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支出の価値を考える~会社をより成長させる“価値ある支出”とは~
目次
こんにちは、川越の税理士法人サム・ライズの林亜由美です。
10月に入り、ようやく過ごしやすい気候となってきましたね。
いよいよ秋の到来といったところでしょうか。
実りの秋に読書の秋、スポーツの秋に芸術の秋…などなど、
楽しみたいことが盛りだくさんの季節、
体調には十分気を付けながら、欲張っていろんな秋を満喫しましょう!
さて、今回テーマにするのは“支出の価値”です。
普段は売上や人事、これからの戦略といったところに注力することが多いため、“支出”についてクローズアップして考えることは少ないと思います。
けれど、みなさんも一度は、次のように疑問に思ったことがあるのではないでしょうか。
「うちの会社は、何にどれくらいまで経費をかけて良いのだろうか?」
「固定資産の購入や設備投資はいくらまで大丈夫なのだろうか?」
実際に、私どものところへ相談に来られる経営者様からも、このような質問をいただくことがよくあります。
このような“支出”に関する疑問はついつい後回しにされてしまいがちですが、みなさんが会社を経営していくにあたってはしっかり押さえていただきたい、基本的かつ重要な部分になります。
そこで本ページでは、会社が行う“支出”のうち「経費」と「固定資産(設備投資)」の部分について、会社をより成長させる“価値ある支出”とするためのチェックポイントや、支出した後の管理などについて詳しく解説いたします。
ぜひ最後までご一読いただき、みなさんの会社経営にお役立てください!
価値ある支出にするために【経費の場合】
早速ですがみなさんは、どの経費にどのくらいまでお金をかけていくかについて、どのように決断していますか?
会社によって、あるいは経費の種類や金額などによって、様々な判断基準があると思いますが、今回はどのような場合でも共通して把握しておいていただきたい、“価値ある支出”にするための基本的な4つのチェックポイントについてお伝えしたいと思います。
経費を決める際に検討すべき6項目
はじめに、経費を決める際に必ず検討していただきたいことが、次のとおり6つあります。
①経費をかけることで得たい効果を明確にし、費用対効果が見合うか検討する
②イニシャルコストとランニングコストを確認する
③契約後に金額変更となる可能性はあるか、その場合の条件も確認する
④支出した後、期待する効果が現れるまでの期間を確認する
⑤うまくいかなかったケースの事例を確認する
⑥撤退要件の検討と失敗した場合の対策を検討する
まずは、その経費をかけることで得たい効果を、より具体的に明確にしましょう。
例えば、
・○○円の収益アップ
・△△%の生産性向上
・□□円のコスト削減 …など、
可能であれば具体的な数字で明確にし、そのうえで費用対効果が見合うのかどうか、というところを検討してみてください(①)。
次に、イニシャルコストやランニングコストは、資金繰りや利益にダイレクトにかかわってきますので、導入にいくらかかるのか、また導入後に効果が及ぶ範囲にかかってくる費用はどれくらいなのか、といった内容を必ず確認するようにします(②)。
また、契約後に金額変更となる場合もありますので、その可能性があるのかどうか、その場合の条件が何なのかについてもよく確認する必要があります(③)。
そして、支出してから期待した効果が現れるまでの期間や、実際に過去に行われたケースではどのような成果があったのか、逆に、うまくいかなかったケースの事例についても確認してみてください(④、⑤)。
それから、もしうまくいかなかった場合にどうするのか、ということについてもよく考えておきましょう。
もちろん、実際に失敗した時でなければ対策できないことも大いにあると思いますが、今の時点である程度まで考えておけば、万が一の時でも慌てず適切に対処できるようになります(⑥)。
その経費に相当する売上を知る
前述した6項目のほか、経費を決める際には、その経費が一体いくらぐらいの売上に相当するのかを把握しておくことも大切です。
例えば、限界利益率100%のA社と、限界利益率20%のB社について、経費100万円に相当する売上をそれぞれ算出して、比べてみましょう。
売上は、次の算式を使って求められます。
経費(円)÷限界利益率(%)=売上(円)
