青色申告と白色申告の違い徹底解説【2021年からの変更点も】
目次
こんにちは、埼玉県川越市の税理士法人サム・ライズの林公士郎です。
確定申告には、「青色申告」と「白色申告」の2種類があり、一般的には青色申告のほうが白色申告よりも申請方法が難しいという点が認知されています。
実際に青色申告のほうが白色申告よりも申告のために準備すべきことが多いのですが、その分、白色申告よりも大きなメリットがあります。
そこで今回は、青色申告と白色申告のメリット・デメリットや必要な書類の違いについてわかりやすく解説します。また、2020年度分(令和2年度分)の申告より、青色申告特別控除要件についての変更があるので、あわせてご紹介します。
さらに、確定申告の期限は、通常であれば毎年3月15日ですが、新型コロナの影響で2021年の確定申告の期限は、4月15日まで延長となりました。贈与税及び個人事業者の消費税の申告・納付期限も同様に4月15日が期限となります。
青色申告と白色申告の違い
確定申告は「青色申告」か「白色申告」どちらかの方法で行います。
「青色申告」の大きな特徴は、
・税務署への開業届が必要
・事前に青色申告の承認申請が必要
・最大で65万円の特別控除を受けたい場合は、正規の簿記に基づいた複式簿記で帳簿をつけ、なおかつe-Taxでの申告が必要
という点です。
一方「白色申告」の場合は、事前の申請などは必要ありません。また、帳簿は必要ですが、簡易帳簿が認められているため青色申告よりは帳簿付けが比較的簡単です。
青色申告を行いたい場合は、事前の申請などを指定期間内に行う必要があるので注意してください。
白色申告と青色申告それぞれに必要な書類と保存期間
「青色申告」と「白色申告」では、税務調査を受けた際に対応ができるよう、保存しておかなければいけない書類と、その書類の保存期間が異なります。
以下は国税庁が案内している帳簿書類の保存期間です。
■青色申告の必要な書類と保存期間
【帳簿】
仕訳帳、総勘定元帳、現金出納帳、売掛帳、買掛帳、経費帳、固定資産台帳など(保存期間:7年)
【書類】
決算関係書類:損益計算書、貸借対照表、棚卸表など(保存期間:7年)
現金預金取引等関係書類:領収証、小切手控、預金通帳、借用証など(保存期間:7年。ただし前々年分所得が300万円以下の場合は5年)
その他の書類:取引に関して作成し、又は受領した上記以外の書類(請求書、見積書、契約書、納品書、送り状など)(保存期間:5年)
■白色申告の必要な書類と保存期間
【帳簿】
収入金額や必要経費を記載した帳簿(法定帳簿)(保存期間:7年)
業務に関して作成した上記以外の帳簿(任意帳簿)(保存期間:5年)
【書類】
決算に関して作成した棚卸表その他の書類(保存期間:5年)
業務に関して作成し、又は受領した請求書、納品書、送り状、領収書などの書類(保存期間:5年)
令和2年分(令和3年申告分)から変更!青色申告特別控除要件とは
令和2年分(2020年分)の確定申告から、青色申告特別控除額に変更があります。
青色申告は、最大で65万円の特別控除が受けられるのが魅力ですが、税制改正によりこれまで65万円の特別控除を受けられていた方法だけでは控除額が「55万円」に変更されました。
65万円の特別控除を受けるには、e-Taxによる青色申告、もしくは電子帳簿保存を行う必要があります。
突然ハードルが上がったように感じるかもしれませんが、単純にインターネットで手続きを行えば良いということなので、それほど大変な変更ではありません。e-Taxは、インターネットで国税申告や納税、申請・届出ができるシステムです。
以下の国税庁のページで案内しているので、参考にしてみてください。
白色申告のメリット
白色申告のメリットは、簿記についての知識がなくても簡単に申告ができる点です。
帳簿づけは必要ですが、単式簿記で良いので確定申告も簡単です。
単式簿記とは、取引を1つの勘定科目に絞って記載する方法です。収入の合計から支出の合計を引いて、現金がいくら増減したかがわかる記載方法で、家計簿などを付けるイメージです。
とにかく税金控除などのメリットは必要ない、簡単に済ませたいという場合は、白色申告を選ぶので良いでしょう。
白色申告のデメリット
白色申告は簡単に確定申告が行えるという点以外、実はあまりメリットはありません。
特別控除が受けられない
青色申告では受けられる特別控除について、白色申告では受けることができません。
また、白色申告も帳簿の記帳と保存が平成26年より義務付けられたことにより、青色申告で受けられる10万円の特別控除の要件と実質的には違いがなくなりました。
そのため、青色申告を行う方法に切り替えた方がメリットがあると言えるでしょう。
赤字を繰り越すことが出来ない
白色申告では、赤字を3年間繰り越すことができないため、青色申告よりも税負担が重くなります。
青色申告は赤字を3年間繰り越すことができるため、こういった面からも青色申告のほうがメリットは大きいと言えます。
青色申告のメリット
