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社会福祉法人の記帳方法の特徴とは?記帳代行を行う専門税理士が解説
目次
社会福祉法人は、国民が生活を送るうえで、支援が必要な人に対して福祉サービスを提供してくれるのが社会福祉法人です。
つまり健康で元気に生活していれば、あまり身近に感じることがない存在といえます。
しかし経理に携わっていれば、いつか社会福祉法人の会計に関わることがあるかもしれません。
そこで本記事では、あまり馴染みのない社会福祉法人の記帳方法について、実際に記帳代行を行っている税理士が詳しく解説します。
社会福祉法人の会計基準と記帳方法
社会福祉法人は全国に2万社以上あり、直接の関わりはなくとも存在については知っていると思います。
名前に「社会福祉」とあることから、困っている方の力になっていることは、何となくでも想像できるでしょう。
まずは、社会福祉法人がどのような法人組織で何をしているのか、また一般企業と大きく違う会計方法について説明します。
社会福祉法人とはどのような法人なのか
社会福祉法人とは、社会福祉事業を行うことを目的として、社会福祉法に定めるところにより設立された法人で、第一種社会福祉事業及び第二種社会福祉事業を行うことを目的にしています。
こう書いてしまうと難しい印象を受けますが、社会福祉法人の約9割は福祉施設を経営する法人です。
社会福祉法人が経営している福祉施設は、以下のようなものが多く見られます。
- 児童福祉施設
- 老人福祉施設
- 障碍者福祉施設
- 身体障碍者福祉施設
- 知的障害者福祉施設
これを見ても分るとおり、社会的弱者といわれる方を支援するための施設で、極めて公共性の高い法人です。
そのため本来事業(社会福祉事業)は非課税になるなど、税制上の優遇措置が取られています。
特に利用者への影響が大きいため、経営安定を通じた利用者の保護の必要性が高い第一種社会福祉事業は、原則として社会福祉法人のほか国や地方自治体、もしくはそれに準じると認められた団体(日本赤十字社など)しか行えません。
社会福祉法人会計と企業会計の違い
社会福祉法人は、営利を目的とした組織ではないので、株式会社など一般的な企業とは会計の考え方も大きな違いがあります。
つまり営利企業の会計においては、利益(あるいは損失も)を計算することに主眼が置かれていて、その結果は株主に対して開示することが目的です。
しかし社会福祉法人は社会福祉事業を目的とした非営利の法人なので、利益などより事業の継続性や安定性などの必要とされる情報提供に主眼が置かれています。
社会を支える社会福祉事業を行うのであれば、簡単に廃業するような脆弱な組織では困るわけです。
社会福祉法人と株式会社など営利法人との違いは、下表のとおりとなっており、明確な差が分るでしょう。
社会福祉法人 | 一般企業 | |
事業の目的 | 非営利 | 営利 |
根拠法 | 社会福祉法 | 会社法 |
出資者の持分 | なし | あり |
剰余金の配当 | なし | あり |
会計基準等 | 社会福祉法人会計基準 | 会社計算規則 |
計算書類 | 資金収支計算書 事業活動計算書 貸借対照表 その他明細書等 |
貸借対照表 損益計算書 株主資本等変動計算書 個別注記表 |
会計単位 | 事業区分、拠点区分、サービス区分を設ける | 法人全体 |
会計に関する部分では貸借対照表は同じでも、その他の計算書類に違いがあり、この違いこそが社会福祉法人の記帳方法で頭を悩ます原因となっています。
なお社会福祉法人の会計基準は、平成27年度(2015年)に、社会福祉法人会計の一元化を目的として、新会計基準への完全移行が行われました。
社会福祉法人の記帳方法の特徴
社会福祉法人は、営利を求めず継続性や安定性などが重視されるので、会計書類を作成するための記帳方法にもいくつかの特徴が見られます。
それを理解していない会社経理経験者は、社会福祉法人の記帳方法に面を喰らうでしょう。
そこで社会福祉法人の記帳方法を、ポイントを押さえて見ていくことにします。
社会福祉法人が作成する計算書類
社会福祉法人は、資金収支計算書、事業活動計算書、貸借対照表という3種類の計算書類を作成します。
この計算書類は、以下の通りの内容となっており、営利法人の計算書類に置き換えてみます。
- 資金収支計算書
資金収支計算書とは、1会計年度ごとの支払資金の増減内容を表したもので、営利法人であれば「損益計算書」に相当する計算書類です。
