消費税に関する改正~居住用賃貸建物の取得に係る仕入税額控除~

こんにちは。川越の税理士法人サム・ライズの中西です。

段々涼しくなり、過ごしやすくなってきましたね。会計事務所で働いていますと、毎年の税制改正に常にアンテナを張る必要性を感じます。毎年秋~冬にかけては税制改正の話題が出てきますが、今回はどの様な改正案が出されるのでしょうか。

税制は大なり小なり、毎年改正されているので、その情報についていけないと業務に支障が出てしまいますし、日々学習していく事が大切です。今回は、少し前の改正になりますが、令和2年度の居住用賃貸建物に関する消費税の改正について取り上げたいと思います。

居住用賃貸建物の取得については税額控除できなくなった

令和2年10月から、居住用賃貸建物については、「その課税仕入れ等の税額は仕入税額控除の対象としない」ことになりました。

ざっくり言いますと、居住用賃貸に使う建物を取得・建築した場合には、その取得や建築の際に支払った消費税を仕入税額控除できなくなりました。

仕入税額控除できないという事は、
(預かった消費税)-(支払った消費税)=(納付する消費税)

で計算する「支払った消費税」の金額が少なくなりますので、納付する消費税が増えるという事です。

納付消費税額が増えると聞くと身構えてしまうかもしれませんが、この改正は主に事業規模の小さい不動産業をターゲットとした改正になります。この改正におけるキーワードは「居住用賃貸建物」なわけですが、居住用賃貸建物とはいったいどういうものを指すのでしょうか。

居住用賃貸建物とは

国税庁によると、「居住用賃貸建物とは、住宅の貸付の様に供しないことが明らかな建物以外の建物であって、高額特定資産又は調整対象自己建設高額資産に該当するもの」とあります。

高額特定資産とは、税抜きの支払対価が1,000万円以上の棚卸資産又は調整対象固定資産をいいます。そして調整対象自己建設高額資産とは、自ら建設した棚卸資産で、その建設に要した金額が税抜1,000万円以上のものをいいます。

これらをまとめると、居住用賃貸建物とは、「税抜金額1,000万円以上で購入又は建築した資産で、その用途が住宅の貸付用であるもの」となります。例えば、居住用マンションを税抜1,000万円以上で購入し、それを貸し付けた場合はこれに当てはまります。

改正前はどうだったのか?

改正前の居住用賃貸建物の消費税取り扱いはどうだったのでしょうか。改正前は税額控除出来ていたのかといいますと、出来ていた事業者もあれば、出来なかった事業者もあります。

事業者の売上規模や業種によって、税額控除の可否に差があったのです。なぜこの様な差ができていたのかは、税額控除のそもそもの仕組みに原因があります。

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税額控除の仕組み

納付する消費税を算出する際は、(預かった消費税)-(支払った消費税)=(納付する消費税)で計算するわけですが、実はこの支払った消費税については、事業者が実際に支払った消費税を全額控除できない場合があります。

原則的な消費税の考え方では、支払った消費税のうち非課税売上に対応するものは、預かった消費税から控除できないとされています。非課税売上については、そもそも預かった消費税がないため、それに対応する仕入についても税額控除をすべきではないという考えからです。

しかし、非課税売上に対応する課税仕入を区分するとなると負担が大きいため、一定規模以下の事業者については課税売上割合の要件を満たせば、支払った消費税額の全額を控除することが認められています。

一定規模以下の事業者とは、課税期間中の課税売上高が5億円以下の事業者をいい、そのうち、課税売上割合が95%以上の事業者については支払った消費税が全額控除できます。

対して、課税売上高が5億円超の事業者や、課税売上割合が95%未満の事業者については、支払った消費税は全額控除できず、課税売上に対応する部分のみ控除できることとなっています。