白色申告と比較すると、青色申告の方が申告の手間はかかりますが、それを差し引いてもメリットは大きいと言えます。
最大で65万円の特別控除が受けられる
青色申告の最大のメリットは、なんといっても最大65万円の特別控除が受けられることです。
特別控除とは、65万円を収入から差し引くことができるものです。65万円を収入から差し引くと、その分所得を低くおさえることができるため、納める税金の削減につながります。
この青色申告の特別控除は、「事業所得」「不動産所得」の、いずれかの個人事業主である必要があります。
そして、青色申告の特別控除額は申告の方法により10万円・55万円・65万円いずれかの額の控除額が適用されます。
■65万円の特別控除を受けるための条件
「事業所得」もしくは「不動産所得が事業的規模」である場合に受けることができます。
不動産所得の事業規模の目安は、アパートやマンションの貸与部屋数が10部屋以上ある、あるいは、貸与可能な戸建てを5棟以上ある場合となります。
この要件を満たしていない場合は、青色申告でも10万円の特別控除対象となります。
また、帳簿は複式簿記である必要があります。
複式簿記とは、取引内容について一つ一つ複数の科目で記帳する方式です。
取引詳細を記帳することで、取引の流れが把握できると共に、財産残高や収支をすべて記録することができるため、事業を行う場合は複式簿記のほうがお金の把握がしやすく良いでしょう。
複式簿記についての知識がなくても、確定申告用のソフトなどを利用すれば簡単に入力できるものも多いので調べてみると良いでしょう。
また、前述したとおり、令和2年分(2020年分)の確定申告から青色申告特別控除額に変更があり、65万円の控除を受けるには上記に加えてe-Taxによる青色申告、もしくは電子帳簿保存を行う必要があります。
■55万円の特別控除を受けるための条件
令和2年分(2020年分)より、あらたに追加となった特別控除額です。
基本的には上記記載の65万円の特別控除を受ける場合の内容と同じです。
違いは、e-Taxを使用して申告を行うかどうかです。e-Taxを使用せず紙出力した申告書で申告を行う場合は、55万円しか特別控除を受けられなくなるので注意してください。
■10万円の特別控除
不動産所得はあるが、事業規模と認めてもらえない場合、あるいは「山林所得」の場合は、10万円の控除となります。
例えばマンションの部屋を1室だけ貸与していて収入があるなどの場合は、10万円の特別控除を受けるかたちとなります。
ただし、帳簿は複式簿記である必要がある点を認識しておきましょう。
赤字を3年間繰り越すことができる
青色申告は、3年間赤字を繰り越すことができます。赤字の繰り越しができるメリットは、赤字の年と黒字の年で利益を分散することができるという点です。
基本的に利益が多く出た年は、その利益にあわせて税金も多く支払うことになります。しかし黒字の出た年の利益を赤字の年に繰り越すことにより利益を分散することができるため、税金の支払いをトータルで安くおさえることができるのです。
例えば1年目に200万円の赤字、2年目に100万円の赤字が出たが、3年目で300万円の黒字が出た場合は、3年目の300万円の黒字分を1年目と2年目に繰り越すことで3年目の事業所得をゼロにできます。これによりこの年の納税金額をおさえることができるというわけです。
家族への給与は専従者給与として全額経費にできる
白色申告の場合、「生計を一にする配偶者その他の親族であること」に一致していれば、家族への給与を専従者給与として配偶者は86万円、それ以外の親族は50万円を差し引くことができます。
一方、青色申告の場合は、妥当性のある金額であれば上限なく専従者給与としてすべてを必要経費に算入できます。
そのため、もし家族や親族などに給与を支払っている場合は節税になるため、青色申告のほうが得と言えるでしょう。
ただし、以下の条件を満たしていないと対象外となるので注意してください。
■専従者給与対象の条件
・対象の家族が別の仕事で安定的に収入を得ていないこと。
・当該年度の12月31日に15歳以上であり、なおかつ他の仕事をしていないこと。ただし、15歳以上でも中学生の場合は対象外となる。
・青色申告者の事業に、6か月以上専従していること。単発の業務などを含む6ヶ月未満の業務では対象外となる。
なお、青色事業専従者給与を利用するには、事前に「青色事業専従者給与に関する届出書」を税務署に提出しておく必要があります。
届出の提出期限は、青色事業専従者給与を支給する年の3月15日ですが、例外として、1月16日以降に事業を開始した場合は事業開始日から2ヵ月以内が提出期限となります。
30万円未満は減価償却資産として一括経費にできる
減価償却資産とは、事業で使う減価償却資産をその資産が使用可能と定められている期間に応じて分割し、毎年経費計上する会計処理のことを指します。
自動車やパソコンなど、年月が経つにつれ価値が失われていくものが減価償却資産の対象となります。
減価償却資産は、取得価額が10万円以上、使用可能年数が1年以上のものとされています。
