リーダーシップへの舞台裏Vol.27 ~今を駆ける社長のインタビューシリーズ~

目次
常識を変え、業界を変える。
~理念を原動力に進化する ケアマネジメントのかたち~
介護業界の課題を真正面から見つめ、「変えたい」という想いをかたちにした近藤社長。掲げる理念は「常識を変え業界を変え誰もが自由に選択できる世界を創る」。その言葉どおり、チームで支える仕組みづくりや、効率化への取り組みを通じて“現場に根づく改革”を実践しています。理念を日々の仕事に落とし込みながら、介護の未来を描くその姿に迫ります!
【プロフィール】
1974年栃木県壬生町生まれ。短大・専門学校で栄養学を学んだのち、1997年に明治乳業株式会社(現:株式会社明治)へ入社。栄養相談、マーケティング、女性営業プロジェクト、マネジメントなど幅広い職務を経験し、販売促進では業績優秀賞を2度受賞。約20年勤務し、40歳を過ぎて夫の転勤や単身育児の状況に直面したことで、一度は退職を余儀なくされるなど、女性が働き続ける環境の厳しさも経験する。2019年から株式会社リハ・イノベーションにて仕事を再開。経営企画室長を3年間務め、介護・リハビリ領域にも理解を深める。2023年1月、これまでの経験を生かし、居宅介護支援事業所を設立。利用者や家族に寄り添い、地域に根差した支援体制の構築を目指している。
“resource” × “connect”
――リソネクトが目指す、やさしいつながりのかたち
倉橋:さて、第27回目となる今回お話を伺うのは、株式会社リソネクトの代表取締役、近藤恵子さんです!近藤社長、本日はどうぞよろしくお願いいたします!それではまず、御社の事業内容や会社の概要について教えていただけますか?
近藤:はい、よろしくお願いします。株式会社リソネクトは、地域にあるさまざまな資源をつなぎながら、みなさんの暮らしを支えることを目的に、2023年1月に札幌で設立しました。事業の中心となるのは、私たちが運営している“りそねケアマネステーション”です。
りそねケアマネステーションは、独立型のケアマネジメント事業所として、介護に関するご相談からケアプランの作成、サービス事業者との調整まで、幅広くサポートしています。利用者さんやご家族の想いを大事にしながら、その方の生活や希望に合わせて最適なサービスを選び、つないでいくのが私たちの役割です。また、定期的に訪問して様子を確認しながら、必要に応じてプランを見直すことも欠かせません。独立型のメリットとしては、特定のサービスに偏らず、中立的な立場でその方に合った支援を組み立てられる点があります。株式会社リソネクトとしても、利用者さんが安心して暮らせるよう、地域に根ざした支援をこれからも続けていきたいと思っています。
倉橋:なるほど、本当に幅広く利用者さんに寄り添っていらっしゃるんですね!ところで、社名の“株式会社リソネクト”や、事業所名の“りそねケアマネステーション”には、とても印象に残る響きがありますよね。それぞれ、どのような想いを込めて名付けられたのでしょうか?ぜひ、名前の由来について教えていただけますか?
近藤:ありがとうございます。社名の“リソネクト”は、“resource(資源)”と“connect(つなぐ)”を組み合わせた造語なんです。介護に限らず、地域にはさまざまな資源があるのですが、それらを必要な方につなぎ、活かしていく存在でありたい――その想いを込めています。そして“りそねケアマネステーション”は、その社名から生まれた事業所名です。地域の方が気軽に相談できる場所でありたい、そんな思いを込めています。
倉橋:素敵なお話ですね。とても親しみやすく、地域とのつながりを大切にされていることが伝わってきます。

利用者さんの暮らしに寄り添いながら、看護師と連携して丁寧に状況を把握。最善の支援につなげるため、日々の対話と安心づくりを大切にしています。
“型どおり”じゃない、
一人ひとりの人生に寄り添う現場
倉橋:では次に、実際にりそねケアマネステーションを利用される方について伺いたいのですが、どのような方が多いのでしょうか?介護度やお困りごとの傾向など、差し支えない範囲で教えていただけますか?
