リーダーシップへの舞台裏Vol.10 ~今を駆ける社長のインタビューシリーズ~
目次
生きとし生ける全てのものが
活き活きと生き、繋がり、育まれる大家族を創り出す
株式会社、一般社団法人、NPO法人と3つの企業を経営されている山﨑社長が見据える未来とは?
今となっては浸透している、ママが在宅で事務代行や経理代行を行う事業をゼロから作り上げ、先駆けてきた山﨑社長にその根本や思い・展望をお伺いしました。
【プロフィール】
1983年 静岡県で歯科医の父と専業主婦の母との間に生まれる。
歯科医師だった父の影響もあり、小さい頃の夢は、小児科医。そしてひそかに女優を目指していた時期も。高校一年生の時に両親が離婚し環境が変わり、母親がビジネスを始め活躍していたことで、出会った大人たちから様々な刺激を受ける。
大学に入学したが、母親と同じビジネスをチャレンジするため中退し、キャリアをスタートさせる。
2013年 株式会社Capybaraを設立。ママが自宅で子育てをしながら在宅で仕事を受ける「ママ職」をスタート。2019年『価値デザインコンテスト』にて内閣総理大臣賞を受賞するなど、
その活躍は新しいビジネスモデルと女性活躍推進事業として多方面より認められる。その後2023年に一般社団法人mikOsi設立し代表理事に。さらに2024年NPO法人 学職を設立。現在3足のわらじで活躍している。
社会と人、人と人、
人と自然の『つながり』を作るという想いがつまった3社
林:山﨑社長、親しみを込めて今日もあえて「恵ちゃん」と呼ばせて下さい。
今日はよろしくお願いします!まずは自己紹介ということで、事業の内容と株式会社Capybaraを立ち上げるきっかけなどお話しいただけますか。
山崎:はい、山﨑恵(やまざき・けい)と申します。私は今、3社経営していまして、一つが株式会社Capybaraで、ママ職というママが在宅で事務代行や経理代行をやる事業がまもなく11年になります。アウトソーシング業ということでクライアントさんのお困りごとをオンラインで受け、お手伝いするということをやっています。
もう一つは、一般社団法人mikOs(i ミコシ)という会社で、地方創生をしていく団体として去年立ち上げました。地域をどう盛り上げるか、地域の人達と連携して、盛り上がりづらい部分を専門家の方々と一緒に解決していく活動をしている団体です。
3つ目は、今年の4月に立ち上げました、NPO法人 学職です。学生たちは就職する際に、インターンと言って就職前に会社へ出向き、1日2日の研修をするのが一般的で、会社側からすると、その研修内で、よさそうな学生をピックアップするという意図があります。私が思うのは、もっと早くから大人とのつながりをつけてもらいたいと思っていて、大学1~2年生や、ゆくゆくは高校生などに、会社に行って働いてもらって、社会とのつながりをつくったり、社会から学ぶためのインターンをしてもらうという事業をしています。一般社団法人mikOsiの方の農業の事業に学職の学生たちが参加したり、一緒に梅酒を作ったり、つながりのある大人たちと話す機会が多々あったりと垣根なく社会とつながっていっていると思います。
幼少からの生い立ち
~小児科医・女優の夢から経営者に~
林:ありがとうございます。相変わらずパワフルですよね~!なぜ株式会社Capybaraを立ち上げようと思ったのか、子どもの頃になりたかったことなど生い立ちも含めてお話しいただけますか?
