不動産を相続した際に確定申告を行うべき対象者と申告方法
目次
こんにちは、埼玉県川越市の税理士法人サム・ライズの林公士郎です。
不動産を所有していた家族や親族が亡くなり、その不動産を相続することになった場合、不動産の内容に応じて確定申告を行う必要があります。
確定申告には申告期限もあるため、早めに内容を確認のうえ、準備を進めることをおすすめします。
そこ今回は、不動産を相続した際にどのようなケースで確定申告が必要になるのか、そして不動産を相続した際の確定申告を行う方法、また相続が発生した場合に対応しなければいけないそのほかの申告等についてもあわせて解説します。
不動産を相続したら確定申告が必要なケース
不動産を相続した場合、確定申告を行わなければいけないのは、以下4つのいずれかのケースに当てはまる場合です。
賃貸収入がある不動産を相続した場合
所有している不動産が賃貸物件や駐車場など収入がある場合、亡くなった年の1月1日から相続が発生した日までに得た収入は、すべて亡くなった「被相続人」のものとして確定申告を行う必要があります。
そして、相続が発生した日以降に得られた収入については、その不動産を相続する「相続人」の収入として確定申告を行います。
例えば被相続人が亡くなり8月1日から相続が発生した場合、1月1日~7月31日までの収入は「被相続人」の収入として確定申告を行い、8月1日~12月31日までの収入は「相続人」の収入として確定申告を行う、ということです。
この場合の確定申告は、得られる収入から、収入を得るために要した費用(管理費・修繕費・減価償却費など)を差し引いた所得を、「不動産所得」として申告するかたちとなります。
不動産を分割相続して現金化した場合
相続人が複数いる場合、その遺産を分けやすいよう現金化して分け合うことを「換価分割」と言います。
不動産を売却して発生した売却益は、その差額を「譲渡所得」として相続が発生した日から12月31日までの収入として申告します。
換価分割を行った場合は、相続した全員に所得が発生したことになるため、相続人全員が確定申告を行う必要があります。
相続した不動産を売却して現金化した場合
相続した不動産を売却した場合、売却額とその財産を取得する際に発生した取得費に差額の売却益があった場合は収入を得たことになるため、「譲渡所得」として確定申告が必要になります。
建物の取得費は、新築もしくは取得してから売却するまでの間の減価償却を考慮したうえで計算します。ただし、相続で得た場合は、「亡くなった被相続人が取得した価額」と「取得した時期」を引き継ぐことになります。相続人が相続した時点での相続税評価額や相続開始の日で算出することはできないので注意してください。
これは、減価償却を行わない土地の場合も同様です。
なお、相続した不動産を指定期間内に譲渡した場合は、一定金額が相続税から譲渡資産取得費として差し引かれる「遺産を譲渡した場合の取得費の特例」を適用することができます。
参考:国税庁「土地建物の取得費と譲渡費用」
https://www.nta.go.jp/m/taxanswer/jouto304.htm
相続した不動産を寄付した場合
被相続人より不動産を相続した相続人が、相続税の申告期限までに所定団体(国や地方公共団体など)へ寄付(贈与)した場合は、相続税が課税されません。
あるいは、相続人が所定団体以外の団体に寄付を行った場合、あるいは申告期限を過ぎてから寄付を行った場合は、相続人が所得税の申告を行えば一定の金額まで寄付金控除を受けられる場合があるので、当てはまる場合は確定申告を行いましょう。
参考:国税庁「一定の寄附金を支払ったとき(寄附金控除)」
https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/1150.htm
不動産の相続をうけた際に確定申告を行う方法
不動産を相続して申告が必要なケースのいずれかに当てはまる方は、確定申告の方法や必要な書類を確認し、申告を行う準備を整えましょう。
青色申告か白色申告か
確定申告には「白色申告」と「青色申告」の2種類があります。
・白色申告:年間所得が300万円以下の方向け
・青色申告:年間所得が300万円以上の方向け
青色申告は、各種控除を利用することで、10万円または65万円の控除を受けることができるという大きなメリットがあります。
確定申告を行う期限
被相続人が、亡くなる前に行っていた確定申告が白色申告だったのか、青色申告だったのかで、相続人が行う確定申告の提出期限が異なるので注意が必要です。
■被相続人が「白色申告」を行っていた場合の確定申告期限
・被相続人が開業した日が亡くなった年の「1月16日以降」の場合:業務開始後2ヶ月
・上記以外の場合:相続人が青色申告を行う年の「3月15日まで」(※通常の確定申告の期限と同様)
■被相続人が「青色申告」を行っていた場合の確定申告期限
・被相続人の命日が1月1日~8月31日:命日から4ヶ月以内
・被相続人の命日が9月1日~10月31日:同年12月31日まで
・被相続人の命日が11月1日~12月31日:翌年2月15日まで
※被相続人の命日で提出期限が異なるので注意してください。
確定申告に必要な書類
確定申告を行う際には、以下の書類を準備してください。
■確定申告を行う全員が必要な書類やモノ
①確定申告書B
国税庁のホームページからダウンロードできます。
