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税務調査に入られる確率が高い個人事業主・法人の特徴10選を税理士が解説します。
目次
税務調査の目的は「適正・公平な課税・徴収」を推進するためのもので、不正のありそうな(だと税務署が判断した)ところが調査対象になります。
では、個人事業主や法人で調査に入られる確率の高さには、なにか傾向でもあるのでしょうか。
本記事では、税務署に狙われやすい個人事業主・法人の特徴について、10種類に分けて税理士が解説します。
税務調査に入られる確率の高い個人事業主とは?
個人事業主へ行う税務調査は、無作為抽出で行うわけではなく、ある程度の傾向を見ることが出来ます。
国税庁の事務年度ごとに公表されている「国税庁レポート」や、過去の調査実例をもとに、税務調査に入られる確率の高い個人事業主を5つのパターンで考えてみましょう。
無申告の個人事業主
個人事業主に税務調査が入るのは、無申告または過少申告が疑われるケースがほとんどです。
特に無申告者については、「無申告は、適正な申告をしている納税者に強い不公平感をもたらすことになるため、資料情報などから的確に把握し、積極的に調査を実施しています。」とされ、国税庁の重点調査項目に挙げられています。
「そもそも確定申告をしていなければバレないのでは?」と思われる方もいるでしょうが、ほとんどの収入は国税庁に補足、担保措置を伴ったより実効的な形による情報照会をすることができるようになっています。
国税庁は、これらの情報をビッグデータ化しAIで調査対象を絞り込む取組みを強化しており、所得隠しや申告漏れが特定されることが容易になっています。
この背景には、インターネット取引を含む「シェアリングエコノミー等新分野の経済活動」が大きく広がっていることがあります。
個人事業主の無申告は、非常にリスクの高い危険な行為だと理解しましょう。
申告漏れが多い業種に該当している
国税庁レポートには税務調査の状況をまとめた資料が公表されており、申告漏れ所得が高額な業種は掲載されています。
出典:国税庁「令和4事務年度 所得税及び消費税調査等の状況」
少し前までは「風俗業」「キャバレー」が国税庁の目の敵だったのが、最近では「経営コンサルタント」「システムエンジニア」「ブリーダー」などの申告漏れが多くなっています。
これらの業種を営んでいる個人事業主は、他の業種に比べ税務調査に入られる確率が高くなります。
売上高が1,000万円に僅かに届いていない
売上高が1,000万円を超えると、その翌々年から消費税の課税事業者になりますが、何年も1,000万円に届かないくらいの申告内容だと税務調査の確立が上がります。
税務署サイドは基本的に「疑いの目」を向けてくるので、このような個人事業主は「売上未計上があって、消費税逃れをしているのではないか?」と考えられてしまいます。
正しく売上計上しているつもりでも、自家消費の計上漏れなどを指摘され売上高が1,000万円を超えるようなケースも考えられるので、気を付けることが必要です。
もし意図的に過少申告したことが明らかな場合、重加算税対象となり、7年分の修正申告が必要となってしまいます。
もし適正に申告していたとしても、税理士などの専門家の目を通すことがオススメです。
経費など申告内容に不審点がある
税務署は業種ごとの申告データを膨大に持っており、平均的なデータと乖離の大きい収支計算書は疑われる可能性が高くなります。
もちろん業種ごとの平均データが100%正しいことはなく、税務調査が入っても経費の内容を詳しく説明できるなら問題はありません。
ただ、調査の可能性が高まるというのは事実なので、個人事業主の場合は経費と個人的支出の切り分けに注意しましょう。
開業後3年以上経過し売上が増えている
税務署の調査官も人的資源は有限なので、闇雲に無駄な調査を行うことはありません。ある意味で「タイパ」重視ともいえるでしょう。
一般的な税務調査は過去3年分について調べるので、個人事業主として開業後3年を過ぎたら調査の可能性があると考えておくべきです。
税務署サイドから見た場合、開業後3年を経過し、売上も順調に拡大している個人事業主は追徴課税の可能性が高いと考えるので、特に注意が必要です。
税務調査の可能性が高い法人の特徴
法人に対する税務調査も個人事業主のケースと同じで、過少申告が疑われることが大きな原因となります。
ただ法人調査特有の事例もあるので、ここからは税務調査に入られやすい法人の特徴を5つに分けて考えてみましょう。
数値に大きな変動がある法人
税務署へ申告された決算書等のデータは、国税総合管理システム(KSK)へ蓄積され、調査対象もAIによって選定されています(例外もあり)。