山崎:私は静岡県で生まれ、父が歯科医、母が専業主婦でした。父が歯科医だったこともあり、小さいころの夢を聞かれたら、(小児科の)お医者さんと答えていました。半分は親が期待していたり、大人が「お~っ!」と喜んでくれるのでその期待に答えたいという思いもありましたが、実は「夢を見ても叶わない、そんな人生甘くない」と思って答えていた、ある意味少し冷めた幼稚園児でした(笑)
そして、私が高校生の時に両親が離婚することになって、私は母と暮らすことになったのですが、それまで専業主婦だった母が突然ビジネスを始めて、苦労はあったのですが大成功したんですね。住んでいる部屋もビジネスの成功とともに便利で家賃も高くなっていってと、そんな環境を目の当たりにしていました。高校生の頃には、家に帰ると母のビジネス仲間の大人たちがたくさん家にいる、というのが普通の環境でした。
林:そう!私が初めて恵ちゃんに会ったのも恵ちゃんが大学生の時でした。
山崎:はい、そうですよね!今でも鮮明に覚えているのですが、その頃、家に来た 40代の男性経営者が、私に夢を聞いてくれたんです。「恵ちゃんの夢は何?」と。実は私、昔からひそかに女優になりたい、と思っていたのですが、このことは親にも誰にも言ったことがありませんでした。聞かれた時に、一旦は躊躇したのですが、勇気を出してその事を伝えたら、すごく真剣な顔して「絶対叶えたい夢なら必ず叶う。僕は最後まで応援するよ!」と言ってくれたのです。そしてさらにその方が「僕の夢はね…」と自分の夢を語ってくれたんです!歯科医師の父と学校や受験という今までの環境の中で、大人の男性が自分が必ず叶える夢を語り、しかも実行に向けて動いている姿が衝撃だったと同時に、私もこういう夢を語る大人になりたいなって思いました。
その後、大学に入り2年生の時に、私は普通に就職して会社の歯車になる事を望んでいないな…と思ったので、中退して母の会社の仕事(化粧品、サプリメントの営業)を5年間やりました。仕事をする中、経営者が集まる研修を受けていましたが、とある研修を受けていた際、その運営会社からプロジェクトリーダーとしてヘッドハンティングを受けて、母の事業をやりながら二足のわらじで働きました。この会社では研修の集客のために自らセミナーを開催してクロージングをしたり、セミナー参加者のためにどんな成果を作るかという意図を創作するなど、ある意味ここでしか学べない特殊な仕事を経験しました。母の事業を含めたこの7年間の経験が、今の会社の事業を切り拓いていくための基礎となっていますし、今の自分を作っていると思います。
林:そうですよね。研修で私もご一緒させてもらっていたので、その気持ち、本当によくわかります。株式会社Capybaraを立ち上げるきっかけになったことは他にもありますか?
山崎:はい、その後出産しましたが、3歳までは子どもを保育園に預けないで自分で育てたいという気持ちがあったので、研修会社を退職して専業主婦になりました。けれど、これまで人と会うことが多い仕事だったのもあったせいか、1年ぐらいでもう社会に出たくなってしまって。保育園に預けて働こうと思ったのですが、保育園に連れて行くと娘が毎朝泣いて一向に保育園に慣れないのです。だいたいの子どもが数週間で慣れるところ、娘は三か月経っても全く慣れず、私のほうが根負けして第二子の出産もあったので、働くことは諦めて一旦専業主婦に戻りました。その後、二人の子どもをみながら、つながりのあった社長さんの在宅秘書のような仕事をしていました。その時に、こういう働き方をしたいママって、結構多いんじゃないのかなって思ったのが、株式会社Capybaraを立ち上げるきっかけになりました。
林:ご自身の経験から立ちあがった事業ということなんですね。株式会社Capybaraは、去年10周年を迎えて、今年が11年目ということで、今となってはママが在宅で事務代行や経理代行をするっていうのは普通のサービスになっていますけど、立ち上げた頃にはどこもやっていませんでしたよね。
山崎:そうですね。在宅でママたちがPC一つで仕事ができたらいいのにと、色々調べてみましたが、調べてもなかったの で「私がやるしかない!」と、半ば使命感に駆られて創業しました。子育て中にそういう働き方したいママっていっぱいいるんじゃないかなという発想です。子どもたちはママとなるべく過ごしたい、そしてママたちに笑顔になってもらいたい。そのためにはママたちが社会とつながり活躍するフィールドを作る必要があると思い、立ち上げた事業でした。
林:ここまで話を聞いていると、3社とも様々なことをやってらっしゃるように見えますが、根本は繋がっていると感じるんですよね。その根底に流れるものって何なのか、お伺いしてもいいですか。
東京都女性活躍推進大賞 個人の部、優秀賞。女性の活躍推進に取り組む企業や団体、個人が選ばれる場で、この年は山崎さんが表彰されました。
恵ちゃんが2人のお子さんを育てる中で気づいた「子育て×ママの仕事」の両立ができる場の創造。今ではママもオンラインで当たり前に仕事ができますが、この仕組みを作った先駆者が恵ちゃんだと思っています。社会に新しい価値を根付かせることになったバイタリティーを本当に尊敬しています。
みんな大家族!
