リーダーシップへの舞台裏Vol.26 ~今を駆ける社長のインタビューシリーズ~

目次
“攻めの挑戦×誠実な仕事”で切り拓く未来
~94年の歩みに、新たな一章を刻む~
数々の困難な現場を乗り越え、社員の幸せと会社の成長を両立させる田中社長。94年の歴史を守りつつ、挑戦と誠実さを貫く姿勢は、社員だけでなく顧客や業界にも信頼を生み出しています。今回は、そんな田中社長の経営マインドや未来への挑戦に迫ります!
【プロフィール】
1981年 東京都足立区生まれ。
2008年に丸市田中建設株式会社へ入社すると、わずか半年で現場代理人に。施工・安全・品質の全てに誠実に向き合いながら、多くの現場で経験を積む。その後2020年に取締役、2023年には代表取締役へ就任。
創業1931年の老舗を継承しつつ、「建設業界で一番ホワイトな会社をつくる」という明確なビジョンを掲げ、制度改革・人材育成・売上拡大に挑戦中。
プライベートでは、トレイルランニングやトライアスロン、登山など、“苦しいことが大好き”なアクティブ派。限界を超える挑戦を楽しむ生き方は、その経営スタイルにも通じている。
”難しい案件こそ燃える”
挑戦をも楽しむ、攻めの経営姿勢
倉橋:さて、第26回目となる今回は、丸市田中建設株式会社の代表取締役、田中淑之さんにご登場いただきます!実は田中社長と私、同い年なんです。今日は同世代ということで、ざっくばらんにお話を伺えるのを楽しみにしていました。本日はどうぞよろしくお願いいたします!ではまず、御社の事業内容や会社の概要について教えていただけますか?
田中:はい、よろしくお願いします!うちの会社は東京の足立区にありまして、総合建設業をやってます。僕で3代目で、創業から数えると今年で94年になるんですよ。事業としては、公共工事と民間工事がだいたい半々ぐらいの割合ですね。公共工事の方は、東京大学とか東京芸大といった国立大学の仕事が多いですし、東京都や足立区からの発注で、学校や施設の工事をやることも多いです。
民間の方は、普通の戸建ての注文住宅から、10階建てぐらいのビルまで幅広くやっています。もちろんリフォームや改修工事も扱っていて、トイレ1個の交換からでも対応します。最近は特に、デイサービスのような福祉施設の工事にも力を入れているんです。これから社会的にどんどん必要とされていく分野だと思いますし、会社としても注力していきたいと考えています。
倉橋:創業94年って、本当に歴史がありますね!しかも公共工事も幅広く手がけていらっしゃるのは驚きです。最初からそういう公共施設のお仕事も多かったんですか?
田中:いえ、公共工事も請け負うようになったのは、確か僕が会社に入る少し前からなので…20年くらい前からになりますね。当時の専務の知り合いのご縁で公共工事を紹介していただいたのがきっかけなんですよ。
ちなみに最初にご紹介いただいたのは、なんと東京大学の重要文化財の工事でした。重要文化財ですから、「壊したら直せばいい」なんて簡単な話じゃないんですよね。それで当時の社長、つまり僕の父は“石橋を叩いて渡る”すごく慎重なタイプで、「そんな大変な仕事はやめとけ」っていう感じだったんですけど、専務(父の弟)はかなりイケイケな人でして。「いや、これはやるぞ!」と(笑)。その専務の決断があって、公共工事に取り組むようになったんです。
倉橋:専務の「やるぞ!」の一言がターニングポイントだったんですね!そうなると気になるのが、今の田中社長ご自身はどちらのタイプなんですか?お父さまのように慎重派か、それとも専務のようなチャレンジ精神旺盛なタイプか…。
田中:そうですね…やっぱり専務が切り開いてくれた考え方が、自分の中にも染みついてると思います。だから「やったことがないからやめておこう」とか、そういう発想はまったくないですね。
むしろ、みんなが「これは厳しいな」と嫌がるような案件――たとえば工期が極端に短いとか、条件がハードな工事――そういうのに燃えるタイプです(笑)。

公共施設や大学の改修工事を数多く手がけており、全体の約半数を占めるのが公共工事の受注です。
一般住宅とは異なる厳格な基準や調整力が求められる中で、大学や行政の担当者と丁寧に打ち合わせを重ね、田中社長はじめ、社員の皆さんも細部まで誠実に対応するのが強みだそうです。
“挑戦する会社”を支えるのは、“人を想う経営”
倉橋:なかなかストイックですね(笑)。でも田中社長ご自身がそういうチャレンジ精神を持っていると、社員さんにも自然とその空気が伝わっていきそうです。社内でもやっぱり、“難しい仕事ほど燃える”みたいな雰囲気はあるんですか?