実際にA社とB社の状況をそれぞれ上の式に当てはめてみると、
【A社】100万円÷100%=100万円
【B社】100万円÷20%=500万円
となります。
これはどういうことかというと、A社の経費100万円は売上高100万円相当になり、B社の経費100万円は売上高500万円相当になる、ということを表しています。
つまり、B社においては、経費を100万円削減すれば、売上高を500万円上げることと同じ効果を得られる、ということが言えるのです。
そう考えると、どんなに小さな経費でも馬鹿に出来ませんね。
経費をかけた後に管理すべき2項目
どの経費をいくらぐらいかけるのか、しっかり検討して決断したら、その後の管理も怠らずに行うようにしましょう。
その際に気を付けていただきたいことは、次の2項目になります。
①その経費を支出したことで得た効果の検証
②期待した成果が得られなかった場合の検討
では順に、詳しく解説していきます。
まずは、①その経費に期待した効果が得られたかどうかを検証します。
具体的な費目ごとに、その検証方法を見ていきましょう。
・広告宣伝費
1件当たりの獲得費用がいくらだったのか、そしてそれは売上の何%だったのかを算出します。
・人材採用費
一人あたりの採用コストや、何人採用できたのか、などが分かる「採用リスト」を作成します。
・システム関連費
1時間当たりの単価や、担当件数、残業時間などを算出し、その推移を見ます。
このような検証を行うことで、どの広告に効果があったのか、どのシステム整備に効果があったのか、などということが分かってきます。
ただし、このような検証を行うためには、獲得費用や採用コスト、社員それぞれの残業時間など、とても細かなデータを取っておく必要があります。
ですから、新たに経費を決める際には必ず、どんなデータを取っていれば後に検証できるのか、ということも考えるようにしてください。
次に、②検証した結果、万が一期待した効果が得られなかったと判断された場合には、できるだけ早急に撤退要件を確認して今後の検討を行ったり、代替案を模索したりする必要があります。
期待した効果が得られない経費を、ずるずると支払い続けるのはとてももったいないことになりますので、撤退するには早めの決断が重要なのです。
ですからみなさんには、最低でも1年に1回、決算が終わったタイミングなどに定期的に、その経費によって得られた効果を検証していただきたいと思います。
経費を分類する
最後に、今みなさんの会社で支出している経費を全て、次のように細かく分類してみてください。
①「これぐらいはかかる」と思う必要な経費
材料費、商品仕入代、販売促進費 等
②「これぐらいかかっても仕方がない」と感じる経費
人件費、賃貸料、光熱費 等
③「無駄に支払っている」と感じる経費
保険料、交際費、リース料、古参役員の人件費 等
④「費用対効果があるのかよくわからない」経費
広告費、交際費、業界会費 等
⑤「払いたくないが、払わなければならない」経費
借入利息、税金 等
⑥「将来のために」意識的にかけている経費
設備投資費用、研究開発費 等
⑦「万が一のために」かけている経費
保険 等
このように細かく分類することで、その支出が会社にとって本当に価値ある支出なのかどうかということを再確認することができます。
また、例えば、退職した社員のためにかけていた保険が解約されずに残っていたり、使っていない機器のリース料を払い続けていたり、ほとんど活動していない会費が自動的に引き落とされていたり…などといった、早急に撤退すべき案件も発見されやすくなります。
ここまで細かく見る時間はなかなか取りづらいかもしれませんが、このように整理するだけでも結構な金額になることがあります。
ですから、ぜひ1年に1回程度は勘定元帳を見て、自社が何の経費にいくらかけているのか、ということを見直すべきだと私は思います。
価値ある支出にするために【固定資産の場合】
経費に続き、固定資産(設備投資)も“価値ある支出”とするためには、どのような視点が必要になるのでしょうか。
ここでは、固定資産を購入したり設備投資したりする際に、必ず検討していただきたい3つのチェックポイントをお伝えしたいと思います。
金利よりも借入期間に着目する
固定資産を購入する際はたいてい、借り入れを行うことになると思いますが、ついつい「金利」ばかりを気にしてしまっていませんか?
