税務調査の対策|個人事業主・法人併せて解説
目次
本記事は、税務調査に対する具体的な「対策方法」を解説しています。
以下の記事では、「税務調査」について、一般的にまず知りたいと思う事項を網羅的に解説していますので、あわせてご覧ください。
1.税務調査についての基礎知識
税務調査は何をどこまで調べられるのか
税務調査では、個人事業主も法人も
基本的に、「お金に関わることは全て3年分」調べられます。
具体的には、
- 申告書類、帳簿書類
- その原始記録である領収書・請求書・通帳等
について、本棚からパソコン内のデータまで全て確認して探します。
何をどこまで調べられるのかについて、詳しく知りたい方は以下の記事をご覧ください。
どのくらいの確率で入られるのか
直近のデータによると、税務調査に入られる確率は、
- 個人事業主の場合、年度毎に約0.9%
- 法人の場合、年度毎に約1.9% です。
また、 税務調査がきて、申告漏れ等の誤りを指摘される確率は、
- 個人事業主の場合、約83%
- 法人の場合、約76% です。
税務調査で申告漏れ等の誤りを指摘される確率はかなり高いです。
誤りを指摘されると、 「過少申告加算税」や「延滞税」などが課されます。
税務調査に入られる確率について、より詳しく知りたい方は、以下の記事をご覧ください。
上記のように、 税務調査では申告内容を細かくチェックされますし、結構な確率で税務調査に入られるため、対策が必要です。
2.税務調査の具体的な対策
項目 | 対策方法 | 対策することで 防げること |
---|---|---|
売上 | ①入金口座は適切に管理する、現金取引を極力減らす | 売上の計上漏れを防ぐことができる |
②月末前に、期ズレしそうな案件がないか確認する | 売上の期ズレを防ぐことができる | |
原価 | ③在庫リストを作成し、在庫の管理をする | 在庫の計上漏れ、数量誤りをなくす |
④売上計上の基準を徹底的に確認する | 正しい基準で売り上げ・原価を管理できる | |
経費 | ⑤経費として計上するものの明確なルールを決める | 経費に対する公私混同を防ぐことができる |
消費税 | ⑥売上を意図的に分割しない | 消費税を正しく申告できる |
⑦取引毎に課税区分を明確に判断する、難しければ税理士に依頼する | 消費税の課税区分を正しく判断できる | |
⑧提出期限を一覧化しておく | 届出の遅延や失念を防ぐことができる | |
源泉 所得税 |
⑨支払内容と対象者を正確に分類・整理しておく | 源泉徴収の漏れを防ぐことができる |
印紙税 | ⑩課税対象になるものを正しく判断する、電子契約を導入する | 収入印紙の貼付漏れをなくせる |
その他 | ⑪購入段階で資産区分かどうかをチェックする、 取得日・取得金額・耐用年数・償却方法などを正確に記録する |
資産計上漏れをなくすことができる |
詳しくは「2-1.個人事業主、法人に共通する具体的な対策」をご覧ください。
項目 | 対策 | 対策することで 防げること |
---|---|---|
売上 | ①事業用資産の使用は全て記録する | 自家消費を正しく売り上げや経費に反映できる |
経費 | ②事業と私用の区別を明確にする、 事業使用割合が高いものでも、「全額経費」にはしない |
適正な経費計上ができる |
③専従者給与を他の従業員や外注と比較して著しく高額にしない、 仕事内容と見合わない給与にはしない |
適正な経費計上ができる |
詳しくは「2-2.個人事業主の具体的な対策」をご覧ください。
項目 | 対策 | 対策することで 防げること |
---|---|---|
経費 | ①金額や支払日を事前に決定し、正確に支給する | 損金算入漏れを防ぐことができる |
②役員貸付金については貸付日・返済方法・利息等を示した計画書を必ず作成する、 基本的に役員貸付金は0円する |
貸付金の不正利用を防ぐことができる | |
③旅費規程を作成し、社会通念上、高額でない日当金額を設定する | 適正な経費計上ができる |
詳しくは「2-3.法人の具体的対策」をご覧ください。
2-1.個人事業主、法人に共通する具体的な対策
