赤字決算の場合法人税は確定申告しない(無申告)でもOK?申告すべき理由を解説!
目次
本記事は、「赤字決算の法人の方」に向けて、「確定申告をしない(無申告)」で良いのかどうかについて簡潔に解説しています。
こんにちは。川越の税理士法人サム・ライズの林公士郎です。
赤字決算の場合、納める税金がないと勘違いし無申告のままとしてしまう法人がありますが、場合によっては申告が必要な場合や、申告をしたほうが法人にとってメリットがある場合もあります。
赤字決算だったからといって無申告のままとせず、納めるべき税金について、また、今後のために申告をした方が良い理由についてしっかりと理解し、もしも現状無申告の場合は、一度税理士に相談することをおすすめします。
確定申告をしない(無申告)場合どうなるのか、全体を網羅的に知りたい方は以下の記事もご覧ください。
1.赤字決算の場合でも、確定申告した方が良いのか?
ずばり、
赤字決算の場合でも、納税しなければならない税金があるので、確定申告が必要です。
また、確定申告をすることで「法人税の還付」を受けられるなどのメリットもあります。
次章以降、説明していきます。
2.法人が納付すべき税金
法人が納めなければいけない税金は、法人税だけではありません。
法人が納めるべき税金には、以下のものがあります。
税金の種類 | 概要 | |
---|---|---|
地方税 | 法人 事業税 |
所得に応じて税額が決定。 資本金1億円以上の法人は、「外形課税標準法人」となり「付加価値割」「資本割」といった課税方式が適用。 |
法人 住民税 |
定額となる「均等割」と、所得に応じて税額が変動となる「法人税割」が適用。 | |
地方税+国税 | 法人税 | 税率は一律。 但し、一部条件を満たしている中小企業については優遇あり。 |
消費税 | 消費者が小売業などの事業者に支払っている消費税を、最終的に事業者が代わりに納付。 |
決算が赤字でも納付する必要がある税金
赤字決算となった場合でも、納税しなければならない税金は以下の3つです。
赤字決算でも納税しなければならない税金3種類
- ① 法人事業税(一部該当法人)
- ② 法人住民税
- ③ 消費税
以降、それぞれ解説します。
①法人事業税(一部該当法人)
法人事業税は、下記の算出式によって算出されます。
法人事業税額 = 所得 × 法人事業税率
つまり上記の算出式により赤字だった場合、基本的には法人事業税は発生しません。
ただし、資本金が1億円を超える法人は「外形課税標準法人」となり、所得に応じた税によって、「付加価値割」「資本割」が課税されるため、赤字であったとしても納税が必要となります。
また、資本金が1億円を超えていない法人であったとしても、電気・ガス供給業などは「収入割」が適用されるため売上に対して税金が発生するため、例え赤字であったとしても納税する必要があります。
②法人住民税
法人住民税は、法人の資本金・従業員数といった事業規模により納税額が決定している「均等割」と、「法人税割」で算出されます。
「法人税割」は、国に法人税を納めている法人、つまり「黒字」の法人のみ納税が必要ですが、「均等割」は赤字決算であったとしても納税が必要となります。
③消費税
消費税については消費者からの支払いを代行して納税するかたちなので、赤字であるか否かに関わらず消費税の納税は必須です。
ただし、「免税事業者」と認められる場合は、課税期間の基準期間における課税売上高が1,000万円以下の場合、その課税期間における課税資産の譲渡等について、納税義務が免除される場合があります。
決算が赤字なら原則納付しなくても良い税金
赤字決算だった場合は、納税が必要ない税金もあります。
赤字決算だった場合納税しなくてよい税金2種類
- ① 法人事業税(例外あり)
- ② 法人税
以降、それぞれ解説します。
①法人事業税(※例外あり)
基本的に赤字の場合は納税の義務がありません。
ただし、上記で記載したとおり、一部の業種や資本金1億円超の法人については納税義務が発生する場合もある点は注意してください。
②法人税
法人税は、所得に対しての課税となるため、もしも赤字決算となった場合は納税すべき税金がないため必要ありません。
会計上の所得と税務上の所得に注意
前述したとおり、赤字となった場合、法人税の納税は発生しません。
ただし、
会計上の損益計算によって算出した赤字が、税務上の赤字になるわけではありません。
なぜなら、会計上と税務上の損益計算は、一致していないためです。
このことを理解せずに会計上の所得を転記して申告を行うと、追加で納税などを求められる場合もあります。
会計上の損益と税務上の損益額に違いが生じる理由は、計上すべき収益や経費などに違いがあるためです。
税務上の所得は、会計上の所得を計算した後に税務上の項目を算出します。
そして、算出した所得に対して所定の税率を掛けて法人税額算出、さらに「税額控除」差し引いた額が法人税額となります。
