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インボイス制度のルール改定?!電子帳簿保存法や領収書の取扱いなどの変更ポイントを税理士が解説します。
目次
制度開始以降やることが多くなりすぎて事業者を悩ましているインボイス制度ですが、2023年12月14日に公表された「令和6年度税制改正大綱」の影響でルールの改定が行われました。
本記事では、電子帳簿保存法の取扱いに引きずられるように緩和された、インボイス制度の変更ポイントを税理士が解説します。
インボイス制度が緩くなった背景と注意点
半ば見切り発車のようにスタートしたインボイス制度は、事業会社の経理業務や関与する税理士事務所にも大きな負担となっています。
今回、インボイス制度の運用について「緩和措置」とも見えるルール改定があった背景と、運用における注意点を考えてみましょう。
電子帳簿保存法の緩和措置
1998年(平成10年)7月に施行された「電子帳簿保存法」は、本来所得税法、法人税法、消費税法等に規定されている帳簿書類を納税地において書面で保存することが義務づけられているものを、一定の要件のもと電子保存を認めるというものでした。
それが2022年1月1日以降(2年間の猶予期間があり実際には2024年1月1日以降)、なぜか電子取引データは電子的な方法で保存しなくてはならないと義務化されたことはご存知でしょう。
表向きには「経理業務のペーパーレス化を促進し、業務効率および企業の生産性を向上する目的」とされていますが、皆さんの実感としては負担だけが増えていると思います。
最近は電子請求書等も一般的になり、それをPCなどに仕訳保存する作業も一苦労で、むしろ生産性が下がっているのが現実です。
今回の改正では下記要件に該当する場合に限り、電子取引データを書面に出力し、かつ電子取引データをダウンロードできる状態にしておけば、保存時に満たすべき要件は不要となりました。
- 電子取引データ保存への移行ができなかった相当の理由がある
- 税務調査などの際に、電子取引データのダウンロードの要請およびその電子取引データをプリントアウトした書面の提示・提出の求めにそれぞれ応じることができる状態である
これで劇的に業務負担が減るわけではありませんが、一定の緩和効果はあるでしょう。
インボイス制度の変更点
電子帳簿保存法は微妙にインボイス制度とも関係が深く、銀行の振込手数料などインボイスの取得と保存が面倒な例が多く発生しました。
詳しい具体例は後で解説しますが、簡単に言えば「全てのインボイスを保存する必要がなくなった」という変更です。
正直な感想としては、インボイス制度開始前から「そこまで必要なの?」という疑問点が少しだけ解決されたといったところでしょうか。
電子帳簿保存法に関係するもの以外でも、より現実的な変更が行われているので、業務負担を軽くするためにも良く理解しておくことをオススメします。
法定保存期間との兼ね合いに注意しましょう
電子帳簿保存法の緩和措置によって、多くの書類が従来どおり紙ベース保存で済むようになるのですが、これには大きな注意点があります。
例えばAmazonなどのECサイトで物品を購入するような場合、請求書は販売者が電子的に発行します。
本来であればそれを電子保存すべきところ、緩和措置によって「請求書を税務調査官の求めに応じていつでもダウンロードできる状態」であれば良いこととされました。
では何に注意が必要かといえば、購入先事業者によって必要書類のダウンロード可能期間が異なるということです。
緩和措置であっても、7年という会計書類の法定保存期間(繰越欠損控除を受ける法人にあっては10年)を順守しなければなりません。
つまり税務調査を受けたときに、すでにダウンロード可能期間が過ぎて書類の提示が出来ないという事態を避けることが求められます。
考えようによっては、面倒でも全ての電子取引データは電子保存しておいた方が無難なのかもしれません。
インボイス制度運用の変更点
インボイス制度における要件についても、いくつかの点で実際の取引や業務に配慮したと思える変更点があります。
ここからは国税庁が明示したインボイス制度運用の変更点について見ていきましょう。
高速道路でETCを利用したときのインボイス
高速道路のETCクレジットカード利用に関して、当初は「クレジットカード会社から受領するクレジットカード利用明細書は、通常売手の交付する書類ではなく、取引内容等の記載もないため、一般的に、インボイスには該当しない」とされていました。
しかし高速道路の利用頻度が高い事業者にとって、ETC利用照会サービスでダウンロードした「利用証明書(簡易インボイス)」の保存は事務負担が大きいものです。
そうした声に対応し、高速道路でのETC利用に関して「全ての高速道路の利用に係る利用
証明書の保存が困難なとき」は、以下の2点を保存することでインボイスの要件を満たすことになりました。
- クレジットカード会社から受領するクレジットカード利用明細書(個々の高速道路の利用に係る内容が判明するものに限る)
- 任意の一取引(複数の高速道路会社等の利用がある場合、高速道路会社等ごとに任意の一取引)に係る利用証明書をダウンロードし、併せて保存
これでもまだ事務負担は大きいと思いますが、まずは半歩前進といった取扱いの変更です。
自動販売機特例の見直し
インボイス制度において、「3万円未満の公共交通機関による旅客の運送」や「適格請求書の交付義務が免除される3万円未満の自動販売機および自動サービス機からの商品の購入」などは、一定の事項を記載した帳簿を保存するだけで、例外的に仕入税額控除の適用が可能です。
ところが、その「一定の事項」というのが非現実的な内容で、多くの批判を受けていました。
それというのも自動販売機でジュースを買った場合、自動販売機がどこに所在しているのか住所を詳しく記載することが求められていたのです。
それが今回の改定では、住所の記載は求めないこととされ、アホらしい作業が一つ無くなることになりました。
この変更は「自動販売機特例」だけではなく、入場券のような物品切手等で引換給付の際にインボイスが回収される取引(回収特例)にも適用されます。
銀行手数料とインボイス
これも高速道路のETC利用に似たものですが、事業を行っていると銀行からの振込などが多く発生します。
近年ではほとんどの事業者がWEBバンキングを利用していて、制度開始に当たって全ての取引についてインボイスの保存が求められていました。
民間銀行もこれに備えた準備をしていたのですが、あまりにも煩雑な作業になるため、以下の2点の書類のみ保存することで要件を満たすこととされました。
- 金融機関ごとに発行を受けた通帳や入出金明細等
- その金融機関における任意の一取引(一の入出金又は振込み)に係る適格簡易請求書を併せて保存
これも真っ当な変更だといえますが、令和11年9月30日までの期間については「一定規模以下の事業者に対する事務負担の軽減措置」もあるので、一度確認しておくことをオススメします。
まとめ
混乱や批判が続くインボイス制度ですが、導入が決まってから2割特例等の激変緩和措置や、今回のルール改定などが行われています。
これは制度だけではなく、国民負担が高まり続けていることへの不満や、最近であれば政治家の裏金問題へ対する「税の不公平感」が背景にあるのかもしれません。
つまりインボイス制度の不備について、もっと声を上げることが一層のルール緩和に繋がる可能性があるので、今一度インボイス制度について考えてみることが重要です。
税理士法人サム・ライズ
代表税理士。
大原簿記学校法人税税法課専任講師を得て平成5年12月税理士試験合格、平成8年1月林税理士事務所を開業、平成16年12月税理士法人サム・ライズを設立。
税理士法人サム・ライズは、税理士顧問・創業支援・相続税・資金調達・無申告・税務調査立ち合い・クラウド会計・社会福祉法人など数多くのサービスで中小企業の皆様をサポートいたします。
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