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【インボイス制度】駐車場オーナーの注意ポイント、対策を税理士が解説します。
目次
駐車場のオーナーにとってもインボイス制度は無縁ではありませんが、どのような点に注意すれば良いのでしょうか。
本記事では、駐車場経営とインボイス、そして消費税の関係について、税理士が詳しく解説します。
インボイス制度と駐車場オーナーへの影響
インボイスとは、正式には「適格請求書」というもので正確な適用税率や消費税額等を伝える書類です。
インボイス制度下では、このインボイスがなければ消費税の仕入税額控除が受けられなくなるので、事務手続き上重要な意味を持っています。
では、インボイス制度が駐車場オーナーへ与える影響について考えてみましょう。
駐車場と消費税の関係
一口に駐車場の貸し付けといっても、その形態によって消費税の課税されるものと非課税のものがあります。
これは土地の貸し付けが非課税取引とされているからで、何も手を加えていない土地を駐車場用地として貸している場合がこれに該当します。
ただし1ヶ月未満の短期貸し付けは非課税とはされないので、そのようなケースは区分が必要です。
一方で舗装工事を施したり、コインパーキング設備が設置されたりした駐車場は、土地の貸し付けではなく「駐車場施設の貸し付け」となり消費税が課税されます。
インボイス制度と対応が必要なケース
駐車場オーナーの方は、インボイス制度の開始に当たり以下のいずれかのパターンのなっているはずです。
- すでに消費税の課税事業者である
- 駐車料施設の貸し付けであるが収入が1,000万円以下なので免税事業者である
- 青空駐車場の貸し付けなので消費税が課税されない
このうち3については、インボイス制度が始まったからといって対応する必要はありません。
1の「すでに課税事業者である」ケースでは、インボイスの発行が必要なのか否かを考えなければなりません。
駐車場の利用者が事業者である場合は、利用者側からインボイスの発行を求められる可能性が高くなるでしょう。
2のケースでも、事業者の利用が多いとインボイスの発行を求められると思いますが、いずれの場合でも適格請求書発行事業者の登録をしなければなりません。
インボイス制度に対応しなかったときのリスク
駐車場のオーナーが消費税の課税事業者であっても免税事業者であっても、インボイス制度に対応しないと、消費税の負担増を避けたい借主が退去する可能性がある点には留意が必要です。
借主の立場で考えると、駐車料金に関わる消費税額が仕入控除できないため、その分だけ納税負担が大きくなってしまいます。
駐車場オーナーがインボイス制度へ対応するときの注意点
駐車場のオーナーがインボイス制度へ対応する場合、単に適格請求書発行事業者の登録をするだけでは済まない注意点があります。
いたずらに結論を先延ばしすることはオススメできませんが、少なくともインボイス制度における駐車場のオーナーに必要なポイントは押さえておきましょう。
令和8年(2026年)9月30日までは仕入税額相当額の80%、令和11年9月30日までは仕入税額相当額の50%が控除できる経過措置がありますが、収入減のリスクを避けるためには早めに対応した方が良いでしょう。
インボイス登録すると消費税の納税しなければならない
免税事業者であった駐車場のオーナーがインボイス登録すると、基準年度の課税売上高に関わらず消費税の課税事業者になってしまいます。
つまり単純に税負担が増えることになるので、それが駐車場経営に及ぼす影響を考慮することが必要です。
もし今からインボイスに登録する場合、「登録日から2年を経過する日の属する課税期間」まで納税義務があるいう「2年縛り」があるので、すぐに免税事業者へ戻れません。
安易な判断をせず、インボイス登録の是非については税理士などの専門家に相談しましょう。
月極駐車場とインボイスの発行
駐車場でも月極駐車場の場合は、領収証(インボイス)を発行するときに下記の事項を記載することが必要です。
- 適格請求書発行事業者(貸手側)の氏名または名称
- 登録番号
- 取引した年月日
- 取引の内容
- 税率ごとに区分して合計した金額および適用税率
- 税率ごとに区分した消費税額等
- 書類の交付を受ける事業者(借手側)の氏名または名称
一般的には契約書を交わし口座引き落としや、借り手からの振込で駐車料を受領していると思います。
その場合は、「インボイスの要件の一部を記載した契約書」を使用して契約すると、借り手側は振込等の控えと一緒に保存することで仕入税額控除の要件を満たします。
設備改修が必要なコインパーキング
コインパーキングを経営している場合、インボイスに代え「簡易インボイス」の発行が認められます。
ただ、簡易インボイスといっても下記事項の記載が必要です。
- 適格請求書発行事業者(貸手側)の氏名または名称
- 登録番号
- 取引した年月日
- 取引内容(軽減税率の対象品目である旨)
- 税率ごとに区分して合計した金額(税抜または税込)
- 税率ごとに区分した消費税額等
- 税率ごとに区分した消費税額等※または適用税率
相手の氏名や名称を記載しない以外は、ほとんどインボイスと変わらないのですが、駐車設備によっては機械の改修に費用が発生します。
つまり、改修費用とインボイス対応しなかった場合のリスクを比較して判断することになります。
なお、コインパーキングの領収証は、インボイスの交付義務が免除される「自販機特例」の対象ではないので注意しましょう。
駐車場の利用者によっては変わってくる対応
駐車場の利用者が一般個人の場合は、インボイスに対応しなくても利用者減などの影響はありません。
問題は相手が事業者でなおかつ消費税の課税事業者の場合で、インボイスへの対応を求められる、あるいは利用を止められる可能性があります。
悩ましいのがコインパーキングを営んでいる場合で、利用者が減ったとしてもそれがインボイスへ未対応であることが理由なのか判然としません。
経過措置があるうちは大きな影響がなくても、じきに目に見えて利用が減る可能性があることを認識しましょう。
悩んでいるなら専門家へ相談
インボイス制度が駐車場オーナーへ与える影響は、営業形態や規模、利用者像によって大きく変わってくるものです。
また、インボイス制度へ対応するにしても少なくない出費と税負担が生じるので、非常に悩ましい問題だといえます。
最終的には「損得勘定」の話になるので、消費税だけではなく所得税など他の税金を含めた総合的な判断が必要です。
悩むくらいなら税理士などの専門家の助言を参考にして、最善の選択肢を探ってみましょう。
まとめ
インボイス制度は駐車場オーナーにとっても少なからず影響を与えており、少なくともプラスになる部分は皆無です。
考えようによっては、インボイス制度に未対応の駐車場に対する差別化になりますが、逆もまた然りといえます。
いずれにしても大事なことは、少しでも負担を増やさず収入を維持することなので、その点だけはしっかり考えましょう。
税理士法人サム・ライズ
代表税理士。
大原簿記学校法人税税法課専任講師を得て平成5年12月税理士試験合格、平成8年1月林税理士事務所を開業、平成16年12月税理士法人サム・ライズを設立。
税理士法人サム・ライズは、税理士顧問・創業支援・相続税・資金調達・無申告・税務調査立ち合い・クラウド会計・社会福祉法人など数多くのサービスで中小企業の皆様をサポートいたします。
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