会計上と税務上の所得差については、法人税申告書の「所得の金額の計算における明細書」(別表四)にて調整を行うこととなりますので注意してください。
3.赤字決算でも申告すると法人税の還付が受けられる場合も
赤字決算でも、無申告とせずに青色申告をおこなうと、
今後赤字が出た場合に、前の期に納付した税金の還付を受けることができる制度があります。
これは、「欠損金の繰戻しによる還付制度」というもので、資本金1億円以下の法人で、青色申告を連続して行っている中小企業が対象です。
ただし、還付対象となるのは前の期に納付した法人税が上限となり、それより前の法人税については対象外です。
また、青色申告を連続して行っている中小企業が対象となるため、例えば前期は黒字で、今期は赤字だったとしても、前期に青色申告を行っていない場合には対象外となります。
4.赤字を繰り越しすれば翌年度以降の法人税の軽減も可能
赤字でも確定申告を毎年行っていた場合、
赤字を繰り越すことが可能で、最大で10年間にわたり欠損金を繰り越しすることが出来ます。
この制度を「欠損金の繰越控除制度」と言います。
例えば、10年の間に黒字決算の期があった場合に、赤字決算の期と相殺することができ、法人税をおさえる効果があります。
もしも資本金1億円未満の法人の場合は、繰り越しした赤字を全て控除できるので、活用することをおすすめします。
ただし、「資本金1億円を超える法人は、控除できる金額に制限がある」、「資本金が1億円未満でも、資本金が5億円以上の法人子会社である」場合などは対象外となるため注意が必要です。
サム・ライズは、確定申告をずっとしておらず、何から手をつければいいか悩んでいる方の悩みを解消してきました。
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5.中小企業なら法人税の優遇制度の活用も有効
中小企業の場合、上記以外にも優遇制度を活用することで、納税額をおさえることができます。
ここでは3つの例をご紹介します。
納税額を抑えることができる優遇制度3例
①「免税事業者」と認められれば「消費税」の納税義務免除
②「交際費」を一定額まで損金として算入可能
③800万円以下の所得に対し「法人税率が15%」になる
以降、それぞれ解説します。
①「免税事業者」と認められれば「消費税」の納税義務免除
消費税については基本的には代行納税となるため、赤字かどうかに関わらず納税が必要となりますが、「免税事業者」と認められる場合は納税義務が免除される場合があります。
②「交際費」を一定額まで損金として算入可能
資本金5億円未満の法人の場合、2014年4月1日以降の事業年度分の交際費については一定額まで損金として算入することができます。
自社の役員や従業員などのために支払った飲食費などは対象外ですが、外部の得意先などのために発生した交際費については対象となるので活用すると良いでしょう。
③800万円以下の所得に対し「法人税率が15%」になる
資本金1億円以下の法人の場合は、800万円以下の所得に対し、法人税率が15%という特例税率が適用できます。
法人税の基本税率は23.2%であり、かなり優遇された税率が適用されることになるので、ぜひとも活用したいところです。
6.そもそも黒字でありながら赤字を装って無申告にするのは絶対NG
前述したような優遇措置を受けるため、あるいは納税を避けるために、
本来は黒字であるにもかかわらず、赤字を装って申告を行うことは絶対にあってはなりません。
国税庁では、無所得申告法人についての調査を重点的に行っています。
平成23事務年度においては、法人税について7,271件(前年対比112.8%)の無所得申告法人に対して調査を実施し、申告漏れ所得金額910億95百万円(同168.5%)を把握し、その後、課税、追加徴税をおこなったと発表しています。
自分の会社に国税庁の調査が入る可能性は限りなく低いだろうと思い、本来納税すべき税金があるにも関わらず無申告のままとしている場合は、今すぐ申告の対応を行うことをおすすめします。
税理士法人サム・ライズでは、長らく確定申告をしないままであったり、赤字決算となり、申告や納税が難しくなってしまったりしている法人の申告サポートも行っています。
もしも法人決算をせずに無申告のままとしている場合や、今年度分が赤字となる予定で申告に不安を感じているという場合、まずはサム・ライズにお問い合わせください。
オンラインでのご相談も受け付けています。
税理士法人サム・ライズ
代表税理士。
大原簿記学校法人税税法課専任講師を得て平成5年12月税理士試験合格、平成8年1月林税理士事務所を開業、平成16年12月税理士法人サム・ライズを設立。
税理士法人サム・ライズは、税理士顧問・創業支援・相続税・資金調達・無申告・税務調査立ち合い・クラウド会計・社会福祉法人など数多くのサービスで中小企業の皆様をサポートいたします。
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