リーダーシップへの舞台裏Vol.25 ~今を駆ける社長のインタビューシリーズ~
目次
保育の現場から経営の視点まで
地域に根ざした“もうひとつの家族”が紡ぐストーリー
3つの保育園を統括しながら、日々子どもたち一人ひとりと向き合う宇田川先生に、保育の現場で感じる喜びや課題、そしてこれからの法人の未来についても語っていただきました。子どもたちの何気ない日常から学ぶこと、少子化が進む社会での保育のあり方、そして10年先を見据えた挑戦まで、保育にかける熱い想いを余すところなくお届けします!
【プロフィール】
1969年東京都墨田区生まれ、3歳から埼玉県川越市で過ごす。
大学卒業後はゴルフ用品販売会社や建設関係会社で現場経験を積み、その後1997年より私立中学・高校の事務局に勤務。事務局長として学校運営の裏側を支える中で、教育現場における組織運営の手腕を磨く。2012年にはホテル運営会社で役員を務め、多様な組織運営の経験を重ねる。
2015年より社会福祉法人雲雀会に参画。2021年には理事および本部事務局長に就任し、法人全体の運営に携わる。2023年には小規模保育園「つるの子保育園」の園長に就任。現在は、3つの保育園を統括しながら、日々子どもたちの成長を間近で見守り、地域に根ざした“もうひとつの家族”のような法人づくりを目指す。
また、プライベートではジム通いで体を鍛え、10年後も子どもたちと一緒に走り回ることを楽しみにしている。
保育園にも“選ぶ自由”を──
雲雀会ならではの保育スタイル
倉橋:さて、第25回目となる今回は、社会福祉法人雲雀会(ひばりかい)の業務執行理事、宇田川祥則さんにお話を伺います!宇田川先生、本日はどうぞよろしくお願いいたします!早速ですが、法人の概要や事業内容について教えていただけますか?
宇田川:はい、よろしくお願いします。社会福祉法人雲雀会では、90名定員の保育園を2園(毛呂山みどり保育園/埼玉県入間郡毛呂山町、鶴ヶ島みどり保育園/埼玉県鶴ヶ島市)と、19名定員の小規模保育園(つるの子保育園/埼玉県鶴ヶ島市)を1園、あわせて3つの保育園を運営しています。
職員は全体で70名ほどですね。私は業務執行理事として法人全体を見ながら、事務局長、そしてつるの子保育園の園長も兼務していまして、経営面は実質的に私が担っている形です。
倉橋:3つの園と70名ものスタッフさんをまとめていらっしゃるんですね!創設当初からその規模だったんですか?
宇田川:いえいえ、私が入った頃はまだ1園しかなかったので、職員も20名ほどでした。それがここ10年で一気に3園になり、職員数もぐんと増えたんです。
ただ、ちょっとユニークなのは、その3つの園がどこも同じ保育方針ではないという点なんです。これは雲雀会ならではの特徴だと思いますね。
理事長が「園長が思うようにやっていい」と背中を押してくれるので、それぞれの園が独自のスタイルで保育を展開しています。例えば、毛呂山みどり保育園は20年以上の歴史を持つ地域密着型の園で、卒園生が夏祭りの行事を手伝ってくれるなど地域との深い絆がありますし、鶴ヶ島みどり保育園は“自由保育”を取り入れているのが特徴で、ケンカも子ども同士で解決するなど、子どもたちの自主性を大切にしています。
そして、私が園長を務めるつるの子保育園は、他の2園と違って1クラス8名程度の小規模園。その分職員配置も手厚く、子ども一人一人の成長を細かく見られるのが魅力なんです。こんなふうに、それぞれの園長が自分のカラーを出しながら、特色ある保育を実現しているんですよ。
倉橋:おもしろいですね!同じ法人の中でも、園によって保育の形が違うなんてちょっと意外です。あえて統一せずに、それぞれ独自の方針を持たせているのには、どんな理由があるんでしょうか?
宇田川:私自身、働いていて感じるんですが、やっぱり、保育園はいろんな形があっていいと思うんです。そもそも保育園って、定員によって入れる園が市役所に決められてしまうんですよね。でも、それって少し不自然じゃないかなと。学校の場合は、どういう教育をしているのかを親御さんや子ども自身がある程度選べるじゃないですか。
でも保育園には、その「選択」という仕組みがほとんどないんです。だから本当は希望する保育園に入れない方もたくさんいらっしゃるんですよ。だからこそ私は、保育園にもいろんな考え方やスタイルがあっていいと思っています。その中で「どんな保育に関わりたいのか」を選べる選択肢があることは、すごく大事なんじゃないかと。
見学に来られた方には必ず「うちはこういう保育を大事にしています」とはっきりお伝えしますし、「ぜひいろんな園を見て選んでくださいね」と声をかけているんです。
倉橋:なるほど、「保育園にも選択肢を」という考え方、とても新鮮に感じます!親御さんにとっても、自分たちの考えに合った園を選べるのは安心につながりますし、園の個性を大事にされているのは素敵ですね!