確定申告の申告書にはAとBの2種類がありますが、Aはパート・アルバイトの方向けのもので、Bは誰でも利用できるので、確定申告書Bを利用するのが良いでしょう。
参考:国税庁「確定申告書作成コーナー」https://www.keisan.nta.go.jp/kyoutu/ky/sm/top#bsctrl
②公的身分証
マイナンバーカードを持っている方:マイナンバーカードのみでOK
マイナンバーカードを持っていない方:マイナンバーが記載されている住民票、もしくは、通知カード+運転免許証・保険証・パスポートのいずれか1つを用意
各身分証のコピーを上記①の「確定申告書B」に添付してください。
③印鑑
④相続で得た収入がわかる書類
上記とあわせて、以下条件に該当する場合は、それぞれ当てはまる必要な書類を一緒に持参してください。
■条件によっては必要な書類やモノ
・生命保険などの社会保険料控除を受ける場合:加入している保険会社が発行する保険料控除証明書
・国民年金、国民健康保険、健康保険・厚生年金保険などの社会保険料控除を受ける方:社会保険料控除申請書
・確定申告を昨年度もしている場合:昨年度分の確定申告控え
・電子申請で確定申告をしたことがある場合:利用者通知番号等の通知、または利用者識別番号がわかる書類
・扶養者や事業専従者がいる場合:該当者のマイナンバーがわかるもの
・税金の還付の申告をする場合:申告人名義の預金口座番号がわかるもの
・寄付控除を受ける場合:寄付をおこなった団体が交付した領収証
不動産の相続をうけたら確定申告以外に行う必要があること
不動産の相続を受けた場合、ご説明してきた確定申告以外にも対応しなければいけないこと・対応したほうが良いことがあります。
それは、土地の名義変更・相続税申告・準確定申告です。
■名義変更
被相続人から相続した土地の名義を自分の名義に変更を行うことです。
名義変更は必須ではありません。
ただ、名義変更を行わないとその土地を担保にお金の借入ができなかったり、売却や貸付ができなかったりといったデメリットがあります。
また、相続人が複数いる場合は、他の相続人が自分の持ち分だけを売ってしまい、すべての土地を使用できなくなるといった権利関係の揉め事が発生する場合もあります。
そのため、名義変更はできれば対応しておいたほうが賢明でしょう。
■相続税申告
相続税申告は、相続を受けた不動産や現金など全財産の合計額が3,600万円を超える場合に必要となる可能性が高いです。
相続税の納税期限は「被相続人が死亡した日の翌日から10ヶ月以内」です。
相続税を規定期日までに納税しなかった場合、追徴課税を受けることになるため、忘れないよう必ず確認のうえ対応しましょう。
前述したとおり、土地の価額は特別な計算が必要なうえに特例節税を利用したりなど単純に計算しにくいため、相続税の申告を行う際には税理士に相談することをおすすめします。
■準確定申告
準確定申告は、相続した不動産が、アパート運営や駐車場運営などを行っており、死亡した被相続人が所得を得ていた場合に必要となります。
準確定申告の申告期限は通常の確定申告の期限とは異なり、被相続人からの相続開始を知った日の「翌日」から「4ヶ月以内」です。
規定期日までに申告しなかった場合は、相続税と同じく追徴課税を受けることとなるため、注意が必要です。
準確定申告については、以下のページで詳しく解説しているので、相続した不動産でなんらかの収益がある場合はあわせて確認してみてください。
不動産を相続した際に確定申告を行うべき対象者と申告方法まとめ
被相続人から不動産の相続を受けた場合、相続人は確定申告が必要になることが多いでしょう。
ご紹介した
・賃貸収入がある不動産を相続した場合
・不動産を分割相続して現金化した場合
・相続した不動産を売却して現金化した場合
・相続した不動産を寄付した場合
のいずれかに該当する場合は、指定されている期日までに必ず申告を行いましょう。
ただし記載したとおり、不動産の相続は、相続税申告も含めて評価が難しいため、いざ申告をしようとすると骨が折れるだけでなく、間違った評価額で申請を行うと大きく損をしてしまう可能性もあります。
不動産の相続に必要な手続きは、一括で税理士に依頼を行うことで正しい評価額のもと、安心して申告を行うことができます。
税理士法人サム・ライズでは、相続関連について1,000件以上の対応実績をもつ相続専門の税理士が対応させていただきますので、一度相談したいという方はぜひご連絡ください。
税理士法人サム・ライズの相続関連サービスについては下記ページでご紹介していますので、もっと詳しく知りたいという方はぜひあわせてご覧ください。
税理士法人サム・ライズ
代表税理士。
大原簿記学校法人税税法課専任講師を得て平成5年12月税理士試験合格、平成8年1月林税理士事務所を開業、平成16年12月税理士法人サム・ライズを設立。
税理士法人サム・ライズは、税理士顧問・創業支援・相続税・資金調達・無申告・税務調査立ち合い・クラウド会計・社会福祉法人など数多くのサービスで中小企業の皆様をサポートいたします。
最近の投稿
- 2024.12.12
- リーダーシップへの舞台裏Vol.6 ~今を駆ける社長のインタビューシリーズ~
- 2024.12.12
- リーダーシップへの舞台裏Vol.5 ~今を駆ける社長のインタビューシリーズ~
- 2024.12.09
- 【法人向け】確定申告をしない(無申告)とどうなる?