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「重要性の原則」の適用を考えよう!
目次
こんにちは!
今日は重要性の原則について考えてみましょう。
社会福祉法人会計基準を読んでいると、随所に「重要性が乏しいものについては〜」という言葉が出てきます。
重要性が乏しいと判断するための具体的な判断基準はなんでしょうか?それが本日のテーマです。
会計基準においては、重要性の原則について次の様に規定されています。
【社会福祉法人会計基準】
第1章 総則
(会計原則)第二条
四 重要性の乏しいものについては、会計処理の原則および手続並びに財務諸表の表示
方法の適用に際して、本来の厳密な方法によらず、他の簡便な方法によることができ
ること。
【社会福祉法人会計基準の運用上の取扱い】
1 重要性の原則の適用について
重要性の原則の適用例としては、次の様なものがある。
(1)消耗品、貯蔵品等のうち、重要性が乏しいものについては、その買入時又は払出時に費用として処理する方法を採用することができる。
(2)保険料、賃借料、受取利息配当金、借入金利息、法人税等にかかる前払金、未払金、未収金、前受金等のうち重要性の乏しいもの、または毎会計年度経常的に発生しその発生額が少額なものについては、前払金、未払金、未収金、前受金等を計上しないことができる。
(3)引当金のうち、重要性の乏しいものについては、これを計上しないことができる。
(4)取得価額と債券金額との差額について重要性が乏しい満期保有目的の債券については、償却原価法を適用しないことができる。
(5)ファイナンス・リース取引について、取得したリース物件の価額に重要性が乏しい場合、通常の賃貸借取引に係る方法に準じて会計処理を行うことができる。
基準においては、「重要性の乏しいものについては簡便な方法によることができる」ということと、重要性の原則を適用して判断しても良いものの事例が書かれています。
では、その重要性が乏しいという判断はどの様にすれば良いのか、ですが、これが書かれているのが経営協から公表されている「社会福祉法人モデル経理規定細則」です。ここには下記の様に判断基準が示されています。
【社会福祉法人モデル経理規定細則 15】
(重要性の基準)
第1条 経理規程第 40 条第4項、第 54 条(注 30)、第 55 条、第 56 条第1項、第 58 条における重要性の判断は、財務諸表等の利用者が、財務諸表等に記載されたこれらの事項の情報に基づいて判断する場合において、誤りの無い判断ができるか否かを考慮して行う必要がある。
2 重要性の判断は、原則として個々の事例ごとに行われるが、個々の判断における恣意
性を排除するために、一定の基準を設け、明示することとする。
3 前項の基準は、第 1 項の原則に基づいて設ける必要があるが、通常、次に掲げる事項
を考慮して設定する。
①サービス活動収益に与える影響
②当期活動増減差額に与える影響
③資産の合計に与える影響
4 重要性の判定は、一次的には、前項の基準値に基づいて行うが、最終的な判断は、第1項に定める趣旨から、次に例示する事項等を考慮した上で行うものとする。したがって、金額が基準値に満たない場合あるいは金額を持たない項目であっても、質的に重要性が有ると判定される場合があることに留意する。
①当該年度の財政状態又は経営成績の異常性の有無。
②過年度の財政状態又は経営成績に与える影響
③臨時的又は異常な事象の発生を示す事項
④傾向値に影響を与える事項、増減差額をプラス(又はマイナス)からマイナス(又はプラス)に転換する事項
⑤開示項目あるいは開示内容の重要性
5 第 3 項に定める基準値は、法人の内外の環境の変化、業務内容の変化等に応じて、適宜見直しを行わなければならない。異常である場合には、サービス活動収益計、当期活動増減差額及び資産の部合計について、単に当年度における影響のみを考慮するのではく、過年度の数値を参考として正常な財政状態及び経営成績を算定し、それらも併せて考慮する。
ちょっと難しいですが、上記を読むと重要性の判断は3段階の判断が必要になります。
まず第1段階として、
①サービス活動収益に与える影響
②当期活動増減差額に与える影響
③資産の合計に与える影響
を考慮して一定の基準を設けることを規定しています。
なので、経理規定細則においてその基準値を記載する必要があります。
例えばこんな感じです。
①サービス活動収益×2%
②当期活動増減差額×10%
③資産の部合計×1%
例えば、法人において賞与引当金を計上するかどうか判断するときには、上記の規定に当てはめて判断します。
つまり、計算した賞与引当金の繰入金額が、「サービス活動収益×2%」相当額の範囲内であり、「当期活動増減差額×10%」相当額の範囲内であり、繰入後の賞与引当金残高が「資産の部合計×1%」相当額の範囲内であれば、一次的な判断としては賞与引当金の計上は不要となります。
第二段階の判断としての判断が、上記の「4」です。第1段階で基準値に満たない場合でも、質的に重要性がある場合には計上してくださいね、と書いています。
賞与引当金の例で言えば、第一段階の判断としては基準値に満たないけれど、賞与引当金繰入額は人件費の重要な科目であり、質的判断では重要な科目と言えるので計上する、という判断になります。
なお重要性の原則は、全ての会計処理に適用されるので、拠点区分の設定においても上記の基準が適用されます。
では本日はここまでです。
税理士法人サム・ライズ
代表税理士。
大原簿記学校法人税税法課専任講師を得て平成5年12月税理士試験合格、平成8年1月林税理士事務所を開業、平成16年12月税理士法人サム・ライズを設立。
税理士法人サム・ライズは、税理士顧問・創業支援・相続税・資金調達・無申告・税務調査立ち合い・クラウド会計・社会福祉法人など数多くのサービスで中小企業の皆様をサポートいたします。
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