園児と同じ目線で遊び、走り回る宇田川先生。特に年中から年長の子どもたちと関わることが多く、自然と子どもたちが集まってくる存在です。笑顔と活気にあふれた園長先生の姿は、園全体に温かい雰囲気を広げています。
“少子化の波”で規模から質へ──
変わりゆく保育のかたち
倉橋:でもその一方で、社会全体を見てみると、やっぱり「少子化」という大きな流れもありますよね。業界にとっては避けられない課題だと思うのですが、宇田川先生ご自身はどのように感じていらっしゃいますか?
宇田川:そうですね、少子化は間違いなく進んでいて、あと10年、20年経てばどこの保育園も厳しい状況になると思います。
倉橋:つまり、運営そのものが難しくなっていく、ということですか?
宇田川:そうなんです。ただ、ありがたいことに──と言いますか、ちょっと意外な仕組みもあって。実は保育園の公定価格は、子どもの数が少ないほど「1人あたりの単価」が高く設定されているんですよ。私もこの業界に入ってびっくりしたんですが(笑)。ですから、定員を少しずつ減らしていけば、ある程度は運営を維持できるんです。今もそうしたシミュレーションを立てています。現在90名定員の毛呂山みどり保育園なんかは、10年以内に園児数が半分くらいになるかもしれませんが、それでもやっていけるように備えているところです。
倉橋:となると、これからは「大規模な保育園」は無くなっていく流れなんでしょうか?
宇田川:おそらくそうなると思いますね。もしくは一部の大きな法人だけが残っていくかもしれません。特に一族経営でやっている園では、跡継ぎがいなくてやめざるを得ないケースも多いんです。そうなると、最終的には体力のある法人が生き残っていくのかな、という気がしています。
倉橋:なるほど…そう考えると、園を続けていくためには経営の視点も欠かせませんね。
宇田川:そうですね。現場の保育だけではなく、経営や地域とのつながりをどう作っていくかも大事な時代になっていると思います。
倉橋:先生ご自身も、長年にわたりそうした両面を見てこられたわけですよね。ここで改めて、先生のこれまでのご経歴について伺ってもよろしいでしょうか?
宇田川:はい。私はもともと、私立の中学校・高校で事務局の仕事をしていまして、最後は事務局長も務めていました。先生ではなく、裏方の事務局スタッフですね。実はその頃から今の理事長とは顔なじみで。というのも、学校で利用していたバス会社の社長さんが、今の雲雀会の理事長だったんです。
事務局としてやり取りすることが多かったので、以前からよく知っていたんですよ。そんな中、当時の雲雀会の事務局長が大きな病気をされてしまい、事務手続きが滞ってしまうことがありました。そのときに「ちょっと手伝ってもらえないか」と声をかけてもらったのが、こちらに関わるきっかけです。
実はその前から、学校に勤めながら法人の監事もしていたので、ご縁はあったんですよね。そうした流れもあって、自然にこの仕事をお手伝いするようになりました。
倉橋:そんなご縁があったんですね!まさに“導かれるように”今の立場にいらっしゃるんだなぁと感じます。
子どもたちの成長とともに歩む、これからの10年
倉橋:では、実際に保育園に携わるようになってから感じた“やりがい”についてぜひ聞かせてください!
宇田川:そうですね…毎年のことなんですけど、卒園した子が小学校の卒業式のあとに中学校の制服を見せに来てくれるんですよ。あれは本当に嬉しいですね。「やっててよかったなぁ」って思います。
それから一番よく覚えているのは、卒園した子が小学校2年生か3年生のときに書いた「夏の思い出」の作文ですね。その子が書いたのが、私と一緒に保育園で虫取りをしたことだったんです。親御さんが「もっといろんなところに連れて行ってるのに、なんで虫取りなの?(笑)」って笑いながら教えてくれたんですが、それを聞いたときは「こんなに嬉しいことがあるんだ」って思いましたね。あとはやっぱり、子どもたちの毎日の成長です。
特につるの子保育園に来てからは強く感じますが、本当に日々変わっていくんですよ。昨日できなかったことが今日はできるようになっていたり、その積み重ねを間近で見られるのは、この仕事の一番のやりがいですね。
倉橋:いやぁ、素敵なお話ですね。虫取りの作文のこともそうですけど、子どもにとっては園での何気ない日々が“宝物”みたいに心に残っていくんだなぁと改めて感じました。では最後に、今後10年を見据えたときに――つるの子保育園を中心とした法人として、どんな未来を描いていらっしゃるのか、お聞かせいただけますか?