自然も大家族の一部という世界観、そして本当の教育とは
山崎:Capybaraっていう社名の由来もその根底にあるものの一つかなと思うのですが、カピバラは自分の子どもじゃない子にも授乳するという動物で、みんなで子育て、みんなで大家族という感じなんですね。2つ目の地方創生に関しても、最初は子どもたちが対象だと思っていたのですが、大人も子どもも自然と共に生きる、自然さえも大家族という部分で繋がりがあるんじゃないのかなと思います。こういう風に考えるきっかけになったのは、青年会議所での経験が大きいです。社会課題解決のためにどんな事業を作っていくかを毎年チャレンジし、実行していく団体なので、その中での様々な経験が今の事業を作り出す素となっています。
一般社団法人mikOsiでは今、小田原の農業も手伝っているんですが、自然と共に生きる生き方って子どもの幸福度にも関わるなぁと思っています。実際にうつ病気味だった知人が土いじりをしていく中でとても元気になっていったんですね。私も大地からのエネルギーを貰っていると感じているので、AIやITが発達している今の時代だからこそ、大地と繋がる経験を子どもたちに体感していってもらいたいと思っています。感じるっていうことを制限されている現代で、自然からどんなことを感じてもいいから、感じる。そういうことを今だからこそ人間として体験するのが重要だと実感しています。
一般社団法人mikOsiの活動の一コマ、梅の木蔦取り(↑)。
「大人も子どもも自然とつながり、感じる。そこから人間としての感覚を取り戻す」を軸に自然と直接関わりながらの活動が進んでいます。
プライベートでも世界を旅し、そこで体感して得られる感覚が恵ちゃんのビジネスにも生かされているとか(→)。
林:地方創生のビジネスの中で、自然の偉大さを受け取り、大人も子どもも自然の中から感じてもらうことの重要さを感じられたんですね。
今年新たに立ち上げた、NPO法人 学職について、もう少しお話しいただけますか。当時のCapybaraと同じように唯一無二のビジネスだと思うので。
山崎:2018年に、青年会議所の活動で国際教育の担当になって、フィリピンのマニラにあるスモーキーマウンテンというスラム街に子どもたちを連れていく事業を行いました。それまで世界の子どもたちに対して何かできないかと思っていたのですが、マニラの子どもたちの幸せそうなキラキラ輝く笑顔をみて衝撃を受けました。日本の子どもたちはこんな笑顔しないなって。そして、日本の子どもたちにも、私達がやれることがまだまだあるんじゃないか、と思って帰国しました。その翌年、東京の教育担当責任者になり勉強していく中で、これからの子どもたちには英語やプログラミングのような表面的なものではなく、人間の根本的なものを育てていくこと、「非認知能力」が重要だということが分かり、どうやったらその能力が育つのかということを勉強しました。様々なことを学ぶ中で「斜めの関係」というのがとても重要だということが分かったんです。
林:斜めの関係?
山崎:縦の関係が親で、斜めの関係は親じゃない大人や学年が違う子どもたちです。そして何年か模索した中で、マニラの子どもたちにあったのは、家族、近所の大人、世代を超えた友達、自然とのつながりがあったのではないかと行きつきました。その事で形になってきたものが「学職」です。また、マニラの体験とは別に、自分の息子の存在も大きかったと思います。
林:息子さんですか?
