計上されるのはいつでしょうか?
1月15日? 2月30日? 4月20日? 5月30日?

クイズ3

丙社は、3月に4月~6月の3か月分の家賃を前払いしました。

さて、家賃を費用計上するのはいつでしょうか?

ちょっと悩みますよね。
以下の、収益費用の計上のルールを理解すれば、費用及び収益がいつのタイミングで計上されるかクリアになります!
答えは、各主義の解説の後です。

ここで、先に、どのように収益費用を認識するかをまとめた表を挿入しておきます。
この対応表をみながら、下記の解説を読むと頭に入りやすいかと思います。

費用収益は原則的に発生主義で計上

発生主義とは

発生主義とは、現金の動きに関係なく、取引や事象が発生した時に費用収益を計上するルールです。
費用に関して、たとえ前払いや後払いをしたとしても、その費用が発生した時に、費用を計上します。

翌月払いの給与の例

給与を月末に締めて、翌月25日に支払う場合、支払った月ではなく、給与が発生した月(支払う前の月)に給与を費用として計上する必要があります。
(参考の仕訳)
給与発生月:給与/未払金
給与支払時:未払金/現金及び預金

12か月前払いの保険料の例

保険料を12か月分まとめて前払いしたとします。
でも、費用計上は、支払い時ではなく実際に発生した月に12等分して計上していきます。
(参考の仕訳)
前払い時点:前払費用/現金及び預金
保険の発生月:保険費/前払費用(該当月に毎月計上)

機械購入の例

製品製造な機械を購入しました。この機械は今後何年も稼働します。
費用は、支払い時ではなく、今後の稼働期間に減価償却という会計テクニックを使って支払い額を配分していきます。(減価償却の詳しい説明は次回)

大規模修繕費の例

10年に一度、建物の大きな修繕を行うとします。
でも、修繕は10年後でも、その修繕費が発生する事実は今期にもあります。
そういった場合も、引当金という会計テクニックをつかって、今期に費用計上します。(引当金の詳しい説明は次々回)

費用収益は、原則として、この発生主義に基づいて計上します。

売上は実現主義で計上

売上は、発生主義で計上はしにくいです。
売上の発生とはいつでしょう?製品開発やマーケティング、製造、営業等を得て徐々に売上が発生しますが、各段階の客観的な売上の発生金額はわかりません。
しかし、企業の収益の根幹をなす売上の計上額が曖昧では困ります。そこで、売上は実現主義という、発生主義よりももっと具体的な基準で計上します。

実現主義とは

実現主義とは、収益が実現した時点で収益を計上するルールです。
具体的には、
①外部の第3者に対して、商品の引き渡しや、サービスの提供した時点
②対価(現金や売掛金)を受け取った時点

2つの要件を満たす必要があります。
(注意)上場企業等の監査対象企業は、2021年4月から、後述する新たな収益認識基準に従う必要がありますが、中小企業は、従来のルールで処理する事が認められているため、今回は従来のルールの解説を致します。
但し、返品調整引当金・工事進行基準等の、実現主義の例外規定にて会計処理をしていた会社は、中小企業でも会計処理の変更が必要な場合があるので、専門家にご相談下さい。

手付金が支払われ場合

製品を得意先にカスタマイズしている期間に、前受金として、代金の一部が支払われた時、②の要件は満たしましたが、①の要件はまだ満たしていないので、この時点では売上は計上できません。
(参考の仕訳)
前受時:現金及び預金/前受金
実現時:前受金/売上高

商品を勝手に送り付けた場合

今期の売上を伸ばしたく、注文もないのに商品を得意先に送り付けた場合、得意先の対価支払いの意思がないため、②の要件が満たされず、売上は計上できません。
また、子会社等の関連会社に売った場合は、①の外部の第3者の要件が満たされないため、売上は実現しておらず、連結財務諸表上は、関連会社に売った分の売上は消去しなくてはいけません。

売上の形態にあった基準を適用しよう

また、①の商品やサービスの引き渡の時点に関しては、出荷した時点、引き渡した時点、検収した時点といった基準があります。自社の商品にあった基準を継続的に採用します。
そして、業務形態によって、例外的な売上計上ルールが定められている場合もあるので、売上の計上ルールに関しては、一度、専門家に相談してみて下さい。

売上と紐付いている費用は、費用収益対応の法則で計上

売上は、実現主義、
費用は、発生主義
で計上すると、1つ問題が出てきます。

たとえば、商品を仕入れて、その仕入れた商品が1年後に売れたとしましょう。
発生主義だけだと、この商品の費用計上時は、商品を仕入れた時点です。
最初の年は、商品の金額のみが費用に計上され、次の年は商品の販売価格のみが売上として計上されてしまい、経営実態をあらわさないちぐはぐな損益計算書になってしまいます。