田中:そうですね…うちは本当に人に恵まれていると思っていて。僕のそういう考えを話しても、誰も文句を言うことなく、みんな一生懸命についてきてくれるんですよ。もちろん、その分僕もできる限りのことはやっています。
この規模の建設会社では珍しいかもしれませんが、完全週休2日制で祝日もお休み、残業も原則NGにしています。だから、だいたいみんな夕方5時半から6時には帰ってますね。その働き方を実現するために、DXやグループウェアの導入、IT技術の活用、最近では生成AIも使いながら、効率化の仕組みを少しずつ整えているところです。まだまだ道半ばですが、そうした姿勢を社員が近くで見てくれているからこそ、不平不満が出ずに前向きに頑張ってくれているのかもしれません。
倉橋:働き方の面でもかなり時代に合った改革を進めてこられたんですね!そんな環境だと、きっと“この会社で働きたい”という人も多いと思います。実際、人材の採用面ではどんな工夫をされているんでしょうか?
田中:人材の確保は、正直うちでもずっと課題なんですよね。僕もこれまで何度も痛い経験をしてきました。昔は一般的な求人媒体を使ったり、人材紹介会社にお願いしたりしてたんですけど、やっぱり建設業の経験者って、良くも悪くも“クセがある”というか。自分のやり方をしっかり持っていて、なかなか合わせてもらえないことも多いんです。そんなことが何度もあって、今はもう「人の紹介」だけに絞っていて。
仕事関係のつながりもあれば、BNIというビジネスコミュニティでのご縁もあります。ある程度人柄がわかっていて、「ちょっと不器用だけど責任感はあるよ」とか、そういう部分が見える人のほうが安心なんですよね。結局のところ痛い目を見て思ったのは、「どうせすぐ辞めちゃうなら、若くて未経験でも、自社で育てたほうがずっと効率的で早い」ということ。それが今の僕の考え方です。

逆境こそチャンス――厳しさの
中で見つけた、“攻め”の原点
倉橋:なるほど、会社のやり方に合う人を育てていくほうが、結局は効率的なんですね。田中社長の実体験だからこそのリアルなお話だなと思います。ちなみに田中社長ご自身は、最初からこの会社に入るつもりだったんですか?それとも、別の道を考えていた時期もあったんでしょうか?
田中:そうですね、最初から「継ごう」っていう確信があったわけじゃないんです。むしろ父(2代目)からは「絶対に継ぐな」ってずっと言われてました。父の時代はちょうどバブルが弾けて、すごく苦労した時期だったみたいで。「建設業は大変だからやめとけ」って、何度も言われましたね。でも、祖父と父が築いてきた会社を、自分が何も経験しないまま終わらせてしまうのは嫌だなっていう気持ちがあって。「とりあえず1年だけでもやってみて、自分の目で見て決めよう」と思って入社したんです。
実際に入ってみると、もちろん大変でしたけど、意外と嫌いじゃなかったんですよ(笑)。建設って、ただモノを作るだけじゃなくて、職人さんたちに気持ちよく動いてもらうためのコミュニケーションだったり、段取り次第で現場がうまく回ったり、逆に失敗したり。そういう“人と現場の動き”がすごく面白いなと思って。……とはいえ、最初の1年は地獄でしたけどね(笑)。専務(当時の父の弟)には現場でしょっちゅう怒られるし、職人さんにも毎日のように怒鳴られてました。でも、不思議とそれでも「面白いな」って思えたんですよね。
倉橋:いや~、最初の1年だけでもかなり濃い経験をされていたんですね(笑)。その後も色々なお仕事を経験されてきたと思いますが、今までで特に「これは大変だった!」という現場はありますか?
田中:やっぱり一番大変だったのは、入社して半年の頃に現場代理人、つまり現場の責任者を任された時ですね。正直、できるわけないんですよ(笑)。もしかしたら専務は影から見守ってくれていたのかもしれませんけど、当時は何のアドバイスもなく、「お前、やってこい」って放り出された感じでしたから。しかもその現場、うちが元請けだったんですが、下請けの設備会社が本当に大きくて、うちとは比べ物にならないくらい格上だったんです。さらにそこの責任者が、足立区でもその厳しさで知られる大所長で……入社半年の新入社員の僕は毎日怒鳴られてました(笑)。
現場は4か月くらいだったんですが、もう4年ぐらいやっているように感じましたね。今となれば、その大所長は、自分の社員でもない僕を鍛えるために厳しくしてくれていたんだなと思えますけど、当時はそんなことを考える余裕も無くて、本当に辛かったですね。それでも、その工事自体は、その年の足立区で一番の工事として表彰されたんです。学校の給食場の工事だったんですが、出来栄えや品質、工期の達成度などで、総合的に評価されたんですよ。多分、その経験が、今の自分の考え方の原点になっているんだと思います。
人を想い、誠実を貫く。
その先にある“幸せな現場”
倉橋:入社半年で、そんな過酷な現場を任されるなんて、本当に大変でしたね(笑)。でも、そんな経験を経てこそ、御社が大事にしている理念や、社員のみなさんに伝えたい価値観って、どんなものになっているんでしょうか?