固定資産を“価値ある支出”とするためには、実は「金利」よりも「借入期間」に着目することが重要になります。
どういうことかというと、例えば、ある固定資産を購入するために1,000万円調達するとします。
これを、次のように2パターンで考えてみましょう。
A:借入期間5年で借りる場合
B:借入期間10年で借りる場合
まずは、(A)1,000万円を借入期間5年で借りる場合、単純に計算すると毎年200万円ずつ返済することとなります。
つまり、1,000万円調達したうちの200万円を1年で返済しなければならないため、実際に目的のために使えるのは、800万円のみ、ということになります。
続いて、(B)1,000万円を借入期間10年で借りる場合はというと、
単純計算で毎年100万円ずつの返済で済むようになります。
つまり、1,000万円調達したうちの100万円を1年で返済することになるため、実際に目的のために使う分としては900万円を手元に残すことができます。
このように、「借入期間」に着目することで、少々利率が高いとしても、手元に残しておけるお金が増え、その後の毎年の支出も少なく抑えることができるのです。
据置期間を設ける
次は、設備投資等をしてから収益を上げられるようになるまでの期間に着目します。
会社の事業内容などにもよりますが、設備投資したからといって、必ずすぐに収益があげられるようになる、とは限りませんよね。
設備投資して2か月目以降とか、2年目以降に黒字化を計画している場合もあります。
そういった場合は、「据置期間」を設けることを検討しましょう。
「据置期間」があれば、事業が軌道に乗ってから借入金を返済できるようになるため、会社の資金繰りの安定にもつながります。
耐用年数と借入期間のバランスを見る
最後は、購入しようとしている固定資産等の耐用年数に着目します。
なお、ここでいう耐用年数とは、税務上の耐用年数ではなく、実務上の耐用年数だと考えてください。
例えば、次のような条件の場合を考えてみましょう。
設備投資した機械の耐用年数:20年
設備投資の際の借入金返済期間:30年
上記のように、耐用年数よりも借入金返済期間が長くなっている場合(耐用年数 < 借入金返済期間)、設備投資してから20年経過後に機械が壊れてしまっても、借入金はその後も10年間、変わらずに返済し続けなければならず、会社の経営を悪化させてしまいます。
このようなことにならないために、必ず次のようなバランスになるよう、耐用年数と借入金返済期間の関係に着目してください。
耐用年数 > 借入金返済期間
このバランスを考えずに安易に設備投資してしまうと、会社全体のバランスを崩すことにもなりかねませんので、くれぐれも慎重に行いましょう。
まとめ
ここまで、会社が行う“支出”のうち「経費」と「固定資産(設備投資)」の部分について、会社をより成長させる“価値ある支出”とするためのチェックポイントや、支出した後の管理などについて詳しく解説いたしましたが、いかがでしたでしょうか?
会社をより成長させるには、売上や戦略も大切ですが、“価値ある支出”ができているのかどうかもカギとなってきます。
今回のように“支出”についてクローズアップして考えることは普段なかなか無いと思いますが、この機会に“支出の価値”についてみなさんにも考えていただけたらと思います。
今回も最後までお読みいただきまして、ありがとうございました。
税理士法人サム・ライズ
代表税理士。
大原簿記学校法人税税法課専任講師を得て平成5年12月税理士試験合格、平成8年1月林税理士事務所を開業、平成16年12月税理士法人サム・ライズを設立。
税理士法人サム・ライズは、税理士顧問・創業支援・相続税・資金調達・無申告・税務調査立ち合い・クラウド会計・社会福祉法人など数多くのサービスで中小企業の皆様をサポートいたします。
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