リーダーシップへの舞台裏Vol.12 ~今を駆ける社長のインタビューシリーズ~
目次
常識やセオリーは自分達で作っていけばいい
~塗装業界の常識を変える~
「笑って過ごせればいい」という精神と持ち前の明るさ、そして営業力で、親子三代続く塗装業の社長として新しい時代を切り拓いている前澤社長。
男気溢れる熱い思いをインタビューしました。塗装業界のトップを走る先駆者の考え方に迫ります。
【プロフィール】
41歳にして職歴21年。塗装業をメインとしたリフォーム業の三代目社長として3年前に就任。塗装業では珍しい「光らない塗装」である「マット塗装」という技法を行っている。
小さなころからゲームが好きで、その好きが転じてスマホゲームで繋がった他業種の方との交流を仕事に活かすなど、精力的に他業種と関わっている。
趣味はDIYで、長期休みの時に自宅や子ども部屋のリフォームを子どもと一緒にやることが楽しみになっている。
仰天?! 創業48年3代目社長入社エピソード
林:本日は、先代からの長いお付き合いになる前澤社長にお越しいただきました。いつもお世話になっております。改めて、会社名と事業の概要をお話しいただけますか。
前澤:はい、よろしくお願いします。株式会社シンシアという会社を経営しております、前澤直希です。塗装業を営んで今年で創業48年になります。私が三代目の代表取締役に就任してから3年目になります。
林:私達とのお付き合いは、初代社長(現在の会長)からで、林(公士郎)の父が顧問をさせていただいている頃からですので、本当に長いお付き合いになりますね。
前澤:はい、私達も塗装業の中ではかなり長い歴史のある会社になるかと思います。
林:ご家族で経営されていますと、いつかはお父様の仕事を継ぐ、おじい様のようになりたいと思っていらっしゃったのですか?
前澤:いえ、全くそう思っていなかったんです(笑)実はこの仕事に就いた頃はやる気がありませんでした。職人って色んな面で厳しいですから。技術的な面で至らなかったり、ケガをして働けなくなってしまったりした時には、施工が伸び、お客さんに迷惑がかかってしまいます。その先の保証もないので、正直やりたくない職業の一位くらいでした。ただ、仕事を始めてから5~6年経ったころからお客さんと話をしながら進めていく楽しさや、趣味の延長のような状態でいられることが転機になったと思います。
私は「こういうことをやりたい!」とか、夢のようなものがなくて、「とにかく笑って過ごせればいい」という精神なんです。仕事に就く前も、何かをやりたいというよりは、自分に見合ったものがあればいいなと思っていました。
林:そうだったんですね!シンシアの前身である前澤塗装に入社される前は、どちらかの会社にお勤めだったんでしょうか。これまでの経緯をお伺いさせてください。
前澤:前澤塗装に入社するまではアルバイトだけで、どこかに勤めたことはありませんでした。入社したというよりは、気がついたら入社していたんです。
林:え?どういうことですか?
前澤:アルバイトしていたガソリンスタンドで、埼玉県下売上げ3位という成績を残しまして、本部からも表彰されたんです。そのおかげで、色々な会社から営業職でのお声がけをいただきました。その後、アルバイト先に父が出向き、「うちの会社で職人になるので(辞めます)」と。私は全く知らなくて、アルバイト先の社員さんから「3月なったらやめるんでしょ?」と言われて、半ば強引に入社が決まっていました。
林:えー?!それに対して抵抗しなかったんですか?
前澤:外堀から埋められて、選択権がなかったんですよね。当時の親方からも、
「3月からこっち来るんでしょ?」と言われ、もう決定事項でした。
林:そんな入社の仕方だったら、反発したり、嫌になったりしてもおかしくないと思うのですが、そんなことはなかったですか?
前澤:仕事自体はとても性に合っていたと思います。仕事自体も、体を動かすことも好きでしたし、この仕事には可能性を感じていたので辞めようとは思いませんでした。そして、小さいころからこの仕事を見ていますので、親方がいて、仕事が成り立っているというのを知っていましたから、やるからにはちゃんとやろうと思いました。そうでないと、せっかく親方から教えていただいたのに自分が変なことをしていたら親方に悪いですから。
林:男気を感じます!では、親方から教えてもらったことで大切にしている事はありますか。
前澤:今までも、これからもずっと自分にとっての親方である鈴木さんから教わった、「年下だろうが何だろうが、良いと思ったら聞きに行け」ということです。スキルやキャリア、年齢は関係なく、自分が良いと思うことを突き詰める。そして、目標やゴールに達するまで、色んな手段・方法を模索して、どんな努力も惜しまないという精神ですね。
転機はお客様の要望・声から始まった「マット仕上げ」
林:素晴らしいですね。気がついたら決まっていた入社から、何年目に役員になり、そして社長になられたのでしょうか。
前澤:働き始めて10年位で役員になりましたが、実質名前だけで、役員になった時は営業兼職人のような形でした。ちょうどその頃、今後のシンシアの基盤となる出会いがありました。美術部の先生お宅をお仕事させていただいた際に「(塗装は)なんで光るの?」と聞かれたんです。
林:光る?
