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社会福祉連携推進法人制度について
目次
こんにちは、川越の税理士法人サム・ライズの林 亜由美です。
令和2年6月に成立した改正社会福祉法では、社会福祉連携推進法人制度が新設されました。この「社会福祉連携推進法人制度」は、まだご存知無い方も多く、顧問先からもご質問されることが多いです。
そこで、今回はこの「社会福祉連携推進法人制度」とは、どのような制度なのか、そしてどのような可能性や課題があるのかについて、厚生労働省の資料を基にまとめていきます。ぜひ最後までお読みください。
参照:厚生労働省「社会福祉連携推進法人の運営等ついて」
参照:厚生労働省「社会福祉連携推進法人の会計について」
社会福祉連携推進法人とは
まず、「社会福祉連携推進法人制度」とは、一体どのような制度なのでしょうか。
社会福祉連携推進法人制度は、社会福祉法人等が社員となり、福祉サービス事業者間の連携・協働を図るための取組等を行う新たな法人制度です。
また、社会福祉連携推進法人は、社会福祉事業を運営する社会福祉法人やNPO法人を社員とし、相互の連携を推進する非営利法人のことをいいます。
令和2年6月に公布された「地域共生社会の実現のための社会福祉法等の一部を改正する法律」に基づき、令和4年度から「社会福祉連携推進法人制度」が施行されていきます。
社会福祉連携推進法人制度が施行された背景
社会福祉法人の数は、多少鈍化はしているものの増加はしています。しかし、社会福祉法人の経営状況は、以前と比較しても厳しい状況と言われています。
幾度となく介護報酬などが見直され、また地域での競争も一層加速したことによって、期待していた収支が見込めない法人も多くなっているのです。
また、人口減少や急速な高齢化、国民の抱える福祉ニーズの多様化・複雑化が進み、2040年には生産年齢人口の減少による人手不足などの問題が更に深刻化する恐れがあると言われています
そこで、そういった苦しい状況を何とか打開するために作られたのが、この「社会福祉連携推進法人制度」なのです。
社会福祉連携推進法人制度によって、社会福祉法人の経営基盤の強化や円滑に連携・協働化しやすい環境整備を図り、同じ目的意識を持つ法人が個々の自主性を保ちながら連携することにより、規模の大きさを活かした法人運営が可能となります。
この社会福祉連携推進法人は、分かりやすく言うと、複数の社会福祉法人等がグループ化して設立する法人のことです。
つまり、少子高齢化によって変化する社会構造に対して、社会福祉法人単体では提供できるサービスに限界があるので、互いに連携しあうことにより良い対応ができるように社会福祉連携推進法人制度がつくられたということなのです。
※社会福祉連携推進法人は一般社団法人を認定したものです。
運営としては、社会福祉法人と同水準の要件を持つ理事及び監事により理事会が開催されます。また、社員として参画できる法人の範囲としては2以上の法人が参画し、参画する社員の過半数は社会福祉法人であることが必要です。
社会福祉連携推進法人の業務内容
社会福祉推進法人の業務内容は以下の6つです。
1)地域福祉支援業務
2)災害時支援業務
3)経営支援業務
4)貸付業務
5)人材確保等業務
6)物資等供給業務
この他にも、連携推進業務に支障がない限り実施することはできますが、社会福祉連携推進法人自体が、社会福祉事業を行うことはできません。
上記についてそれぞれ、どのような業務なのかを詳しく解説していきます。
地域福祉支援業務
地域福祉支援業務は、「地域福祉の推進に係る取り組みを社員が共同して行う為の支援」とされています。具体的には、
・ 地域住民の生活課題を把握するためのニーズ調査の実施
・ ニーズ調査の結果を踏まえた新たな取組の企画立案、支援ノウハウの提供
・ 取組の実施状況の把握・分析
・ 地域住民に対する取組の周知・広報
・ 社員が地域の他の機関と協働を図るための調整
などの業務が該当するとされております。
つまりは、社会福祉連携推進法人の社員によって新たな取り組みの実施をすることで地域福祉の充実に繋がるとされています。
災害時支援業務
災害時支援業務とは、「災害が発生した場合における社員が提供する福祉サービスの利用者の安全を社員が共同して確保するための支援」とされています。具体的には、
・ ニーズの事前把握
・ BCP の策定や避難訓練の実施
・ 被災施設に対する被害状況調査の実施
・ 被災施設に対する応急的な物資の備蓄・提供
・ 被災施設の利用者の他施設への移送の調整
・ 被災施設で不足する人材の応援派遣の調整
・ 地方自治体との連絡・調整
などの業務が該当するとされています。
上記の業務を行う事によって、福祉サービス利用者の安心・安全確保、災害時の事業継続の強化に繋がるとされています。
経営支援業務
経営支援業務とは、「社員が経営する社会福祉事業の経営方法に関する知識の共有を図るための支援」とされています。具体的には、
・ 社員に対する経営ノウハウ等に関するコンサルティングの実施
・ 賃金テーブルの作成等人事・給与システムに関するコンサルティングの実施
・ 社員の財務状況の分析・助言
