スピリチュアルカウンセラーや占い師の確定申告・インボイスについての注意点を税理士が解説。
目次
人は色々なことで悩むものですが、スピリチュアルカウンセラーや占い師の力を借りている方もいるのではないでしょうか。
知らない方も多そうなスピリチュアルカウンセラーや占い師の世界ですが、その実態や税金の関係はどうなっているのか気になりますよね。
本記事では、これらの職業と確定申告や、消費税とインボイスとの関係について、注意点を税理士が解説します。
スピリチュアルカウンセラーや占い師の実態とは?
あまり詳しくない方だと、スピリチュアルカウンセラーや占い師の収入の実態や、確定申告の有無などは、知らなくて当り前です。
これから、そのような職業を始めようという方も、仕事内容はともかく税金のことはあまり考えていないことでしょう。
まずは、これらの職業の内容を確認して、大まかな収入事情を考察してみます。
スピリチュアルカウンセラーのお仕事
スピリチュアルカウンセラーとは、一般的な理解では「霊能力を使ってカウンセリングをし、悩みや不安を解消していく人」のことです。
この記事は、あくまで確定申告やインボイスとの関係に限定するので、信じるかどうかの話には触れません。
その能力を使って相談者の悩みの原因を探り、相談者自身も気が付いていない根本原因にたどり着きます。
つまり基本的にはカウンセリングのお仕事になり、相談料の相場は数千円~数万円まで様々です。
これだけ聞けば相当な収入になりそうなものですが、スピリチュアルカウンセラー専業の方で平均すると年収約350万円だと言われています。
開業するための資格も不要なので、参入のハードルは低いのですが、仕事として軌道に乗せるのは容易ではありません。
占い師のお仕事
スピリチュアルとは違い、占い師はかなり歴史の長い職業で、皆さんも見かけたことや占ってもらったことがあるのではないでしょうか。
占いの方法は古今東西数多の種類があり、占い師はいずれかの方法で人の心の内や運勢や未来などを判断し、予言をするお仕事です。
占い1回あたりの相場は3,000円となっており、占い師の平均的な年収は200~300万円ほどと言われています。
一昔前まで占いといえば対面で行うものでしたが、最近では電話やネット、LINEなどを通した占いが増えていて、身近な存在になったといえるでしょう。
ただ、占い師として生計を立てるのは容易なことではなく、一部では「占い師は飽和状態」などという声も出ています。
スピリチュアルカウンセラーや占い師のお客様
スピリチュアルカウンセラーや占い師のお客様は、そのほとんどが事業とは関係のない一般個人客です。
確定申告の話の前に触れておきますが、この事実は非常に重要なポイントで、これらの職業の収入を国税当局が補足するのは難しいでしょう。
一つ注意しておきますが、これは「確定申告しなくていい」という意味ではありません。
実際にクレカや振り込みによる入金や、ネットやSNS・LINEなどを通した収入は丸見えであることは理解しておきましょう。
ちなみに余談ですが、スピリチュアルカウンセラーや占い師に法人などの事業者が支払った相談料は、法人の経費で落とせるのでしょうか。
意外とある話なのですが、経営者の個人的な信仰に基づくような支払でなければ、コンサルタント料のような経費として落とせる可能性はあります。
つまり、このような仕事をする場合には、相手から領収書の発行を求められるでしょう。
スピリチュアルカウンセラーや占い師と確定申告
スピリチュアルカウンセラーや占い師のお仕事がどんなものか分かったところで、これらの収益は明らかな「事業所得」だと理解できるでしょう。
副業であっても「雑所得」、あるいは金額によっては事業所得になります。
そこで、これらの職業と確定申告の関係について、詳しく見ていくことにしましょう。
本業で営んでいる方の確定申告
所得税法第120条に確定申告をしなければならない人が明記されていて、その条文は以下のようになっています。
「納税義務者はその年中の合計所得金額が雑損控除などの各種所得控除の合計額を超え、かつ、その超える金額について求められる所得税額が配当控除額を超える場合は、確定損失申告書を提出する場合を除き、確定所得申告の義務があり、その翌年2月16日から3月15日までに税務署長に対し確定申告書を提出しなければならない」
出典:税務研究会法令集
難しいことを書いているように見えますが、これを簡単にいうと1人について最低限の所得控除は「基礎控除」の48万円なので、それを超える所得がある場合は確定申告が必要です。
国民健康保険料や生命保険の控除があったとしても、それらは確定申告して初めて控除されるものなので、収入から経費を差し引いた所得金額が48万円を超えたら、必ず確定申告をしましょう。
副業や趣味の延長なら申告は不要?