田中:やっぱり「誠実に」というところですね。建設業って特殊な業界で、ごまかそうと思えばいくらでもごまかせる仕事だと思うんです。完成してしまえば見えなくなる部分もたくさんありますし。
でも、そういうやり方をしてしまうと、特に公共工事では人の命に関わることもありますし、何より社員自身が「やりがい」を感じることもできないと思うので。だから、うちの理念としてはやっぱり「誠実にやること」、これが一番大事ですね。
倉橋:「誠実に」って、一見あたりまえのようで、続けるのは本当に大変なことですよね。その姿勢が、社員のみなさんのやりがいや信頼につながっているのが伝わってきます。そうした“誠実さ”を大切にされている中で、御社ならではの強みや、大手企業・他社との違いはどんなところにあると感じていらっしゃいますか?
田中:どの会社でも資材や人件費が高騰している今、同じ条件の中でお客さんがどこを選ぶかと言ったら、最後は“人”だと思うんです。現場の担当者だったり、直接関わる人だったり。だから、しっかり責任を持って仕事をすることと、大手企業や他社が少し引いちゃうような厳しい条件でも「ぜひやりますよ!」と挑戦する姿勢が、評価につながるんじゃないかなと思っています。
倉橋:結局、会社を選ぶ決め手は“人”なんですね。責任を持って挑戦する姿勢や、他社が避けるような厳しい条件にも取り組む姿勢が、信頼や評価につながるというのは、とても納得です。それでは最後に、田中社長ご自身がこれから挑戦したいことや、会社として目指していきたいことについて、ぜひお聞かせください!
田中:僕はまず社員を一番に考えているので、建設業界で“一番ホワイトな会社”を作りたいですね。制度面もしっかり整えて、休日や有休がしっかり取れて、自分の時間も確保できるようにしたいです。あと、工事部の全員が年収1000万円を達成できるようにすることが目標で、今のペースなら5年くらいでいけるんじゃないかなと試算しています。そのために、まずは会社の売上を30億円まで拡大するつもりです。もし達成できたら、社員に直接「今の状況で、幸せ?楽しい?」って聞こうと思っていて。みんなが「楽しい」と言ったら、そこで大きくするのはやめますし、もし「もっと行きましょう!」って言うなら、さらに挑戦します。
倉橋:え~!それ、すごく面白い考え方ですね!でももし、社員のみなさんの意見が分かれたら……その時はどうするんですか?
田中:どうなるんですかね(笑)。協議になるのか、多数決で決めるのか…正直まだわかんないです。今のところ「きっとこっちだろうな」という予想もなくて。社員がどんな答えを出すのか、今から本当に楽しみなんですよね。
倉橋:それは楽しみですね!社員のみなさんと一緒に未来を作っていく感じがすごく素敵で、こちらまでワクワクしてきました。本当に社員さん一人ひとりの幸せを大事にしているんだなと感じます。目標の数字だけじゃなくて、「楽しいかどうか」を基準に考えるところが、とてもユニークで印象的でした。今日は、田中社長のこれまでの歩みや考え方、そしてこれからの挑戦について、ざっくばらんにたっぷりお聞きできて、とても楽しかったです!田中社長、本当にありがとうございました!!


休日はトレイルランニングやトライアスロン、登山など、限界に挑むスポーツを楽しまれている田中社長。「自ら追い込みを楽しむ姿勢」は、挑戦を恐れず成長を楽しむ仕事のあり方にも重なっているとか。完全週休二日制の実現にも、そんな思いが込められています。
会社概要
【事業内容】
総合建設業
【所在地】
〒120-0036 東京都足立区千住仲町27-14 クレストコート北千住2F
(TEL)03-3882-4610
最近の投稿
- 2025.11.13
- リーダーシップへの舞台裏Vol.26 ~今を駆ける社長のインタビューシリーズ~
- 2025.10.31
- 税務調査の事例 「税理士の介入により、追徴課税を減額できた」編
- 2025.10.31
- 税務調査の事例 「帳簿・申告の不備で、納税額が増えてしまった」編



