社会福祉法人の基礎知識~設立に向けて~
目次
こんにちは、埼玉県川越市の税理士法人サム・ライズの林 亜由美です。
今回は、社会福祉法人の設立を検討している方に向けて、社会福祉法人についての基礎知識や設立に向けて知っておくべき内容をまとめていきます。ぜひ参考にしてください。
そもそも、社会福祉法人とは?
まず、社会福祉法人の設立にあたり基礎知識として社会福祉法人とは、どのようなものなのか簡単に確認しておきましょう。
法律用語が続き固い内容となりますが、ご容赦ください。
社会福祉法人とは、社会福祉事業を行うことを目的として、社会福祉法の定めるところにより設立された法人です。(社会福祉法第二十二条)
社会福祉法における「社会福祉事業」とは、第一種社会福祉事業、第二種社会福祉事業をいいます。(社会福祉法第二条)
また社会福祉法人は、その主たる事業である社会福祉事業に支障がない限り、必要に応じて公益事業や収益事業を行うことができるとされています。(社会福祉法第二十六条)
社会福祉事業及び公益事業を行うに当たっては、日常生活又は社会生活上の支援を必要とする者に対して、無料又は低額な料金で、福祉サービスを積極的に提供するよう努めなければならないとされています。(社会福祉法二十四条2)
次に、第一種福祉事業・第二種福祉事業について、ご説明していきます。
第一種は、利用者が入所して生活を送る施設。第二種は、在宅生活を支えるサービスと考えていただければ良いでしょう。
(以下の説明については社会福祉法第2条(定義)を簡略化した内容になります。)
第一種福祉事業
第一種福祉事業とは、利用者の保護を行う施設を運営する事業です。利用者の保護を行う施設ですので、運営できる母体が限られています。原則として国や地方自治体といった行政と社会福祉法人しか運営を行うことができません。
具体例としては、次の通りです。
- 生活保護法に規定されている救護施設、更生施設などの事業運営
- 児童福祉法に規定されている、乳児や母子、児童や障害児などに支援する事業運営
- 老人福祉法に規定されている養護老人ホームや特別養護老人ホームなどの事業運営
- 障害者の日常生活および社会生活を総合的に支援するための法律に規定されている事業運営
- 売春防止法に規定されている婦人保護施設の事業運営
- 授産施設を経営する事業及び生計困難者に対しての無利子又は低利で資金を融資する事業運営
第二種福祉事業
第二種福祉事業は、在宅生活を支えるサービスです。第二種には、特に運営主体の制限はありません。第一種と違い、行政や社会福祉法人でなくても事業を行うことができます。
具体的には、下記のような事業になります。
- 生計困難者に衣食や生活必需品を与える、又は生活の関する相談に応じる事業
- 生活困窮者自立支援法に規定されている認定生活困窮者就労訓練事業
- 児童福祉法に規定されている支援や養育、相談事業
- 就学前の子どもに関する教育、保育等の総合的な提供の推進に関する法律に規定されている幼保連携型認定こども園を経営する事業
- 母子及び父子並びに寡婦福祉法に規定されている支援事業
- 老人福祉法に規定されている支援事業
- 障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律に規定されている支援事業
- 身体障害者福祉法に規定されている生活訓練等や更生相談に応じる事業
- 知的障害者福祉法に規定されている知的障害者の更生相談に応じる事業
- 生計困難者への居住地の貸し付けや診察を無料又は低額な料金で行う事業
- 生計困難者へ介護保険法に規定される介護老人保健施設の利用を無料又は低額な費用で行う事業
- 隣保事業(隣保館等の施設を設け、比較的貧しい地域における住民の生活や文化向上の支援を行う事業)
- 福祉サービス利用援助事業
- 社会福祉事業に関する連絡又は助成を行う事業
では、社会福祉法人における「公益事業」と「収益事業」とは、どのようなものなのでしょうか。
公益事業
社会福祉法人における「公益事業」の例としては
- 有料の老人ホーム運営や、社会福祉協議会等において社会福祉協議会活動等に参加する者の福利厚生を図ることを目的として、宿泊所、保養所、食堂の経営する事業等
が挙げられます。
収益事業
社会福祉法人における「収益事業」の例としては
- 社会福祉法人の所有する不動産を活用して行う貸ビルや駐車場の経営、公共的施設内の売店の経営する事業等
が挙げられます。
ちなみに、公益事業又は収益事業に関する会計ですが、それぞれ社会福祉法人の行う社会福祉事業に関する会計から区分し、特別の会計として経理しなければなりません。
社会福祉法人の設立準備に必要なものは?