課税売上に対応する部分の計算の方法としては、「個別対応方式」と「一括比例配分方式」とがあります。

課税期間中の課税売上高が5億円以下かつ課税売上割合が95%以上の場合

預かった消費税から支払った消費税の全額が控除できます。この場合、課税仕入れを非課税売上対応や課税売上対応に区分する事務負担がなく、全額控除できるため納付税額も有利に計算できます。

改正前の居住用賃貸建物の取得についても、その消費税額の全額が控除できていました。

課税期間中の課税売上高が5億円超の場合や、課税売上割合が95%未満の場合

課税仕入れのうち、課税売上に対応する部分のみ控除します。課税売上に対応する部分の計算方法は「個別対応方式」と「一括比例配分方式」があり、どちらかを選択することになります。

(1)個別対応方式

個別対応方式とは、課税仕入れを次の3つのグループに区分し、それぞれのグループに対応した金額を控除する方法です。

A. 課税売上にのみ対応する課税仕入れ
B. 非課税売上にのみ対応する課税仕入れ
C. 課税売上と非課税売上に共通して対応する課税仕入れ

そして、次の計算式で控除する税額を計算します。

(控除できる消費税額)=(A.消費税額)+(C.消費税額)×課税売上割合

注目すべきは、Bの非課税売上に対応する課税仕入れは全く控除できないという事です。居住用賃貸建物の取得や建築はこのBに該当する課税仕入れなので、個別対応方式を採用する事業者については、今回の改正前でも仕入税額控除できていなかったという事です。

(2)一括比例配分方式

対して一括比例配分方式は、課税仕入れの内容を区分せず、全ての課税仕入れの税額に課税売上割合をかける計算方法です。

(控除できる消費税額)=(課税仕入れにかかる消費税額)×課税売上割合

課税売上割合が、全売上高のうちの課税売上高の割合を表しているので、それをかける事によって、非課税売上に対応する課税仕入れを除外するという考え方になります。課税仕入れを区分しないので、こちらの方が事務負担は少なくなります。

なお、この一括比例配分方式を選択した場合は、2年間は一括比例配分方式を選択しなければならないという点に注意が必要です。

今回の改正でどうなった?

上記のように、全額控除の場合には非課税売上に対応する仕入でも控除できている事実があります。建物のように仕入金額が大きい場合は、事業者の節税金額も大きいものとなっていました。

今回の改正で、居住用賃貸建物(税抜金額1,000万円以上で購入又は建築した資産で、その用途が住宅の貸付用であるもの)の取得にかかった消費税額は控除できなくなりましたので、その節税効果はなくなりました。

より適正な課税に近づいたとも言えます。

注意点

居住用賃貸建物は、「住宅の貸付の様に供しないことが明らかな建物以外」と定義されていますが、建物の一部を居住用、一部を事業用に合理的に区分して貸し付ける場合はどうなるのでしょうか?

この場合は、事業用賃貸部分については、従来通り仕入税額控除の対象となります。また、建物を取得したときは居住用で賃貸していたけれど、その後3年以内に事業用として賃貸した場合や建物自体を売却した場合には、一定金額を仕入税額控除に加算できます。

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消費税に関する改正~居住用賃貸建物の取得に係る仕入税額控除~まとめ

令和2年10月から、居住用賃貸建物を取得・建築した場合には、その取得や建築の際に支払った消費税を仕入税額控除できなくなりました。

それまでは、課税期間中の課税売上高が5億円以下かつ課税売上割合が95%以上の事業者は、非課税売上に対応する仕入でも全額控除できるため、特に建物など取引金額が大きい場合は、節税金額も大きいものとなっていました。

今回の改正はその節税スキームに対策がとられたものです。節税スキームに対する改正は度々行われており、今後も改正が予想されますので見逃さないように注意して見ていく事が重要です。居住用賃貸建物に関するご不明点などございましたら、川越の税理士法人サム・ライズまでお気軽にお問合せください。

関連ページ:税理士法人サム・ライズの経営支援について

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