前澤:ペンキを塗ると通常ツヤが出るのですが、「マットな仕上がりは出来ないの?」というお話だったんです。私達は塗ったらツヤが出るのが当たり前だと思っていたので、お客さんからそう言われたことが衝撃でした。
そこで、お客さんの要望をかなえるために、ツヤが出ないようにするためにはどうしたらいいか、色んな業者を呼んで、試行錯誤が始まりました。そこで生まれたのが「マット仕上げ」です。これはシンシアでしか出来ないものとなりました。
林:すごい!そのマット仕上げについてもう少し詳しく教えてもらえますか。
前澤:通常の塗装は、鏡面仕上げと言ってピカピカしています。
私達がやっているのは「五分ヅヤ」といってツヤが半分消えているので、ピカピカしている感じではなく、ペンキの特殊性と塗る技量でマットに仕上げることができるようになりました。このマット仕上げは、いかにも新しく塗り替えました感が出ないようにすることができるので、神社の塗り替えなどでも大変ご好評をいただいております。塗り替えたけれども、違和感がないようにすることができるようになりました。そして、技術の試行錯誤の結果、耐久性も出せるようになり、通常、塗装は10年経ったら塗り替えと言うのが常識なのですが、このマット仕上げは、 13~15年まで持たせることができます。先日も塗装して8年くらい経ったお客さんのところに行ったところ、「あと2年くらいで塗り替えてもらえませんか」と言われました。でも、「こんなきれいな状態で塗れません」、と待ってもらっています。私が自分で見て、必要だ、やるタイミングだ、と思ったところでやるというのを大事にしています。どんなにお客さんに言われても、やってもあまり意味がないと自信を持って言えるので、塗るタイミングはこちらで判断させていただきますとお伝えしています。
林:良心的ですね!必要じゃないことはやらないシンプルさと、お客様への安心感と信頼が違いますよね。
前澤:塗装する色も、お客さんが決めるのではなく、私が決めています。もちろんお客さんのご意見・ご要望を聞かせていただきながら、お客さんの「これが良い」ではなく、プロとして提案をさせていただいて、通常の塗装とは違うことをご提案しています。
林:安心感とプロとしての提案力が直希社長の持ち味ですよね。素晴らしいです。今、新たに取り組んでいることがあると伺いましたが、どんなことですか。
前澤:正直、塗装業界はこれから衰退していくというか、きちんとした作業をするところしか残っていかないと思っています。なので、業界の中で小さく留まるのではなく、全く関係のない他業種の方々と交流させていただいて、色々ヒントをもらったりしています。
林:それはとても興味深いですね。例えばどんな業種ですか?
前澤:例えば、ネイル業界や美容業界ですね。ネイルの塗り方って、ものすごく塗装に近いんです。どうやったら綺麗に塗れるのか、何回塗ったらどうなるのか、それを塗装の業界にどう生かすか試行錯誤しています。美容業界もメイクなどがとても似ていて、下地を綺麗に作ったところに色をのせていくと綺麗に仕上がるなど、お客さんへの説明の仕方も参考にさせてもらって、分かりやすくすることが出来ました。
林:異業種のアイディアを自分の業界へ持ってくるというのはマーケティングの基本ですから、しっかり押さえられていてさすがです。それに加えて、私は直希社長の人懐っこさ、お客様に寄り添う力にとても魅力を感じています。それだからこそ、お客様の欲しいものに敏感になれると思うのですが、どうやって培ってこられたのでしょうか?
前澤:自分でこうしようとか、こうしたいというよりは、お客さんの相談を受けることが多いので、解決しようとする時に、一つでも多く無茶ぶりを解決しようと思っていたら、そうなっていったんですよね。無茶ぶりをされて「専門外です」とか、「それは分かりません」って答えてしまうと、それで終わりじゃないですか。だから、
「ちょっと何か考えてみます」というところからスタートすると、いろんな職業が繋がり出すんです。今までやってきた塗装と、今業績が伸びている分野からいただく知恵とを掛け合わせて、提案をさせてもらっています。
林:要望に応えたいという思いから、異業種の方のヒントをもらっているということですね。
美術に携わるお客様の要望で生まれた「マット塗装」。
家は年々劣化していくのに、外装するとそこだけが新品に見えてしまう違和感を払拭できないか、検証に検証を重ねて生まれた工法で、なかなかの根気が必要だったそうです。でも、この
「何とかならないか?」をとことん追求するのが前澤社長。絶対に諦めないのですよね~。追い求める姿勢、本当に素晴らしい!!