売上高や原価、経費などに大きな変動が認められると「異常値」として認識され、その原因が解明されなければ税務調査または、書類などによる照会が行われます。
また同一法人の変化だけではなく、同業種や規模の似た法人との比較も行われるので、やはりそのような比較を行える税理士へ相談するなどの対策は必要でしょう。
業績好調な法人・消費税の還付申告をした法人
よく「業績が好調で儲かっている会社には税務調査が入る」と言われますが、これは正しい認識だといえます。
毎年赤字決算の法人へ税務調査を実施したところで、消費税や源泉所得税は別ですが法人税の追徴課税は出来ないので、正直割に合わない税務調査となります。
つまり黒字法人の方が税務調査に入る可能性が高いというのが事実です。
また、高額な資産などを購入して消費税の還付を受ける場合には、税務調査の可能性が高くなります。
これは国税庁の重点調査項目にも挙げられており、「特に、虚偽の申告により不正に還付金を得ようとするケースについては、調査などを通じて還付原因となる事実関係を確認し、不正還付防止に努めています。」と言及されているので注意が必要です。
税務調査まで至らないケースでも、税務署から追加資料の提出を求められたりします。
不正が多い業種
法人でも「不正が多く脱税の多い業種」というカテゴライズが存在していて、やはり国税庁が公表しています。
■不正発見割合の高い 10 業種(法人税)
順位 | 業種目 | 不正発見割合(%) | 不 正 1件 当 たりの不 正 所 得 金 額(千円) | 前年順位 |
1 | その他の飲食 | 36.2 | 20,201 | 5 |
2 | 廃棄物処理 | 29.4 | 20,328 | – |
3 | 中古品小売 | 28.7 | 13,520 | – |
4 | 土木工事 | 28.1 | 16,666 | 4 |
5 | 職別土木建築工 事 | 27.7 | 18,825 | 3 |
6 | 医療保健 | 27.6 | 11,941 | 2 |
7 | 一般土木建築工 事 | 26.8 | 19,405 | 9 |
8 | 管工事 | 26.4 | 16,026 | – |
9 | 自動車、自転車小売 | 25.1 | 11,737 | – |
10 | 美容 | 25.0 | 10,791 | 6 |
引用:国税庁「令和4事務年度 法人等の調査事績の概要」
このランキング以外にも、かつては上位常連だったパチンコ店を含め、これらの業種だと税務調査の可能性が高くなります。
過去の調査で追徴金を受けた法人
過去に税務調査を受け、重加算税とまでは行かなくとも多額の追徴課税を受けた法人は、高確率で再び税務調査を受けることになります。
故意であったと認定されなくても、売上の隠ぺいやそれに類する行為は税務署側の心証も悪く、定期的な税務調査を招くことになるでしょう。
長期間調査のなかった法人
法人の中には、設立から一度も税務調査に入られたことのない会社もありますが、だからといって安心するのは早計です。
国税庁の公表によれば法人への実地調査実施率は約3%なので、確立としては30年以上に1度入るかどうかという数値です。
ただ、長期間調査がないところでも、「あまり接触がないのは良くない」という謎理由で税務調査が実施されるケースもあります。
税務調査は任意調査と聞きましたが断れますか?
古い映画ですが「マルサの女」という作品は、国税庁査察部による強制調査が題材でした。
強制捜査はその名のとおり「強制」で、裁判所の令状を得て行われるので断ることなど出来ません、
それに対して税務署が行う税務調査は「任意調査」とも言われており、その名を聞くと断れるかのような印象を受けます。
しかし実際には拒否できないもので、それは税務調査官には「国税通則法第74条の2」で質問検査権が与えられており、納税者は受忍義務があるためです。
税務署の調査官も人なので、あまり心証を悪くするような行為は慎んだほうが良いでしょう。
まとめ
個人事業主と法人に分けて、税務調査に入る確率の高い事業所の特徴を解説してきました。
あくまで確率の問題であって、一つ真実を話せば「絶対税務調査に入らない」という事業所は存在しないということです。
不正などしていなくても気分の悪い税務調査ですが、いざ入られても困らないように税理士の力を借りることが一番の保険だといえるでしょう。
税理士法人サム・ライズ
代表税理士。
大原簿記学校法人税税法課専任講師を得て平成5年12月税理士試験合格、平成8年1月林税理士事務所を開業、平成16年12月税理士法人サム・ライズを設立。
税理士法人サム・ライズは、税理士顧問・創業支援・相続税・資金調達・無申告・税務調査立ち合い・クラウド会計・社会福祉法人など数多くのサービスで中小企業の皆様をサポートいたします。
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