・ 社会福祉法人会計に関する研修の実施等適正な財務会計の構築に向けた支援
・ 社員の特定事務に関する事務処理の代行
などの業務が該当するとされております。
上記の業務を行う事によって、福祉サービス事業者の経営の安定確保が期待されています。
貸付業務
社会福祉連携法人から社会福祉法人への貸付の原資として、貸付対象ではない社員である社会福祉法人から社会福祉連携法人への貸付が認められます。
社会福祉連携法人への貸付額は、直近3ヵ年度の本部拠点の事業活動計算書における当期活動増減差額の平均額を上限に認められます。
貸付の返済は3年が限度となる期限を設定します。
貸付金の使途のイメージは以下の通りです。
・施設や事業所に供する建物の修繕、軽微な改修などの施設整備費用
・従業員の採用、処遇改善などの人件費
人材確保等業務
人材確保等業務とは、「社員が経営する社会福祉事業の従事者の確保のための支援及びその資質の向上を図るための研修」とされています。具体的には、
・ 社員合同での採用募集
・ 出向等社員間の人事交流の調整
・ 賃金テーブルや初任給等の社員間の共通化に向けた調整
・ 社員の施設における職場体験、現場実習等の調整
・ 社員合同での研修の実施
・ 社員の施設における外国人材の受け入れ支援
などの業務が該当するとされております。
上記の業務を行う事によって、学生等求職者への訴求力の向上、福祉・介護人材の資質向上、採用・研修コストの縮減が期待されています。
物資等供給業務
物資等供給業務とは、「社員が経営する社会福祉事業に必要な設備又は物資の供給」を指します。具体的には、
・ 紙おむつやマスク、消毒液等の衛生用品の一括調達
・ 介護ベッドや車いす、リフト等の介護機器の一括調達
・ 介護記録の電子化等 ICT を活用したシステムの一括調達
・ 社員の施設で提供される給食の供給
などの業務が該当するとされています。
上記の業務を行う事によって、設備・物資の大量購入による調達コストの縮減が期待されています。
上記の6つ以外の業務の実施は、社会福祉連携推進業務の実施に支障のない範囲で実施することは可能であるが、社会福祉連携推進法人自体が社会福祉事業や同様の事業の実施は不可能であるとされています。
支障がない範囲とは以下の通りです。
① 当該業務の事業規模が、社会福祉連携推進法人全体の事業規模の過半に満たないものであること
② 当該業務を行うことによって、社会福祉連携推進業務の実施に支障を及ぼすおそれがないものであること
③ 法第132条第4項に基づき、社会福祉事業を実施できないこととされており、社会福祉事業には該当しない社会福祉関係の事業についても、同様に実施できないこと
※対象者を社員の従業員の家族に限定しているサービスは、社会福祉事業ではなく、社員による従業員への福利厚生の一環と整理できるため、人材確保等業務として実施可能です。
社会福祉連携推進法人の会計
社会福祉連携推進法人の会計基準等は、一般社団法人であるため、一般社団法人及び一般財団法人に関する法律の会計に関する規定が適用されることとされています。
会計の単位は事業区分、拠点区分は設けることはせず、法人全体を一つの会計単位とします。
業務運営に係る財源は以下の通りです。
・入会金
・会費
・業務委託費
・寄附金
社会福祉法人のように施設整備等の補助金は想定されていません。
また、社会福祉法人とは異なり基金の設置は出来るが、社会福祉法人である社員は拠出することは出来ません。
社会福祉連携推進法人制度について、まとめ
今回は「社会福祉連携推進法人制度」についてまとめましたが、いかがだったでしょうか。
「社会福祉連携推進法人」では、職員の採用活動や人材育成を共同で実施できることから、深刻な人材不足の問題が解決されるかもしれません。
また、今までとの大きな変更点は、貸付業務が社会福祉連携推進法人を通すことによって可能になったという点です。資金を融通し合うことで、社会福祉法人同士の連携を強化することに繋がり、新たなサービスの開発に力を入れることも可能になるというメリットがあります。
課題としましては、まだまだ認知度が低いという点が挙げられるかと思います。また、連携をすることによって大規模化に繋がり、かえって問題が発生するのではないかと懸念する声もあります。
制度を利用にあたっては、まずは利用する側がしっかりと制度の内容を理解し、運営にプラスになる要素は取り入れていくという姿勢が重要だと思います。
サム・ライズでは、福祉を会計から支援することを志に、社会福祉法人の皆様のお役に立てるよう精一杯ご支援させていただいております。社会福祉法人の経営で何かお困りごとがありましたら、社会福祉法人の経営支援に強い、川越の税理士法人サム・ライズまでお気軽にご相談ください。
税理士法人サム・ライズ
代表税理士。
大原簿記学校法人税税法課専任講師を得て平成5年12月税理士試験合格、平成8年1月林税理士事務所を開業、平成16年12月税理士法人サム・ライズを設立。
税理士法人サム・ライズは、税理士顧問・創業支援・相続税・資金調達・無申告・税務調査立ち合い・クラウド会計・社会福祉法人など数多くのサービスで中小企業の皆様をサポートいたします。
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