会社員などが副業としてスピリチュアルカウンセラーや占い師をしている場合、確定申告は必要なのでしょうか。
これも所得税法に、確定申告を要しないケースが明記されており、以下のようになっています。
「1か所から給与所得の支払を受ける場合であって、給与所得及び退職所得以外の所得金額が20万円以下であるとき」
出典:税務研究会法令集
つまり副業であっても、その所得が20万円を超えてしまえば確定申告が必要です。
複数の副業をしている場合は、そのすべてを合算して20万円を超えたかどうかを判断します。
また「原則論」になりますが、この20万円ルールは所得税法の話であって、住民税の申告は20万円以下でも必要なことは知っておきましょう。
収入の把握と必要経費
確定申告が必要かどうかは、本業か副業か、また所得によって変わってきますが、基本的に確定申告をする前提で備えておくことが重要です。
スピリチュアルカウンセラーや占い師は、1人で全てをやるケースが非常に多いので、収入金額の把握や領収書を保存し経費の管理もするのは大変だと思います。
しかし、これらの基礎資料は後回しにして溜めてしまうと、もっと大変なことになってしまいます。
とくに本業の方は整理しなければならない書類も多くなるので、税理士などの専門家に相談してみることがオススメです。
無申告が発覚したときのペナルティ
確定申告が必要な方は、たとえ3月15日の申告期限が過ぎたとしても確定申告しなければなりません。
期限を過ぎた後に自ら申告する「期限後申告」と、期限を過ぎても申告しないままでいた「無申告」では、課されるペナルティが異なるので注意しましょう。
期限内に申告しなかった場合、「無申告加算税」が課され、原則として納付すべき税額に対して50万円までは15%、50万円を超える部分は20%の金額が加算されます。
ただし、税務署の指摘を受ける前に期限後申告した場合は、無申告加算税は5%に軽減されるので、違いの大きさが分るでしょう。
また、いずれの場合も所得税の納付期限を過ぎることになってしまうので、その経過日数分の延滞税(利息のようなもの)も課されます。
スピリチュアルカウンセラーや占い師とインボイス
2023年10月1日にスタートしたインボイス制度は、スピリチュアルカウンセラーや占い師の影響があるのでしょうか。
ほとんどの場合、消費税の非課税事業者だと思いますが、インボイス制度との関係を考えてみます。
インボイス制度の概要
インボイス制度のポイントは、事業者は適格請求書(インボイス)に記載された消費税でないと「仕入税額控除」が受けられなくなるとうことです。
このことから発注者サイドからみると、インボイスを発行できない免税事業者へ仕事を依頼すると、消費税分を仕入税額控除できなくなり、結果として納税負担が増えることになります。
適格請求書発行事業者への登録は必要?
インボイス制度のポイントは、仕事を依頼してくる相手が消費税の課税事業者か否かで、一般個人を相手にするスピリチュアルカウンセラーや占い師には関係のないものです。
むしろ経費にすらしない相手なので、ほとんど影響はないといえます。
ただ、ごく一部では法人の経営者などから助言を求められ、それを経費で落とすケースがありますが、その場合はどうなのでしょうか。
恐らくほとんどのケースでは、依頼してくる法人経営者はあなたのことを霊的、あるいは宗教的に信頼していることでしょう。
そのような関係であれば、普通は「インボイスを発行しろ」などと言わないはずです。
神社やお寺にインボイスの発行を求める人が(ほぼ)いないのと同じで、あまりインボイス制度を気にする必要はありません。
まとめ
スピリチュアルカウンセラーや占い師と、確定申告やインボイスの関係を解説しました。
どのような名称や内容の事業であっても、一定上の所得があった場合には確定申告の義務を負うことは理解いただけたでしょうか。
所得税法では、課税所得の定義について、合法な方法で得られたかどうかについて、特に定めがありません。
つまり、どんな所得でも税金を課すという意味です。一方でインボイス制度に関して、スピリチュアルカウンセラーや占い師は無関係だといえます。
ただ、場合によっては課税事業者になるメリットがあるので、将来的な事業計画を含めて専門家へ相談してみましょう。
税理士法人サム・ライズ
代表税理士。
大原簿記学校法人税税法課専任講師を得て平成5年12月税理士試験合格、平成8年1月林税理士事務所を開業、平成16年12月税理士法人サム・ライズを設立。
税理士法人サム・ライズは、税理士顧問・創業支援・相続税・資金調達・無申告・税務調査立ち合い・クラウド会計・社会福祉法人など数多くのサービスで中小企業の皆様をサポートいたします。
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