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一人親方・建設業の確定申告・インボイスについての注意点を税理士が解説。
目次
2023年10月1日からスタートしたインボイス制度ですが、一人親方として建設業に従事している方にも大きな影響を与えています。
元請からの要請で適格請求書発行事業者へ登録した方も多いのではないでしょうか。
本記事では、そんな一人親方の確定申告とインボイスについての注意点を、税理士が分かりやすく解説します。
一人親方とインボイスへの登録
消費税の免税事業者だった一人親方が、適格請求書発行事業者へ登録した割合は正確には分かっていません。
ただあるアンケートによれば、6割以上の一人親方が登録をしたと思われます。
これを多いと見るか少ないと見るか、意見は分かれるでしょうが、登録した方と未だ登録をしていない方の、それぞれの理由を見てみましょう。
インボイス制度へ登録した理由
一人親方が免税事業者のメリットを捨てて、インボイス制度へ登録した理由は主に3つになります。
一番多いのが「元請から促された」や「インボイスについて問い合わせがあった」ことが理由です。
この深層には「仕事を失う可能性」を考えたためだと思われ、インボイス制度の悪評とシンクロします。
それ以外では、「今後のことを考えて登録した」や、「今後、売上が1,000万円を超えるため」といった理由が続きました。
まだインボイス制度へ登録していない一人親方
インボイス制度に登録した一人親方がいる一方で、まだ登録を見送っている方も少なからずいます。
その理由で多く聞かれるのが、「元請から何も言われていないから」という意見で、なぜ元請が何も発信していないのかは分かりません。
まだ80%控除の経過措置があるからなのか、建設業の人手不足の方が大変なためなのか、何かしらの理由が考えられます。
また登録していない一人親方の中には、「登録しなくても仕事を失うことはない」という方もおり、ここにも人手不足の影響が見てとれます。
一人親方の確定申告の注意点
もう何度も確定申告を経験している一人親方なら、改めて聞くまでもないことですが、一人親方の確定申告における注意点についてチェックしましょう。
もし何度も確定申告していたとしても、注意点を押さえておかないと税務調査で否認される可能性があるので、復習のつもりで目を通してください。
青色申告と白色申告
一般的には、一人親方として事業を始めるタイミングで、税務署に開業届を提出します。
これだけであれば税務署から送られてくる確定申告書の色は白で、白色申告として書類を作成することになります。
単式簿記の簡易的な帳簿で収支計算書を作成し、それと確定申告書だけが必要なので、非常に簡単なところがメリットです。
ただ、少しでも税負担を減らそうと思ったら、青色申告にする方が良いでしょう。
青色申告を選択する場合は、開業日から2か月内、または青色申告で確定申告する年の3月15日までに「所得税の青色申告承認申請書」を、所轄税務署長宛てに提出しなければなりません。
また、青色申告最大の特典である65万円の青色申告特別控除を受けるためには、複式簿記での記帳や電子申告が必要なので、面倒なことは税理士などへ依頼するのがオススメです。
経費算入の注意点
一人親方の事業で経費として認められる支出は、基本的に事業のため必要なものとなります。
作業で使う道具代や作業着・軍手などの消耗品などがこれに該当しますが、難しいのは私的なものと被る支出です。
例えばスマホ代は、仕事のやり取りでも使うし個人的にも使うものですし、車に関する支出も同様でしょう。
これらの支出は、仕事とプライベートでも使用割合を大まかにでも算出して、仕事用の金額を按分して経費にします。
また白色申告の場合、家族に給与を支払っても経費にならないので、注意が必要です。(青色申告の場合でも、届出が必要になります)
建設業の許可を受けるためにも重要な確定申告
建築一式工事で税込1,500万円以上の請負、もしくは木造建築工事で延べ床面積が 150平方メートル以上の工事を行う場合、「建設業の許可」が必要になります。
これから仕事の幅を広げようと思えば取得しておくべき許可ですが、その申請にはいくつかの条件があり、その一つが「経営業務管理責任者としての経験を5年以上有する」というものです。
5年分の確定申告書があれば、これを証明する書類として使えるので、毎年申告の義務を果たすことは無駄ではありません。
一人親方のインボイスと注意点
もうすでに適格請求書発行事業者へ登録を済ませた方、またはこれからしようとする方に、インボイス制度と消費税の注意点を説明します。
理由はともあれ、インボイスへ登録した一人親方は、消費税の課税事業者になっているので、今までしなくてよかった消費税の確定申告をすることが必要です。
簡易課税の届出を行っていますか?
消費税の計算は煩雑な作業になり税負担も重くのしかかりますが、課税売上高が5,000万円以下の事業者の場合「簡易課税制度」を選択できます。
簡易課税は、「収入にかかる消費税-(収入にかかる消費税×みなし仕入率)」で計算できるので、事務にかかる労力を大幅に減らすことができるのがメリットです。
また、一人親方の場合ほとんどのケースで簡易課税の方が、本則課税より納税額が少なくなります。
国税庁が定めるみなし仕入れ率は、一人親方の場合70%(第三種事業)か60%(第四種事業)となり、役務の提供がメインの場合は後者です。
簡易課税を選択するときは、その課税期間の初日の前日までに、「消費税簡易課税制度選択届出書」を納税地の所轄税務署長に提出する必要があるので、決して忘れないようにしましょう。
令和8年(2026年)までは2割特例
免税事業者だった一人親方がインボイスに登録して消費税の課税事業者になった場合、令和8年分の消費税の確定申告までは、「収入にかかる消費税」に2割を納税する経過措置が設けられています。
これは届出などの必要はなく、消費税の確定申告書に記載されている「税額控除に係る経過措置の適用(2割特例)」欄にチェックを入れるだけです。
ただ付表の記載など、慣れていないと面倒な作業ではあるので、税理士などの専門家の力を借りることを検討しましょう。
収める消費税額も事業所得の経費
今まで支払う必要のなかった消費税を納付しなければならなくなるインボイスへの登録ですが、この消費税額は事業所得の必要経費になります。
所得税と消費税は別々に計算するのですが、こんなところで連動しているのですね。
うっかり経費に入れ忘れないように注意しましょう。
まとめ
国土交通省が推計した「一人親方の推計人数」によると、建築技能者総数324万人のうち一人親方が51万人だとされており、インボイス制度が少なからず影響があることが容易に想像できます。
高齢化も進んでいることから、インボイス制度導入をきっかけとして引退される一人親方もいるようです。
ただ、元請事業者との関係から今は言われていなくても、どこかで向き合わなければならない制度なので、態度を決めかねている方は一度専門家へ相談してみることをオススメします。
また、インボイス制度のスタートから、大手建設業者を中心に一人親方の直接雇用化も進んでいるといわれているので、仕事のあり方を見直すチャンスなのかもしれません。
税理士法人サム・ライズ
代表税理士。
大原簿記学校法人税税法課専任講師を得て平成5年12月税理士試験合格、平成8年1月林税理士事務所を開業、平成16年12月税理士法人サム・ライズを設立。
税理士法人サム・ライズは、税理士顧問・創業支援・相続税・資金調達・無申告・税務調査立ち合い・クラウド会計・社会福祉法人など数多くのサービスで中小企業の皆様をサポートいたします。
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