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【不動産業向け】2024年最新のインボイス対策を税理士が解説!
目次
2023年10月1日から運用が始まったインボイス制度ですが、この制度の建前は「取引の正確な消費税額と消費税率を把握すること」とされています。
精度の是非はさて置いて、インボイス制度が不動産業にどのような影響を与え、その対策はどうすべきかについて、最新の情報を踏まえて税理士が解説します。
インボイス制度の内容と不動産業への影響
不動産業は、不動産の売買・交換や賃貸・管理などを行う業種ですが、インボイス制度の開始で少なからず影響を受けているのではないでしょうか。
まずは、改めてインボイス制度の概要を押さえ、不動産業に関係する内容を整理してみましょう。
インボイス制度の概要
インボイス制度とは、消費税の課税事業者が支払った消費税額を受取った消費税から控除する(仕入税額控除)ための要件を変えるものです。
インボイス制度においては、仕入税額控除の要件として適格請求書発行事業者が交付する「適格請求書(インボイス)」の保存が必要になりました。
正式には「適格請求書等保存方式」というものですが、以前の区分記載請求書等保存方式による領収書や請求書に、次の記載事項を追加しなければなりません。
1. 適格請求書発行事業者の登録番号
2. 税率ごとに区分した合計額および適用税率(税抜または税込)
3. 税率ごとに合計した消費税額
多くの消費税課税事業者の方は、すでに適格請求書発行事業者への登録を済ませ、インボイスを発行していることでしょう。
ただ、不動産業といっても様々な業態や規模があるので、いまだに対応に苦慮するケースも考えられます。
不動産業と消費税
不動産業に限った話ではありませんが、インボイス制度で最も大きな影響を受けるのは、それまで課税売上高1,000万円以下で「免税事業者」だったオーナー様や、そこと取引をしている事業者です。
ご存知のとおり、個人向けのアパートやマンションを経営している場合は、家賃収入などは非課税なので大きな影響はありません。
しかし一部に事業者向けの賃貸物件があったり、駐車場施設の貸し出しがあったりすると、それは消費税の課税売上です。
従来の区分記載請求書では免税事業者のオーナー様が発行する請求書等で問題なかったのが、インボイス制度では相手側に消費税の税負担を強いるような形になります。
また、あとで詳しく解説しますが高額の事業用建物等を取得する場合、消費税額も大きくなるので影響は心配になるでしょう。
少なくともインボイス制度は、不動産業にとって実務上の事務負担を増やし、ケースによっては大きな税負担を強いられる制度だといえます。
不動産業の業態による影響
不動産業といっても業態は様々で、インボイスの影響はより具体的に検討しなければ分からないものです。
ここでは不動産業を大きく4つに分けて、インボイス制度で受ける影響を考えてみます。
不動産賃貸業
賃貸用不動産を所有して、それを貸し出すことによって収入を得ている「不動産賃貸業」の場合、それが居住用物件なのか、それ以外なのかによって影響は異なります。
消費税においては、住宅の貸付は非課税とされているので、一般的にアパートやマンションの貸付に消費税は課税されません。
ただ、一つ気を付ける必要があるのは住宅の貸付であっても、貸付期間が1ヶ月未満の場合は消費税の課税取引になることです。
住宅以外の貸付については、土地の貸付を除いてほとんどが課税取引になり、インボイス制度の影響を大きく受けてしまいます。
店舗や事務所などの事業用の賃貸収入がある場合、借り手側からインボイスの発行を求められるでしょう。
もし対応しない場合、賃料の見直しを要求されるなどの影響も考えられるので、インボイス制度への登録なども検討することが必要です。
不動産仲介業
不動産仲介業は、不動産物件の仲介を行うことで手数料を受取り、消費税の課税取引となります。
もともと課税取引になる業態なので影響がなさそうですが、不動産仲介業者が仲介物件を斡旋してくれた個人などに「紹介料」を払うようなケースでは影響があるでしょう。
また宅建業免許のない一般事業法人などが、顧客紹介を反復して行っている事例もあります。
紹介料の支払い先がインボイスに対応していない場合、当然その分の仕入税額控除は受けられません。
不動産売買事業者
不動産売買は大きな金額が動く取引なので、インボイス制度影響が心配になる業態だといえます。
不動産でも土地の売買は非課税なので良いのですが、一点だけ注意が必要で。それは土地と建物の一括売却で、それぞれの売却額が明記されていない場合です。
このようなケースでも、土地と建物の譲渡対価を合理的に按分できれば認められるので、不安なときは税理士などの専門家に相談する事をおすすめします。
インボイス制度で問題になるのは、個人や免税事業者から建物などを購入するケースで、その場合の仕入税額控除はどうなるのでしょうか。
これは購入する不動産の目的によって違いがあり、自社で使用するための購入と、再販目的の納入では、仕入税額控除は変わります。
自社で使用するため購入する不動産の場合、仕入税額控除のためにはインボイスが必要です。
例えばオフィスビルを個人から購入するケースでは、消費税額分だけ取得価格が大きくなるので、結果的に利回り計算も変わってきます。
一方で不動産事業者が再販(転売)目的で購入する不動産は、インボイスが無くても100%仕入税額控除ができます。
インボイスにかかわる国税庁のQ&Aで、「帳簿のみの保存で仕入税額控除が認められる場合」として、以下のように回答されています。
「⑤ 宅地建物取引業を営む者の適格請求書発行事業者でない者からの建物(宅地建物取引業を営む者の棚卸資産に該当するものに限ります。)の購入」
引用:国税庁ホームページ
不動産の購入目的で消費税の負担が大きく変わるので、購入先を含めた慎重な検討が必要です。
不動産管理業とインボイス
不動産管理業を営んでいると、その不動産が事業用物件であればインボイスの発行を求められます。
不動産オーナーから管理を委託されている管理業者は、以下のいずれかの対応をすることが必要です。
オーナーがインボイスの登録事業者であれば、オーナーから発行してもらうか、管理業者が代理で発行するか選択できます。
後者のケースでは、管理業者がオーナーに代わってインボイスを発行できる「媒介者交付特例」も利用できるので、オーナーとよく相談してみましょう。
問題は不動産オーナーが免税事業者の場合で、オーナーに課税事業者になってもらう説得に失敗したら、結果的に消費税の負担を管理業者が被る結果となります。
これは管理業だけではなく、不動産を転貸するサブリース業でも同じことなので、難しいでしょうがオーナーに交渉するしかありません。
まとめ
ある意識調査によると、不動産業界のインボイスへの対応は他の業種より遅れているようです。
ただ、本記事でも解説したように取引内容によっては税負担が増したり、取引先を失ったりする可能性があります。
もうインボイス制度はスタートしていますが、その影響を慎重に検討し対応しておくことをおすすめします。
税理士法人サム・ライズ
代表税理士。
大原簿記学校法人税税法課専任講師を得て平成5年12月税理士試験合格、平成8年1月林税理士事務所を開業、平成16年12月税理士法人サム・ライズを設立。
税理士法人サム・ライズは、税理士顧問・創業支援・相続税・資金調達・無申告・税務調査立ち合い・クラウド会計・社会福祉法人など数多くのサービスで中小企業の皆様をサポートいたします。
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