個人事業主、法人に共通する税務調査の具体的な対策を、項目別で指摘されやすい内容ごとに解説します。
【売上項目の対策①】
- 入金口座を適切に管理する
- 現金取引を極力減らす
入金口座は必ず事業用口座に一本化して、私用口座に振り込まれた売り上げは即座に事業口座へ移しましょう。
飲食店や小売店の場合は基本的に毎日、売上を通帳へ入金すると良いです。
また、業種によって可能であれば、できる限り現金取引を減らすことも有効な対策です。
【売上項目の対策②】
- 月末前に、期ズレしそうな案件がないか確認する
売上は入金時期に関係なく、請求書で売上が確定したときに計上する必要があります。
売上の計上時期は取引によって異なるため、税法に沿って基準を設け、基準に従った計上を毎年行うことが大切です。
とくに決算月は税務調査官が厳しくチェックするため、決算月の売上計上は慎重に行いましょう。
【原価項目の対策③】
- 在庫リストを作成し、在庫の管理をする
商品を販売する業種では、税法に沿った基準で棚卸されているかチェックされます。
在庫リストを作成し、月末に棚卸作業日を設定して毎月管理しましょう。
また、在庫調整は帳簿とつき合わせて確認すると間違いがないです。
【原価項目の対策④】
- 売上計上の基準を徹底的に確認する
「納品基準」や「検収基準」など、会社で基準を定め、従業員全体に共有しておきましょう。
売上を計上していないのに、商品仕入れなどの原価を先に計上していると税額が少なくなってしまうため、税務調査で指摘されてしまいます。
【経費項目の対策⑤】
- 経費として計上するものの明確なルールを決める
経費に私的なプライペートのものが計上されていないかも、税務調査でよく確認されるポイントです。
「家事按分経費はエクセルで割合根拠を残しておく」「接待交際費は参加者名と目的を領収書に記載しておく」など、計上するものの明確なルールを決めておくと良いでしょう。
具体的に経費として認めてもらえるものがわからない場合は、税理士に確認することをおすすめします。
【消費税項目の対策⑥】
- 売上を意図的に分割しない
請求書発行時に、1つの契約を複数月に分割していないか確認しましょう。
消費税は売上高1,000万円を超えると課税対象となります。
売上高が1,000万円をギリギリ超えていない場合、「故意に調整しているのでは?」と疑われてしまいます。
また、「課税事業者選択届出書」を提出している場合は、売上高に関係なく必ず申告と納税が必要となります。
決算月の売掛金計上に注意を払うことが重要です。
【消費税項目の対策⑦】
- 取引毎に課税区分を明確に判断する
- 難しければ税理士に依頼する
請求書や領収書を受領した時に、「課税」「非課税」「免税」「不課税」の区分を判別しましょう。
記録するときは、エクセルや会計ソフトに入力するだけでなく、請求書や領収書に「課税」「非課税」などを明記しておくことも一つの策です。
また、課税区分の判断が難しい場合は、税理士に依頼することをおすすめします。
【消費税項目の対策⑧】
- 提出期限を一覧化しておく
一般的な申告や納付の期限とは異なり、消費税の届出書の提出期限は、適用を受けようとする課税期間が始まる前日までです。
何をいつ提出すべきかは混乱しやすいので、提出期限を一覧化しておくと良いでしょう。
【源泉所得税項目の対策⑨】
- 支払内容と対象者を正確に分類・整理しておく
税務調査では、給与において源泉所得税が正しく天引きされているか、また年末調整においても計算が合っているか確認されます。
給与だけでなく、士業や業務委託者に対しても源泉徴収されているか確認されます。
外注に支払う場合は、管理簿に「氏名」「支払日」「金額」「源泉徴収額」を記録しておきましょう。
参考:源泉所得税の不納付加算税の取扱いについて(事務運営指針)|国税庁
【印紙税項目の対策⑩】
- 課税対象になるものを正しく判断する
- 電子契約を導入する
印紙税については軽微な調査が多いですが、収入印紙の貼付が必要な課税文書の取り扱いが多い業種に関しては、細かくチェックされることもあります。
また、電子契約は印紙税が不要になるため、電子契約を導入するのも有効的な対策です。
【その他の項目の対策⑪】
- 購入段階で資産区分かどうかをチェックする