それぞれの使用可能年数となる「耐用年数」については国税庁にて定めているため参考にしてください。
減価償却資産を一括で原価償却できるのは10万円以下で取得したものに限られているため、例えばパソコンを10万円以上で購入した場合、購入した年に全額を経費計上することはできません。
耐用年数に応じた年数で、毎年経費に計上する必要があります。
しかし青色申告の場合は、2006年4月1日~2022年3月31日までの期間で購入した減価償却資産で、なおかつ取得価額が30万円未満のものについては全額購入した年度に経費として計上することが可能です。
ただし、経費計上ができるのは、年間減価償却資産合計額が300万円までとされています。
購入期間指定と金額について注意すれば、同年内に経費計上を行うことができるので節税に役立ちます。
家賃や光熱費の一部を経費にできる場合がある
白色申告の場合、家賃や光熱費などを家事按分する条件が、「業務・仕事の部分の割合がおおむね50%超の家事関連費だけが対象」とされています。
そのため副業などの仕事を自宅で2~3時間するレベルでは、大抵のものは対象にはならないと言えます。
一方、青色申告の場合は、家事関連費のうち「事業相当額を合理的に区分できる金額」については必要経費とすることができます。
そのため、例えば自宅を仕事場として兼用している場合は、部屋の広さのうち何割を仕事場として利用しているか、何時間仕事をしているかなど、明確に説明できる割合分を必要経費として計上することができるメリットがあります。
そのほか光熱費やWi-Fi費、携帯電話費など、一つ一つは小さな金額でも、それぞれを足し合わせるとそれなりの経費として計上できるのでお得です。
青色申告のデメリット
白色申告よりも青色申告のほうが圧倒的にメリットがある分、白色申告を比較するとやや面倒な点があるので、その部分をデメリットとしてご紹介します。
指定期限までに「青色申告承認申請書」の提出が必要
青色申告を行うためには、「個人事業の開業・廃業等届出書」という開業届と、「青色申告承認申請書」の申請を所轄の税務署に行う必要になります。
ただし、「青色申告承認申請書」は、状況により提出期限が異なります。期限に間に合わなかった場合、青色申告での申告が翌年分からとなってしまうので注意してください。
■すでに開業届は提出していて、次の確定申告を白色申告から青色申告に変更したい場合
青色申告を適用したい年の3月15日までに「青色申告承認申請書」を提出する
■1月1日~1月15日までに開業をする場合
青色申告を適用したい年の3月15日までに「青色申告承認申請書」を提出する
■1月16日以降に開業する場合
事業開始日から2か月以内に「青色申告承認申請書」を税務署に提出する
「個人事業の開業・廃業等届出書」と「青色申告承認申請書」は、それぞれ国税庁のホームページからダウンロードできます。
65万円の控除を受ける場合は複式簿記での帳簿が必要
前述したとおり、青色申告を行う最大のメリットといえる65万円の控除を受ける場合は、複式簿記での帳簿が必要となります。
手書きで行う場合は、簿記の知識がないと難しいでしょう。しかし今はオンラインで利用できるクラウド型の会計ソフトもあるので、それらを利用することで簡単に作成ができます。
会計ソフトは安いものであれば年間1万円前後で利用でき、これも経費として計上できるので使わない手はないでしょう。
青色申告と白色申告の違い徹底解説【2021年からの変更点も】まとめ
青色申告と白色申告の違いについて解説してきましたが、いかがでしたでしょうか?
白色申告のほうが簡単に申告を行えるように見えますが、青色申告のほうがメリットは大きいため、青色申告を適用できる業務を行っている場合は、青色申告を利用することをおすすめします。
なお、確定申告は、誤りなく、期限内に申告を行う必要があります。申告内容に誤りがあったり、期限を過ぎてからの申告となってしまった場合はペナルティとして追加課税をしなければいけなくなる場合もあるので注意してください。
青色申告は会計ソフトを使用して行うこともできますが、税理士に相談をして対応をしてもらうことも可能です。
税理士法人サム・ライズでも確定申告についてのご相談をお受けしています。オンライン無料相談も行っていますので、相談したいことがあればお気軽にお問い合わせください。
なお、確定申告の期限については、今年度のように今後も変更される場合もあるので、毎年しっかりと確認を行うようにしましょう。
税理士法人サム・ライズ
代表税理士。
大原簿記学校法人税税法課専任講師を得て平成5年12月税理士試験合格、平成8年1月林税理士事務所を開業、平成16年12月税理士法人サム・ライズを設立。
税理士法人サム・ライズは、税理士顧問・創業支援・相続税・資金調達・無申告・税務調査立ち合い・クラウド会計・社会福祉法人など数多くのサービスで中小企業の皆様をサポートいたします。
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