お客さんへ寄り添う職人さんであることが発展のキーポイント
前澤:お客さんに寄り添って、寄り添って、今のスタイルを確立してきました。お客さんからすると、職人さんへのイメージが変わるみたいなんです。普通の職人と比べて、私達はお客さんと仲が良いんです。最初に言ったように、「とにかく笑って過ごせればいい」という精神なので、お客さんと仲良くなって、笑って過ごせる関係になることで、私達の良さが出せればいいなと思っています。そのおかげもあって、お客さんからお客さんの紹介をたくさんいただいています。業者の見比べというのは難しいので、お客さんとの関係を深めることでお客さんがお客さんを呼んでくださると考えました。
これを繰り返していくと、お客さんと笑える時間が自然と増えていくし、良い仕事をすればまた笑顔が増えて、といい循環が生まれます。自分たちが誠心誠意の仕事をすることで、お客さんと談笑していく時間が増えていく形を作れれば、先々の未来につながると思っています。実際にこれが今のやりがいに繋がっています。
林:紹介はとても大事ですよね。そして、塗り替えはリピートのある仕事ですし、家に住んでない人はいないので必要不可欠な仕事ですよね。
前澤:だからこそ、お客さんとのコミュニケーションが大事ですし、その取り組みの一つとして、お子さんに塗装の体験をしてもらうというようなこともしています。体験した後はこちらでしっかり綺麗に仕上げることをお伝えして、お子さんに思う存分塗ってもらっています。
林:そういう体験って、絶対忘れないですよね。素晴らしい!
前澤:ミラクルワークという職業ワーク(職業訓練)にも参加させてもらっています。塗装業は子どものうちになかなか交わらない職業なので、そうやって知り、体験してもらうことを積極的に行っています。職人と関わる機会は、社会性も育つのではないかと自負しています。
常識にとらわれない、塗装業界のセオリーを作っていく
林:素晴らしい取り組みですね。直希社長の今後の展望・目標についてお聞きしてもよろしいですか。
前澤:まず第一に、社員と社員の家族、全員に笑っていてほしいと思っています。そのためには、自分達の作業や営業がお客さんに信用・信頼される仕事が出来るようになること、お客さんの要望を出来る限り叶えていきながらも、今の塗装のセオリーをどれだけ壊しに行けるかにチャレンジしたいと思っています。
林:塗装業界のセオリーってどんなことですか?
前澤:よく「何回塗りますよ」という塗装の説明をされるのですが、実はあまり意味がないんです。私は「何回塗りますよ」ではなく、「この部位は何回塗ります」だと思っています。例えば、家の外壁が東西南北の全方位あった場合、同じ劣化をするとは限りません。なので、ここはこういう理由で1回プラスしておきます、というご提案をさせていただいています。自分達なりのセオリーを作って、お客さんにご提案しています。
インターネットに出回っている内容は古いことが多いので、自分達だから出来ることを確立していきたい。常識にとらわれない塗装の世界を築いていくこと、常識は私達が作ればいいと考えています。
林:かっこいいです!目標も教えてください。
前澤:目標は、「祖父を超える」です。私が一番影響を受けたのは母方の祖父でして、まだまだ勝てないと思っています。祖父は若くして亡くなってしまったのですが、どこへ行っても祖父の名前が出るんです。祖父を知っている方々は、私のことを「倉橋のお孫さん」と言ってくださいます。祖父は連雀町の皆さんに「あの方」と言われていまして、とにかく別格なんです。「とにかく社員のことばかり考える方で、厳しかった。でも嫌味ではなく、とてもきちんとした人だった」、「会社がとてもしっかりしていた」と、20年前から入っていても、未だに言われるんです。
林:伝説の人ですね!
前澤:ええ。そんな祖父のおかげで、「倉橋のお孫さんなら間違いないから」と、お仕事をもらっていることもまだまだあります。なので、それに応えたいし、負けたくないという気持ちがあります。祖父のように、そして祖父を超えるシステムを作ることに、常に挑戦し続けています。
林:それは挑戦続けて欲しいです!応援しています。最後に、ちょっと聞かせてください。お父様の半ば強引な入社は、感謝していますか?
前澤:自分で入社する気は全くなかったので、もし父による強引な入社がなければ、ここまで来られていません。なので、今は感謝しています。あとは自分がどこまで頑張れるか、それが親孝行かなと思っています。前からお付き合いのある取引先の方を引継がせてもらった際、以前のやり方を壊していこうと思っていました。それをお伝えしたところ、「君がオッケーっていうならオッケーでしょ。」と言っていただけるようになりました。一方で、新しいことをやり続けるには、しっかりやらなくてはと気を引き締めています。そうやって結果を残して、信頼を勝ち取っていきました。この仕事は自分達だけで出来る仕事ではないので、協力してくださる方々がとても大切だと思っています。
林:ありがとうございました!新しい時代を切り開く直希社長をこれからも応援しています!
前澤社長は、子どもさんと一緒に家のリメイクもしているそうです。昔と違って工作する機会が少なくなっている子ども達にとっては、ものづくりの感覚を養う貴重な時間ですよね。
会社概要
【事業内容】
塗装工事・屋根工事・左官工事・板金工事・エクステリア工事・大工工事・営績改修工事・内装その他工事
【所在地】
〒350-0824 埼玉県川越市石原町2丁目57-3
(TEL)049-224-2047
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