山崎:はい、小学校一年生の時に家出したことがあって(笑)。原因は学校の先生との衝突だったのですが、小学校だとちょっと飛び出た子に対して理解がなかったり、言うことを聞くいい子じゃないと異質だと捉えられてしまうという葛藤がありました。彼は、家出の時に電車とタクシーを使って1時間かかる祖母の家に家出したんですね。後になって息子が ADHDだったということがわかったのですが、その時私はそんな彼らしい行動を見て、親として息子の可能性を感じました。息子は座学で学ぶのではなくて、体感で学ぶことが出来る子だなと思って。今の社会の情報をそのまま学ぶだけではなくて、仕事や大人から体験を通して学んでいくことが出来る子だと感じたので、そういうことを出来る場としても学職を作りたいと思ったことが、一つのきっかけではあると思います。
2024年4月に立ち上がったばかりの3つ目のビシネス「学職」。その名の通り、「学生が仕事を通じて大人や社会とつながり学ぶ教育の機会」を提供しています。企業が学生を採用するために行うインターンとは異なり、もっと広い視点で捉えられているのが「学職」。
現在は、大学生が仕事に就く体験を通して、いろんな人とのつながり・考え方の視点の感覚をつかんで欲しいと活動が広がっています。ゆくゆくは高校生などにも体験できるよう整え、将来「学職」が「ママ職」のように、「当たり前」となるようにしていくのだとか。恵ちゃんの壮大ビジョンがまた将来の社会ではごく当たり前になる!考えただけでもワクワクしてしまいます!
目標を立てないことで見えてくるもの
林:ありがとうございます。ではさらに、これから恵ちゃんが目指している会社の展望について教えてください。
山崎:ママ職の方は、行政の仕事に更に関わっていきたいと思っています。さらにこれからは、やはり海外に出たいと思っています。海外展開については今までの事業の畑に捉われずに考えていきたいと思っています。
林:色々頭の中では広がっていらっしゃるというのが見ていてわかります!今後この方面に向かっていこうかな、ということがあれば是非教えていただきたいです。
山崎:私の人生・事業の師である孫泰蔵さんに「目標は立てるものじゃない」と言われてびっくりしたことがありました。それまで自分が習ってきたのは、目標を立てて目標達成に向けて動くということだったので「、立てるものじゃない」と言われて最初は理解できませんでした。でも最近は少しわかってきた気がします。大きな世界観のイメージは脳裏にあるのですが、それすらも出会いによってイメージが少しずつ変わっていきますし、出会ったものや人から流れに身を任せていくものなのかな、と。なので今、何かに向かっているわけではないのです。自分の中では「みんなで大家族」という世界観は変わらないし、人のライフスタイル(生き方)が変わるような事業はこれからも作り続けると思います。自分自身のライフスタイルも変わっていくだろうし、その時にあらわれたことを楽しんでいくことで、思いもよらぬものが作られるんじゃないかなと思っています。
林:お話をお伺いしていると、とても自然体でそのまま、ありのままでいらっしゃるなぁと思うし、恵ちゃん自身がとてもワクワクしているように感じました!
山崎:ママ職も始まったころは、ママのサークル活動なんじゃないのとか、言われたこともありましたし、他の人は全く想像がつかないビジネスだったと思いますが、今となっては当たり前になりつつある世界になっています。今年の4月から立ち上げたNPO法人 学職も同じように、今はまだ漠然としていて人の理解が及ばないところなのだろうなと思うのですが、きっとこれも学職が当たり前になっていく世の中を作っていけるんじゃないかなって思いますし、そのために人と繋がり自分ができることをやっていく。その先に素敵な出会いがあり、より事業や世界が魅力的になっていくと思っています。
林:恵ちゃんが常に先駆けとして前を走る姿にワクワクします ! 今日はありがとうございました。
会社概要
【会社名】株式会社 Capybara
【事業内容】ママ向け在宅アウトソーシング事業等
【会社名】一般社団法人mikOsi(ミコシ)
【事業内容】地方創生プロジェクト等
【会社名】NPO法人 学職
【事業内容】インターンシップ支援事業等
【所在地】〒350-0046 東京都文京区小石川3-28-14-101
(TEl)090-2631-1462
【HP】https://www.capybara.co.jp/
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