近藤:そうですね、私たちは全ての介護度の方を対象にしていますが、一番多いのは要介護1や2の方です。事業所がある札幌では独居の方も多いですし、認知症の方もいろいろな状態の方がいらっしゃいますね。認知症といっても、本当に人それぞれで、少しだけ見守りがあれば大丈夫な方もいれば、細かなサポートが必要な方もいます。その方の生活スタイルに合わせて、安心して過ごせるように一緒に考えていく、そんなイメージです。
倉橋:そうなると、もう“型どおりのプラン”って絶対作れないですよね。
近藤:そうなんですよ。でもそこに、私すっかりハマっちゃったんです。
倉橋:ハマった、というと?
近藤:私、もともと営業職の経験が長いんですけど、営業ってある程度“セオリー”があるんですよね。価格交渉とか、商品の訴求ポイントとか、ある程度流れが決まっていて、その中に自分の工夫をどう入れるか、という感じで。でもケアマネの仕事って、本当に同じケースが一つとしてないんです。そこがすごく面白いなって思いました。ただ、そうやって一人ひとりに向き合う中で、やっぱり“人生そのもの”に関わる仕事なんだなと感じることも多くて。人それぞれの生き方や背景を知るたびに胸を打たれるし、でもその分、思うように寄り添えなかった悔しさもあるんです。
「もっとできたんじゃないか」って、今でも考えることがあります。人の“人生の最終章”に関わる仕事って、責任も大きくて、決して軽いものではないんですけど…。でも、なぜかそこに強く惹かれてしまったんですよね。うまく言葉では説明できないんですけど。
営業から介護の道へ―—
仲間とともに踏み出した新しい一歩
倉橋:ケアマネの仕事って、まさに“人の人生に寄り添う”ことそのものなんですね…そして、その重さの中に“やりがい”を見つけているのが素敵です!そんな近藤社長が、どうして営業から介護の道に進まれたのか、すごく気になります。
近藤:そうですね…もともとずっと営業職をしていたんですが、続けたい気持ちはありつつも、いろいろな事情で続けられなくなってしまって。それで一度、子育てに専念しようと思ったんです。転勤族の夫と一緒に北海道に来たタイミングで下の子が幼稚園に入った頃、「そろそろ少し社会に出たいな」と思って、週2~3回ぐらい働けるパートを探していたんです。
そのとき、近所に介護事業所があって、事務の求人があったので応募してみたんですよね。最初は事務のパートとして働いていたんですが、半年くらい経ったころに社長から「フルでやってみない?」と声をかけていただいて。子どもが小さかったので迷ったんですけど、「フレックスでもいいよ」と言ってくださって、柔軟に働かせてもらえることになったんです。それから少しずつ責任ある仕事も任せてもらえるようになって、最終的には企画室の室長として、労務や人事、デイサービス・訪問看護など複数の事業にも関わるようになりました。そんな中で、その会社にはケアマネ事業所もあったんですけど、たまたま私のこれまでの経歴がケアマネ資格の受験要件に該当していたんです。資格が取れるなら挑戦してみようかなと思って受験したら、無事に合格して。当時一緒に働いていた仲間に勧められて、企画室の仕事と並行して数名の利用者さんを担当してみたんです。
そしたら――これがすごく面白くて(笑)。企画の仕事よりも、現場で人と直接関わるほうにどんどん惹かれていって、最終的にケアマネ業務に専念させてもらうことになりました。
ただ、その後はいろいろありまして……(笑)。結局退職することにしたんですが、そのとき一緒に働いていた仲間たちが「それなら、みんなで新しい事業所を立ち上げよう!」と言ってくれたんです。「じゃあ、近藤さん社長やって!」って勢いで(笑)。正直、無計画なスタートでしたけど、思いだけはすごく強かったですね。
倉橋:無計画っておっしゃいましたけど(笑)、そこに飛び込めるのは、やっぱり強い思いがあったからですよね。その一歩が今の事業につながっていると思うと、本当にすごいです。ちなみに、介護業界に本格的に入られて、今どのくらいになるんですか?