社会福祉法人の1会計年度ごとの収入・支出・収支を明確にし、資金収支の差額を計算します。 - 事業活動計算書
1会計年度ごとの純資産の増減内容を表したもので、キャッシュフロー計算書に近いものです。
1会計年度ごとに収益・費用・損益を明確にして、活動増の減差額を計算します。 - 貸借対照表
貸借対照表とは、会計年度末の財産状況を表したもので、一般企業のものと同じです。
社会福祉法人のすべての資産・負債・純資産の状況を計上します。
一取引二仕訳
先ほど社会福祉法人が作成する計算書類を説明しましたが、一般的な法人が貸借対照表と損益計算書が2つでワンセットなのと比べ、社会福祉法人の場合は一つ多い3つでワンセットとなります。
そのため社会福祉法人の記帳では「一取引二仕訳」という、特徴的な仕訳をしなければなりません。
簡単に言えば、貸借対照表と、事業活動計算書・資金収支計算書の2つに対応させるため、一つの取引に対して2種類の仕訳をするのです。
例えば、例えば事務用品3万円を現金で購入した場合、社会福祉法人では以下のとおり2つの仕訳が発生します。
借方 | 貸方 | 金額 |
事務消耗品費 | 現金 | 3万円 |
事務消耗品費支出 | 支払資金 | 3万円 |
一見無駄な仕訳のように感じてしまいますが、社会福祉法人の計算書類は法で定められていて、それを作成するためには避けられない記帳作業となります。
会計単位が多く面倒
社会福祉法人の会計では、会計の単位を「事業区分」「拠点区分」「サービス区分」の3階層に分けて、それぞれ計算書類を作成し、さらに法人全体の計算書類も作成します。
それぞれの区分は、以下のような分類となっていて、企業会計の本支店会計より細かいことが分かるでしょう。
- 事業区分
社会福祉法人が行う、社会福祉事業・公益事業・収益事業などごとに分類して管理します。 - 拠点区分
社会福祉法人が経営している拠点(場所・施設)ごとに分類して管理します。 - サービス区分
社会福祉法人が実施しているサービスごとの法律・制度による違いにより区分します。つまり拠点区分の下に位置するセグメントとして内訳表示されます。
大規模な社会福祉法人ともなると、相当数の区分経理が必要で、仕訳の煩雑さは相当なものです。
なお社会福祉法人内の取引については、法人全体で集計を行う際に相殺消去を行いますが、これは企業会計の連結決算と同じと考えれば理解しやすいでしょう。
コア業務に集中するため記帳を委託したらいくら必要?
社会福祉法人で多く見られるのは老人福祉事業で、これは高齢化社会の宿命なのかもしれません。
しかし介護人材が不足していて、なおかつ経営も厳しさを増すなか、経理業務に多くのマンパワーを避けないのが現実です。
そのような中、経営資源をコア業務に集中するため、社会福祉法人の記帳業務などをアウトソーシングするのが一般的となっています。
社会福祉法人の会計業務は、一般企業と比べて複雑で作業量も多くなってしまい、税理士への委託料も高めな傾向があり、一般的な相場は下表の通りです。
サービス名 | 基本料金 | 支援内容 |
月額顧問料 | 30,000円~ | 月次報告・相談 |
決算料 | 300,000円~ | 決算書類の作成 |
消費税申告 | 150,000円~ | 消費税申告書の作成 |
よく言われることですが、経理のための人材確保で苦労するより、アウトソーシングの方が低コストで業務を進められます。
余計な悩みを抱えるくらいなら、社会福祉法人に強い税理士へ業務を委託しましょう。
まとめ
社会福祉法人の記帳は煩雑な作業が多く、慣れていないと時間ばかり浪費することになります。
もちろん会計作業を自分たちで行うのは大事なことですが、そこへ手間を取られ過ぎて、本業へ悪影響を及ぼすのは好ましいことではありません。
記帳業務に負担を感じるようであれば、委託するしないを含めて、一度は税理士へ御相談されることをオススメします。
税理士法人サム・ライズ
代表税理士。
大原簿記学校法人税税法課専任講師を得て平成5年12月税理士試験合格、平成8年1月林税理士事務所を開業、平成16年12月税理士法人サム・ライズを設立。
税理士法人サム・ライズは、税理士顧問・創業支援・相続税・資金調達・無申告・税務調査立ち合い・クラウド会計・社会福祉法人など数多くのサービスで中小企業の皆様をサポートいたします。
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