ここからは、社会福祉法人の設立の準備として知っておくべきことをまとめていきます。
まず、社会福祉法人の設立にあたっては、所轄庁の認可を受けることが必要となります。
この所轄庁の認可を受けるためには、事業・資産・組織運営等について、一定の要件があります。
その要件について、それぞれ見ていきましょう。
社会福祉法人の名称について
設立には、当たり前ですが社会福祉法人の名称を決める必要があります。
その際は、その公共性から社会福祉事業の担い手としてふさわしい名称とする必要があります。
社会福祉法人の公共性を鑑み、特定の個人名・会社名をつけることや、 既に認可されている法人との同一名称やまぎらわしい名称は、適当ではないとされています。
検討している法人名称が、現在使用されている名称か否かは、事前に所轄庁に確認することが好ましいです。
その他の注意事項として、法人名と施設名は異なる名称を使用することを求められています。
例)法人名:社会福祉法人サム・ライズ会 /施設名:サム・ライズ会
⇒法人名と施設名が同じであるため、✖
法人名:社会福祉法人サム・ライズ会 /施設名:〇△◇園
⇒法人名と施設名が異なっているので、〇
なお、社会福祉法人以外の者は、その名称中に「社会福祉法人」又はこれに紛らわしい文字を用いてはなりません。
社会福祉法人の定款
社会福祉法人を設立しようとする場合においては、定款を定め、所轄庁の認可を受けなければなりません。(社会福祉法第三十一条)
社会福祉法人の定款の記載事項には、必要的記載事項、相対的記載事項、任意的記載事項があります。
定款に記載する必要がある項目は予め定められており、その項目の全てを定款に記載する必要があります。
<定款の必要的記載事項>
一 目的
二 名称
三 社会福祉事業の種類
四 事務所の所在地
五 評議員及び評議員会に関する事項
六 役員(理事及び監事をいう。以下この条、次節第二款、第六章第八節、第九章及び第十章において同じ。)の定数その他役員に関する事項
七 理事会に関する事項
八 会計監査人を置く場合には、これに関する事項
九 資産に関する事項
十 会計に関する事項
十一 公益事業を行う場合には、その種類
十二 収益事業を行う場合には、その種類
十三 解散に関する事項
十四 定款の変更に関する事項
十五 公告の方法
経営組織
社会福祉法人の経営組織は、評議会、理事会、監事の3つに分けられます。
それぞれ、
①法人経営の基本方針の議決機関である評議会
②業務執行の決定機関である理事会
③理事の職務執行の監査を行う監事
という役割があり、それぞれ法人の意思決定、業務執行、監督に係る権限・責任が分配されています。
また一定規模以上の法人は会計監査人を置かなければなりません。
社会福祉法人の役員(理事・監事)・評議員の法定員数
評議員 … 定款で定めた理事の員数を超える数
理事 … 6名以上で定款で定める数
監事 … 2名以上
法人設立に当たり、少なくとも評議員7名、理事6名、監事2名の選任が必要となります。
評議員は役員又は当該社会福祉法人の職員を兼ねることが出来ず、監事は、理事又は当該社会福祉法人の職員を兼ねることができません。
その他にも社会福祉法によって役員と評議員の資格の要件が定められています。
社会福祉法人の資産
社会福祉法人は社会福祉事業を行うに必要な資産を備えなければならないとされております。
そして、社会福祉法人が事業活動を継続するためには一定の資産を維持していく必要があります。(社会福祉法第二十五条)
社会福祉事業に供する不動産
原則として社会福祉法人は、社会福祉事業を行うために直接必要なすべての物件について、所有権を有していることが必要とされています。
または、国・地方公共団体から貸与・使用許可を受けていることが必要です。
資産の区分
社会福祉法人の資産は、基本財産、公益事業用財産(公益事業を行う場合に限る。)及び収益事業用財産(収益事業を行う場合に限る。)その他財産に区分されます。
基本財産
基本財産は、法人存立の基礎となる資産、社会福祉事業を行うための土地・建物等、定款に定められます。
基本財産の取り壊し、売却、交換、貸与等使用権の設定、その他の財産への切り替え等の基本財産の処分をする場合には所轄庁の承認を受けなければなりません。
公益事業用財産
公益事業を運営するための財産
収益事業用財産
収益事業を運営するための財産
その他の財産
基本財産、公益事業用財産、収益事業用財産以外の財産事業運営のための運転資金等
社会福祉法人の基礎知識~設立に向けて~まとめ
今回は、社会福祉法人の設立をお考えの方が知っておくべき知識についてまとめてみました。
いかがだったでしょうか。まとめると、
- 社会福祉法人とは、社会福祉事業を行うことを目的として、社会福祉法の定めるところにより設立された法人をいう
- 社会福祉法人には、評議員や理事、監事を選定する必要がある
- 設立にあたっては、定款を作成し、所轄庁の認可を受ける必要がある
ということになります。
特に社会福祉法人は、一般法人とは違い、設立手続きや役員などについて厳しい要件があります。
そして、設立手続きや申請手続きには膨大な資料と時間が必要です。
また設立後も社会福祉法人会計基準省令で定めるところにより、適時に、正確な会計帳簿を作成しなければなりません。設立や会計処理に関しては社会福祉法人の設立サポート経験が豊富な税理士のサポートが不可欠です。
今回も最後までお読みいただきまして、ありがとうございました。
川越の税理士法人サム・ライズは、社会福祉法人の経営支援に強い税理士事務所です。社会福祉法人の経営のお悩みがありましたら、ぜひサム・ライズまでお気軽にご相談ください。
税理士法人サム・ライズ
代表税理士。
大原簿記学校法人税税法課専任講師を得て平成5年12月税理士試験合格、平成8年1月林税理士事務所を開業、平成16年12月税理士法人サム・ライズを設立。
税理士法人サム・ライズは、税理士顧問・創業支援・相続税・資金調達・無申告・税務調査立ち合い・クラウド会計・社会福祉法人など数多くのサービスで中小企業の皆様をサポートいたします。
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