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個人事業主で税務調査に入られやすい売上高はいくらから?注意点を税理士が解説します。
目次
税務調査と聞けば、法人事業所や売上高の多い個人事業主にしか関係ないことだと思ってはいないでしょうか。
確かに売上高の多い個人事業主は「税務署に目を付けられやすい」というイメージがありますが、それは一面では正しく一面では誤った考えだといえます。
本記事では、個人事業主で税務調査に入られやすい売上高はいくらから?という素朴な疑問を中心に、税務調査へ対する注意点を税理士が解説します。
個人事業主への税務調査と売上高の関係
最近の税務調査の傾向を話すと、以前と比べて個人事業主への調査件数が確実に増えています。
その傾向を調べてみると、「売上高が少ないから安心」と油断できないことが分かるので、まずは実際の調査件数や、売上高ごとの注意点について考えてみましょう。
申告件数と税務調査件数
国税庁は、毎年の申告件数や調査件数を公表しており、一番新しいものは令和4事務年度(2022年7月~2023年6月)のデータです。
なお、申告件数や調査件数には事業所得以外の所得(譲渡所得や年金)なども含まれているので、あくまで参考値として見てみます。
令和4年分所得税の申告人員 | 2,295万人 |
(※上記のうち申告納税額のある方) | (653万人) |
実地調査の件数 | 31,407件 |
簡易な接触の件数 | 568,340件 |
調査件数合計 | 599,747件 |
参考:令和4年分の所得税等、消費税及び贈与税の確定申告状況等について
参考:令和4事務年度 所得税及び消費税調査等の状況
税務調査といえば、税務署の職員が訪問してくる「実地調査」を連想しますが、ここ数年「簡易な接触」という文書、電話による連絡又は来署依頼による面接が増えています。
全申告件数にたいして2.6%以上の調査を実施いていることになります。
ただ、この調査件数には「無申告者」へ対する税務調査も含まれているので、その点を考慮すれば少なくとも確定申告をしていれば確率が下がるともいえるでしょう。
申告義務と税務調査の関係
個人事業主やフリーランスの方は、売上高から経費を差し引いた「所得」が48万円以下であれば、その金額が基礎控除以下なので確定申告をする必要がありません。
また会社員などが副業を行っているようなケースでは、副業の所得が20万円以下であれば、やはり確定申告をしなくても問題はありません。
つまり、経費の金額は別として税務署サイドからみると、本業の個人事業主であれば売上高48万円、副業の売上高が20万円あれば、理論上は調査対象になり得ます。
個人事業を本業として行っていて青色申告であれば、赤字であっても損失申告することによって翌年以降の所得から赤字を控除できるので申告しているでしょうが、副業の申告漏れは多く見られ危険なものです。
売上高48万円という境目
売上高が48万円を超えてくると、もう一段階調査の危険度が高まってしまいます。それというのも、所得が48万円を超えてしまうと本人だけではなく、扶養家族として扶養控除をしている方の税額も高くなるからです。
税務署も暇ではないので、一度の調査で出来だけ多くの税額を徴収できる「タイパ」を考えていることを考えておきましょう。
無申告であれば論外といえますが、売上高がもっとあった場合に経費を引いて所得が48万円を少し下回るような申告も注意が必要です。
その場合、経費の中身に個人的支出があって少し否認されただけで、やはり同じような結果を招いてしまいます。
税務署として旨味の多い売上高1,000万円前後の調査
売上高が1,000万円を超えると消費税の課税義務が生じるので、個人事業主としても1,000万円をちょっと超えるくらいなら1,000万円以下に抑えた方が得をするというジレンマが生まれます。
実際に仕事の手を止めて1,000万円以内に抑えているなら問題はないのですが、それでも税務署から見れば「怪しい」と認識されるでしょう。
まず肝に銘じてほしいことは、「税務署はあなたの収入を把握している」という事実を知っておくことです。
個人事業主へ仕事を依頼している法人や事業者は、その支払金額を「支払調書」として税務署へ報告しています。
売上を除外するような行為は、重加算税の賦課対象となる「仮装隠蔽行為」に当たるので、絶対に避けるべき行為です。
売上高だけではない税務調査が入るポイント
個人事業主に調査が入るのは売上高の過多は影響するのですが、本来は無申告や過少申告が疑われている場合がほとんどです。
その点を踏まえて、売上高以外に税務調査が入る可能性の高いポイントをしっかり把握しておきましょう。
国税庁レポートと重点調査項目
毎年公開されている国税庁レポートを見ると、税務調査に対して何を重視しているのかが確認できます。
納税は憲法で定められた義務なので、当然のような「適正・公平な課税の推進」というテーマが常に重点項目として掲げられています。
それ以外にも、最新の「国税庁レポート2023」では、以下のような重点調査項目が掲載されました。
- 消費税の適正課税の確保のため、十分な審査と調査を実施
- 資産運用の多様化・国際化を念頭に置いた調査を実施
- 資料情報を活用し、的確に無申告者を把握
- シェアリングエコノミー等新分野の経済活動への的確な対応
これらに該当するような方は特に注意が必要で、個人事業主に関していえば消費税が大きな影響の出やすい内容かもしれません。
また、副業をしている会社員については特に注意が必要で、シェアリングエコノミー等新分野の経済活動とは、副業のことを指しています。
無申告者に対しては罰則の強化だけではなく、税務調査後に提出する経費、いわゆる「後出し経費」を認めないという税制改正がされています。
つまり無申告で税務調査に入られた場合、「売上高=所得」と見なされてしまい、多額の追徴課税されることになるでしょう。
開業後3年過ぎたら注意しよう
個人事業主として開業後3年を過ぎたら「そろそろ税務調査があるかも」と考えておいた方が良いでしょう。
もちろん適正な確定申告をしていれば税務調査を恐れる必要はないのですが、個人事業主の場合は経費が適正なのか、または個人的な支出なのかグレーゾーンの判断で揉めることが多く見られます。
税務調査は3年分遡って調べることが一般的で、先ほども言ったとおりタイパを重視した調査となります。
ただ、調査の結果大きな問題が見つかれば5年、さらに悪質な場合は7年も遡るので、やましいことをしている場合は長いこと泳がされた挙句調査に入られることも考えられるので、心配なときは税理士などの専門家に相談すると良いでしょう。
まとめ
個人事業主に税務調査が入る可能性について、主に売上高を中心に考察してきましたが、事業をしている以上は常に税務調査は念頭に置くべきです。
近年は副業をしている方が、税への理解不足による無申告といったケースが増えており、まず知っておくべきは「収入があれば所得税が掛かる可能性がある」といいうことでしょう。
税務調査を受ければ、知らなかったでは済まないので、不安がる前に専門家へ相談するべきです。
税理士法人サム・ライズ
代表税理士。
大原簿記学校法人税税法課専任講師を得て平成5年12月税理士試験合格、平成8年1月林税理士事務所を開業、平成16年12月税理士法人サム・ライズを設立。
税理士法人サム・ライズは、税理士顧問・創業支援・相続税・資金調達・無申告・税務調査立ち合い・クラウド会計・社会福祉法人など数多くのサービスで中小企業の皆様をサポートいたします。
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