宇田川:そうですね…まず自分自身が10年後も現役でやっているのかな、というのは正直あります(笑)。やりたい気持ちはありますが、やはり少子化の影響は大きいですから、「どう法人を残していくか」が一番の課題ですね。うちは、理事長が「好きなようにやっていい」と任せてくれる環境があって、職員の誰かがもし「辞める」と言ったとしても「いつでも戻ってこい」と声をかけてくれる、本当に“家族”のような法人なんです。
こうした雲雀会ならではの強みや魅力を大切にしながら、仲間を増やし、後継者を育てていきたいと思っています。
倉橋:今のお話からも伝わってきますが、雲雀会さんって本当に“家族みたいなあたたかさ”がありますよね。その雰囲気があるからこそ、園ごとにカラーが出せているんだなと感じました。そこでやっぱり大事なのは一緒に働く「仲間」だと思うんですが、実際のところ職員さんの採用や人材確保はどんな状況なんでしょうか?
宇田川:やっぱり採用は正直厳しいんです。でもありがたいことに、地域密着型が特徴の毛呂山みどり保育園のほうは地元出身の子たちが応募してくれるんですよ。
友達同士で「この保育園いいよ」って紹介してくれて来てくれることもありますし、不思議と一度結婚や出産で辞めた職員が、また戻ってきてくれるんです。これも雲雀会の良さかなと思っています。それから事務の方にも実は既に心強い人材がいて。
私が以前勤めていた学校の卒業生なんですが、大手でシステムエンジニアをやっていた経験もある人で、とにかく優秀なんですよ。AKBのイベント会社やLDH、エイベックスなど、エンタメ業界を渡り歩いてきた経歴の持ち主で、今は自分で会社も経営しているんです。
その会社は自分が関わらなくても動く仕組みが整っていて時間の融通がきくということもあり、「じゃあ事務局の仕事もやるよ」と言ってくれて。なので、事務に関しては頼れる後継者ができたなと思っています。
倉橋:一度辞めた職員さんがまた戻ってきてくれるなんて、本当に居心地がいい証拠ですよね。それに、事務局を担ってくれる方の経歴がまたすごい!そんな方が支えてくださっているのは心強いですね。
宇田川:そうなんです。ありがたいことに、不思議と同じような思いを持った仲間が自然と集まってきてくれているんですよね。そういう“家族のような経営”こそが、うちの法人の一番の良さだと思っていますし、これからも大切にしていきたいと思っています。それから最後にもうひとつ個人的な目標を挙げると…今も暇さえあればジムに通って体を鍛えているんですが、10年後の65歳までは子どもたちと一緒に走り回りたいと思ってます!(笑)
倉橋:お話を聞いていると、先生の底なしの体力が雲雀会を支えている気がしてきました(笑)。きっと10年後も変わらず元気いっぱいなんでしょうね。これからの雲雀会がますます楽しみです!本日はお忙しい中に、楽しいお話をたくさん聞かせていただきありがとうございました!!
雲雀会の3園で働く保育士たちは、それぞれの園の特色を生かしながらも、共通して子ども一人ひとりに丁寧に寄り添う姿勢を大切にしています。小さな変化や成長を見逃さず、挑戦を励まし、安心を支える関わりを積み重ねることで、子どもが「やってみたい」「できた」という実感を育む環境を整えています。
会社概要
【事業内容】
認可保育園(つるの子保育園/鶴ヶ島みどり保育園/毛呂山みどり保育園)
【所在地】
● つるの子保育園 〒350-2206 埼玉県鶴ヶ島市藤金67-30
(TEL)049-236-3807
● 鶴ヶ島みどり保育園 〒350-2203 埼玉県鶴ヶ島市上広谷537-1
(TEL)049-287-4600
● 毛呂山みどり保育園 〒350-0445 埼玉県入間郡毛呂山町葛貫799-12
(TEL)049-294-1115
【HP】
● つるの子保育園
https://www.tsuruno-ko.com/
● 鶴ヶ島みどり保育園
https://t-midori.com/
● 毛呂山みどり保育園
https://m-midori.com/
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