そこで、費用収益対応の原則がでてきます。

費用収益対応の原則

費用収益対応の原則とは、売上の計上時に、その売上に直接紐づく費用を計上するというルールです。関連性のある売上と費用は常にセットで損益計算書に計上しましょうという事です。
なので、販売されるのを待っている在庫たちは、貸借対照表で棚卸資産として、売上が実現される日を待って、売上が実現された際、晴れて、売上原価として損益計算書に計上されるのです。
販管費は、売上との直接の関連性がないため、基本的に発生主義で計上します。

PLと収支に差が出た場合は、BSの勘定で待機する

現金の動きと収益費用のズレを調整するための、貸借対照表の科目を使います。
費用になれる日を待っている勘定は、前払費用や棚卸資産等です。
費用になっちゃったけど、支払いがまだな勘定は、買掛金、未払費用や引当金等です。
収益になっちゃったけど、入金がまだな勘定は、売掛金や未収金等です。
収益になれる日を待っている勘定は、前受収益や前受金等です。

このようなBS勘定は、資産や権利や義務という見方の他に、過去や未来の収益又は費用という見方もできますね。会計(複式簿記)というのは、本当に良くできているなーと思います。
この勘定たちは、キャッシュフロー計算書を理解する上で大切なので、覚えておくと便利です。

クイズの答え

収益及び費用の認識基準を理解した今は、最初のクイズは簡単に答えられると思います。

クイズ1の答え:6月15日が費用の計上日となります。
(解説)発生主義だと3月15日となりますが、商品の仕入で売上と直接関係のある費用なので、費用収益対応の原則に従って、商品が売れた日である6月15日が費用の計上日となります。
4月30日の代金の支払いは、費用の認識には関係がありません。

クイズ2の答え:4月20日が売上の計上日となります。
(解説)商品が納品されて、得意先もシステムの検収をしているので、4月20日に売上が実現し、売上計上日となります。この場合は、契約締結日や代金の入金日は関係ありません。

クイズ3の答え:4月から6月までの各月が家賃の計上月となります。

現金主義とは

ここで、現金主義とは、現金の動きがあった時点で収益費用を認識する考え方です。

現金主義だと、単純に現金の動きを記帳するだけで、会計が煩雑にならずに済むから現金主義でもよいような気がします。

しかし、現金の収支のタイミングは、実際の取引や事象が発生した時点とズレてしまうことが多く、ある一定期間の経営成績である損益計算書の収益費用の計上のタイミングがずれてしまって、経営実態を正確に表すことができません。

なんで発生主義、実現主義、費用収益対応の法則に従う必要があるの?

ある会社が、
N期に商品(600)を仕入れました。
N+1期にその商品(600)の代金を支払いました。
N+2期に、その商品を1000で売掛金にて販売しました。
N+3期にその商品の販売代金(1000)の入金がありました。

これを、各主義毎に下記の簡易PLでどうなるか見てみましょう。

このように、発生主義と実現主義と費用収益対応の原則に従わないと、PLに会社の経営成績が正しく反映されません。これは、損益計算書が一定期間に区切られているからです。
期間帰属を適切にするために、発生主義と実現主義と費用収益対応の原則に従う必要があります。
4期の合計を見るとすべて同じ結果になります。なので、これらのルールは、正しい期に費用と収益が帰属する為にあると言えます。

期間帰属のルールをきちんと定めないと、経営者が恣意的に売上や費用の計上時期を操作して、利益を多く、又は少なく計上されてしまい、財務諸表の信頼性が低下してしまいます。
また、各企業が別々のルールで収益を計上した場合、企業間の比較も難しくなってしまいます。

新しい収益認識基準

2018年3月30日に新たに「収益認識に関する会計基準」が公表され、監査対象法人は、2021年4月1日から、この新たな収益の認識基準を強制適用する事になります。
新たな収益認識基準は、IFRS(国際会計基準)の内容とほぼ同様となり、国際的に会計基準の統一の動きに沿った改正となりました。
尚、中小企業は、任意適用で、従来の収益認識基準で処理することも認められています。

新たな収益認識基準は、前述の実現主義よりも更に具体的で、収益を、契約の識別、履行義務の識別、取引価格の算定、取引価格の履行義務への配分、履行義務の充足による収益の認識という5つのステップで認識していくものです。

基本的に中小企業は、今回の改訂は会計上、関係ありませんが、上記1つめのステップで「契約の識別」とあり、契約書が非常に重要になってくるので、大企業と取引のある中小企業は契約書の見直しが必要だったのではないでしょうか。

今回は、任意適用である中小企業や会計入門者を対象としている記事ですので、新たな収益認識基準には詳しく触れませんが、上場を希望している会社等は、早めに専門家に相談をし、売上の認識基準の確認を一度行ってみるといいかもしれません。

おわりに

このように、収益費用と収支が一致しない理由がわかっていただけたでしょうか?
次回は、減価償却について解説していきたいと思います。

川越の税理士法人サム・ライズへお気軽にご相談ください。

関連ページ:税理士法人サム・ライズの経営支援について

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