近藤:私自身がケアマネージャーとして本格的にやっているのは、たぶん2年半くらいですね。会社を立ち上げる半年前くらいからなので、キャリアとしては本当に浅いんですよ(笑)。
倉橋:えー!もう15年選手くらいのベテランかと思ってました(笑)
近藤:いえいえ、とんでもない(笑)。でも、前職で培った経験がすごく生きているなと思います。ケアマネの仕事って、利用者さんやご家族、医療機関、行政など、さまざまな人との調整が多いんです。そういう意味では、営業時代に学んだ交渉力やマネジメントの感覚が、今の現場でもかなり役立っていますね。
倉橋:なるほど。確かにその経験は大きいですよね。

チームで支える介護を当たり前に。
理念をかたちに、業界の“常識”を変えていく
倉橋:では実際に営業職から介護業界の現場に入られて、理想と現実のギャップもあったかと思うんですが、近藤社長はどんな部分に課題を感じてこられましたか?
近藤:やっぱり一番の課題は「事務処理の多さ」ですね。とにかく記録が多くて、「これ本当に必要?」と思うような作業もたくさんあるんです。業界全体として見直しの動きはあるんですが、なかなか進まなくて…。それに加えて、ケアマネの賃金が本当に低いんですよ。介護職の中でも特に低くて、どれだけ時間をかけても報酬は一律。熱心に取り組んでも評価されにくい仕組みなんです。だから、資格を持っていてもやらない人が多い。実際、働き方によっては、介護福祉士の方が稼げるという現実もあります。しかも、国が「処遇改善加算」で介護職の待遇を上げている中、なぜか居宅ケアマネだけ対象外なんですよ。全国で署名活動があって、私ももちろん参加しました。そして何より大きいのが、いわゆる“シャドーワーク”です。賃金が発生しないのに、どうしてもやらざるを得ない仕事が多い。ケアマネの判断ひとつで、その人の最期の過ごし方や寿命にまで関わるケースもあります。それだけ責任が重いのに、インセンティブが低すぎる。だからこそ、疲弊しないためにも、国にはもっと現場目線で業務効率化を進めてもらいたいと強く思っています。
倉橋:いやぁ…聞けば聞くほど、現場の努力に制度が追いついていないですよね。それでも、
「変えたい」「よくしたい」っていう思いで実際に動かれているのが本当にすごいなと思います。今後は、そうした工夫や取り組みをどんなふうに広げていきたいと考えていらっしゃいますか?
近藤:介護業界って、本当にまだまだ遅れている部分が多いんです。だからこそ、少しでも常識を変えていきたいと思って、「常識を変え業界を変え誰もが自由に選択できる世界を創る」という企業理念を掲げました。まず取り組んだのは、分業化と効率化です。事務処理を事務スタッフに任せ、ケアマネは本来の業務に集中できるようにしました。件数をしっかり持ちながらも、スピード感のある対応を強みにしています。急な依頼も基本的に断らない方針で、土日や夜間の相談にも対応しています。また、ケアマネ自身が柔軟に働けるようフレックス勤務体制も整えています。それから、うちは“チームで支える”というのをすごく大事にしていて。
最近は在宅ワークの流れもありますが、あえて事務所勤務を基本にして、日々意見交換できる環境をつくっています。困難なケースに出会ったときに、他のケアマネの知見や経験を共有できることが、最終的にはご利用者さんにとっての最善の提案につながると思うからです。今後は、そうしたチーム体制を軸に、別のエリアにも展開していきたいと考えています。規模を広げながら、より多くの方に「ここに相談してよかった」と思ってもらえる事業所にしていきたいですね。
倉橋:なるほど……。「チームで支える介護」を軸に、利用者さん一人ひとりへより良い提案を届けていらっしゃるんですね。個人プレーになりがちな介護の世界で、“チームワーク”を大切にされているのが印象的でした。そして、
「常識を変える」という理念が、現場の仕組みや働き方に結びついているのも本当に素敵です!
近藤社長、今日は貴重なお話をありがとうございました!介護に対する熱い想いと挑戦の姿勢に、たくさんの刺激をいただきました。これからのご活躍を楽しみにしています!!


アウトドア派の近藤社長。ワカサギ釣りや、息子さんのスキー付き添いで、冬の週末は山で過ごすことが多いそうです。
会社概要
【事業内容】
居宅介護支援事業
株式会社リソネクト/りそねケアマネステーション
【所在地】
〒063-0062 札幌市西区西町南15丁目4-6 高伸ハイツ306号
(TEL)011-676-3305
(FAX)011-676-3315
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