- 取得日・取得金額・耐用年数・償却方法などを正確に記録する
車や設備、10万円以上の消耗品などの資産を購入した際は、「取得日・耐用年数・金額・償却方法」を記録しておきましょう。
資産の価値自体を向上させるような修繕費も資本的支出となるため、資産計上が必要となります。
2-2.個人事業主の具体的な対策
税務調査における個人事業主の具体的な対策は、以下のとおりです。
【売上項目の対策①】
- 事業用資産の使用は全て記録する
自家消費がちゃんと記録されているかも税務調査ではよく見られます。
社用車やパソコンなどを私用で利用した場合は、日付や目的、時間などを記録しておきましょう。
ガソリン代の領収書やパソコンの使用ログを保存しておくのも一つの策です。
【経費項目の対策②】
- 事業と私用の区別を明確にする
- 事業使用割合が高いものでも、「全額経費」にはしない
自宅で個人事業を営んでいる場合は家賃や水道光熱費の事業割合が適切か確認されるため、事業と私用の区別を明確にする必要があります。
家賃は事務所として利用している面積割合、水道光熱費は事務所として利用している時間を算出して適切な経費を計上しましょう。
たとえ私用として使っている割合が高くても「全額経費」にすることはおすすめできません。
【経費項目の対策③】
- 専従者給与を他の従業員や外注と比較して著しく高額にしない
- 仕事内容と見合わない給与にはしない
家族や親族に給与を支払っている個人事業主は、専従者給与は適切かも確認されます。
家族や親族への給与額は、「勤務時間×時給 」で算定したり、相場以上の金額にしないようにしましょう。
タイムカード等で、「実際に仕事をしている」と言う証明を残しておくのも一つの策です。
2-3.法人の具体的な対策
税務調査における法人の具体的対策は、以下のとおりです。
【経費項目の対策①】
- 金額や支払日を事前に決定し、正確に支給する
法人給与は個人事業主と違い、役員報酬ですが、役員報酬は設定の自由度が高く、故意に税金を減少させている可能性があるため、厳しくチェックされます。
役員賞与は「事前確定届出」を税務署に提出し、その内容通りに支給しましょう。
また、定期同額給与は毎月同じ日に同じ金額で振り込みましょう。
参照:No.5211 役員に対する給与(平成29年4月1日以後支給決議分)
【経費項目の対策②】
- 貸付日・返済方法・利息等を示した計画書を必ず作成する
- 基本的に役員貸付金は0円する
役員が私用で購入しているものを、「役員貸付金」として帳簿に計上されているケースがあるため、「役員貸付金」が適切に処理されているかも税務調査では確認されます。
基本的に役員貸付金は0円にすることが望ましいですが、役員貸付を行う場合は貸付日・返済方法・利息等を示した計画書を作成しましょう。
また、貸付金と示すために認定利息を計上しておくことも重要です。
「役員貸付金」は役員への賞与と指摘された場合は、多額の税額が発生する可能性があります。
【経費項目の対策③】
- 旅費規程を作成し、社会通念上、高額でない日当金額を設定する
「日帰り出張は日当4,000円」「宿泊出張は日当6,000円」など、明文化しておきましょう。
「日当」とは、出張など規定の業務に対して、給与とは別に支給される1日単位の手当のことです。
出張精算時には、「交通費」や「宿泊費」の領収書も必ず添付しましょう。
税理士法人サム・ライズでは、税務調査当日の立ち会いサービスも承っております。弊社の税理士が立ち会い、最高で2,650万円分、納める税金を減少させたこともあります。
ぜひ一度ご相談ください。
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代表税理士。
大原簿記学校法人税税法課専任講師を得て平成5年12月税理士試験合格、平成8年1月林税理士事務所を開業、平成16年12月税理士法人サム・ライズを設立。
税理士法人サム・ライズは、税理士顧問・創業支援・相続税・資金調達・無申告・税務調査立ち合い・クラウド会計・社会福祉法人など数多くのサービスで中小企業の皆様をサポートいたします。
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